本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫@書籍化作家

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第118話 デリア総督府消滅(18)

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「家畜と同じ……だと……」

 アイゼンが、アデルデンへと憎しみの篭った視線を向けるが、俺は彼女を抱きかかえたまま部屋へと一気に突っ込む。

「――なっ!?」
「カズマ!? 一体、何を!?」
「黙って居ろ。舌を噛むぞっ!」

 俺は壁に叩きつけられ血塗れになっているラムドまで近寄り、腕を掴むと一気に壁から剥がし、バルコニーへと向けて移動する。

「逃がすと思うか!」

 そこで初めてアデルデンから周囲に浮かばせていた光球を高速で飛ばしてくる。
 それを視界におさめながら、俺は視界内の魔法コマンドを開く。
 超高速の操作を行い――、

「LV5の氷属性魔法! アイスシールド!」

 一瞬にして大気中の水素と酸素が結合し水を作りだし、それら運動がゼロレベルに達したことで、俺とアデルデンの間に高3メートル、横幅2メートルもの氷の壁が作り出される。

「ばかな!? 詠唱もなしだと!?」

 背中越しに驚愕の声が聞こえてくるが、それを無視し俺は総督府のバルコニーから、外へ向けて跳躍する。
 落ちている間にラムドにヒールをかけつつ、二人の体を幌馬車の天井へと投げる。
 幌馬車の天井は、布と、少し片目の細い木材だけで作られている。
だから、二人の体は自然と落下の衝撃が和らげられた状態で着地することになる。

 二人が無事に幌馬車の屋根に落ちたのを確認すると、俺はバルコニーから身を躍らせ落ちてくるアデルデンへと視線を向けた。

 音もなく総督府の――、俺達が幌馬車を停めた入口である中庭に着地するアデルデン。
 アデルデンは、何かの詠唱を行い無数の光の玉を周囲に生み出す。

「あの高さから降りて無傷とは……、勇者という存在は――、魔族にとって本当に厄介な化け物であるな」
「骸骨が話しているシュールさと比べれば、ずっとマシだと思うが?」
「ぬかせ! 人間風情が!」

 アデルデンが生み出した光球を、俺に向けて放ってくる。
 それらを腕で払う。

「愚かな――」
「何!?」

 光球に触れた瞬間、俺の腕が一瞬にして焼けた。
 しかも玉の同じ輪郭に食われて――。

「これは……」
「それは数千度の炎の塊。人間が扱うことが出来ぬ絶対温度である! 鉄すら融解させる力を見るがよい」
「――くっ……」

 俺は避ける。
 それを見てアデルデンは口を開く。

「その状態で――、腕の一部を失った状態で! どこまで避けることができる勇者カズマ!」
「だから、俺は勇者じゃないと言っているだろうが!」

 殺到してくる玉の数は100を超える。
 それら全てを避け切ることは不可能。
 
「おや、距離をとっていいのか?」

 超高温の光球を避けるために、ある程度、距離を取ろうとしたところで、光球の方向が代わりラムドやアイゼンの方へと向かう。
 二人では、完全に避けることは出来ない。

「今更、たすけに行っても無駄! さあ、目の前で人間が死ぬ様を見るが良い!」

 俺を絶望に叩きこもうと――、助けられない事実を知らしめる事で無力感に苛まれることを期待したような愉悦を含んだ高らかな叫びをアデルデンは上げるが――。

「LV6の火属性魔法! バースト!」

 視界内に展開した無数の魔法欄。
 それらを連続に起動し魔法を多重起動する。
 発動場所は、幌馬車とアデルデンとの中間場所。
 つまり光球が、幌馬車を狙って飛んでくる弾道上であり軌跡。

 俺が発動した魔法は空中で次々と爆発する。
 その爆発は、光球の熱量を分散させ消し飛ばしていく。

「な――!? ――ば、ばかな!? 私の魔法が何故!? 絶対的な人間では到達できない深淵の炎の魔法が何故に消え去る!? きさま! きさま! 人間の分際で何をした!」

 理解が及ばない現象。
 それに遭遇したアデルデンは口早に俺を見ながら口走る。

「理解できないか? たかが人間と言っていた癖に……」

 俺は、自身にヒールをして光球により抉られていた腕の傷を一瞬で完治させながら答える。

「――ばかな……。あれだけの傷をどうやって……。異世界から召喚された勇者ですら、それだけの力は……。貴様は一体……」
「俺か? 俺は、ただのDランク冒険者のカズマだ」




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