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第113話 デリア総督府消滅(13)
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総督府へ向けて走り出す俺達の前を塞ぐように20人ほどの兵士が向かってくる。
それを見て、「まったく……」と、俺は思わず毒づく。
「カズマ!」
向かってくる兵士をラムドも見ていたのだろう。
俺の名前を呼んでくる。
視線をラムドに向ければ、ラムドは足を止めていた。
「城塞都市デリアの冒険者ギルドマスターのラムドだ! 総督府にモンスターと関わっている嫌疑が出ている。リーン王国の一機関として総督府の改めを行う」
その言葉に、向かってきていた兵士達が足を止める。
「冒険者ギルドマスターのラムド殿が何のようだ?」
そう呟きながら、近づいてきたのは、城塞都市デリアの入り口と総督府入口で言い合いをした女騎士アイゼンであった。
「総督府が、魔物と関わっている可能性が示唆されている。その真偽の判断の為に総督府の調査を、リーン王国の一機関として行う。異論はないな?」
「ふざけるな! 冒険者ギルドに、そのような権限は与えられていないはずだ!」
アイゼンが右手を横に振りながらラムドの言い分を却下してくるが――、
「上級騎士アイゼン。貴公の考えはどうでもいい。総督府が機能不全に陥った時に冒険者ギルドに町の運営、防衛が国王陛下より一任されていることは、貴公も知っていることだろう?」
「――だから、何の話を……」
「アイゼン。現在、城塞都市デリア内には無数の魔物が出現している。それら事態を知らない訳ではないだろう?」
「何を言っている?」
どうも話が噛み合っていないな。
アイゼンは、今の城塞都市デリアの現状を理解していないというか分かっていないような……。
「貴公は、城塞都市デリアで現在、何が起きているのか把握してはおらんのか?」
「デリアで?」
アイゼンは、視線を俺達ではなく総督府の門の外。
市街地へと向ける。
「――な、なんだ!? あ、あれは……。それに、どうして兵士が女子供を襲っている!?」
そこで事態を理解したのかアイゼンは大きく眼を開き、信じられないと言った表情で一人呟くが――。
それと同時にアイゼンの後ろに立っていた兵士達が突然、体を震わせたと思うと帯剣していたブロードソードを抜き放つと、アイゼンに切っ先を向けて、その体をぶつけるようにして、突いていた。
ブロードソードの切っ先は、アイゼンの鎧を貫通し、胸元からブロードソードの切っ先が生える。
「――ちっ!」
俺は舌打ちしながら、一気にアイゼンまで距離を詰める。
そして、手刀でブロードソードの刃を粉砕すると同時にアイゼンを抱きかかえて距離を取る。
「カズマ!」
「い、いったい……な、なにが……」
何が起きたのか分からないのかアイゼンは、口元から血を零しながら兵士達の方を見る。
そこで彼女は「ばかな……」と、呟いた。
アイゼンの目には、自分を刺した兵士の姿と、刀身が折れたブロードソードの柄を握ったまま動かない兵士の姿が写ったのだろう。
「ど、どうして……」
「そいつはもう駄目だな。致命傷だ」
ラムドは、歯ぎしりしながら――、そう呟くが、俺は頭を左右に振る。
「問題ない。この程度なら――」
俺はアイゼンの胸元――、おそらく心臓を貫いているであろう切っ先を握り抜く。
それと同時に血しぶきが吹き上がるが、俺の『ヒールLV10』が発動し、一瞬で彼女の傷を塞ぐ。
「カズマ、お前は……今何を……」
ラムドが驚いた様子で俺に尋ねてくる。
「ただのヒールだ。それより余所見をしている場合じゃない。どうやら、総督府の大半の兵士は傀儡になっているようだ」
俺は、20人近くの兵士が一斉に規格が同じブロードソードを抜き放つ様子を見ながらラムドに忠告する。
それを見て、「まったく……」と、俺は思わず毒づく。
「カズマ!」
向かってくる兵士をラムドも見ていたのだろう。
俺の名前を呼んでくる。
視線をラムドに向ければ、ラムドは足を止めていた。
「城塞都市デリアの冒険者ギルドマスターのラムドだ! 総督府にモンスターと関わっている嫌疑が出ている。リーン王国の一機関として総督府の改めを行う」
その言葉に、向かってきていた兵士達が足を止める。
「冒険者ギルドマスターのラムド殿が何のようだ?」
そう呟きながら、近づいてきたのは、城塞都市デリアの入り口と総督府入口で言い合いをした女騎士アイゼンであった。
「総督府が、魔物と関わっている可能性が示唆されている。その真偽の判断の為に総督府の調査を、リーン王国の一機関として行う。異論はないな?」
「ふざけるな! 冒険者ギルドに、そのような権限は与えられていないはずだ!」
アイゼンが右手を横に振りながらラムドの言い分を却下してくるが――、
「上級騎士アイゼン。貴公の考えはどうでもいい。総督府が機能不全に陥った時に冒険者ギルドに町の運営、防衛が国王陛下より一任されていることは、貴公も知っていることだろう?」
「――だから、何の話を……」
「アイゼン。現在、城塞都市デリア内には無数の魔物が出現している。それら事態を知らない訳ではないだろう?」
「何を言っている?」
どうも話が噛み合っていないな。
アイゼンは、今の城塞都市デリアの現状を理解していないというか分かっていないような……。
「貴公は、城塞都市デリアで現在、何が起きているのか把握してはおらんのか?」
「デリアで?」
アイゼンは、視線を俺達ではなく総督府の門の外。
市街地へと向ける。
「――な、なんだ!? あ、あれは……。それに、どうして兵士が女子供を襲っている!?」
そこで事態を理解したのかアイゼンは大きく眼を開き、信じられないと言った表情で一人呟くが――。
それと同時にアイゼンの後ろに立っていた兵士達が突然、体を震わせたと思うと帯剣していたブロードソードを抜き放つと、アイゼンに切っ先を向けて、その体をぶつけるようにして、突いていた。
ブロードソードの切っ先は、アイゼンの鎧を貫通し、胸元からブロードソードの切っ先が生える。
「――ちっ!」
俺は舌打ちしながら、一気にアイゼンまで距離を詰める。
そして、手刀でブロードソードの刃を粉砕すると同時にアイゼンを抱きかかえて距離を取る。
「カズマ!」
「い、いったい……な、なにが……」
何が起きたのか分からないのかアイゼンは、口元から血を零しながら兵士達の方を見る。
そこで彼女は「ばかな……」と、呟いた。
アイゼンの目には、自分を刺した兵士の姿と、刀身が折れたブロードソードの柄を握ったまま動かない兵士の姿が写ったのだろう。
「ど、どうして……」
「そいつはもう駄目だな。致命傷だ」
ラムドは、歯ぎしりしながら――、そう呟くが、俺は頭を左右に振る。
「問題ない。この程度なら――」
俺はアイゼンの胸元――、おそらく心臓を貫いているであろう切っ先を握り抜く。
それと同時に血しぶきが吹き上がるが、俺の『ヒールLV10』が発動し、一瞬で彼女の傷を塞ぐ。
「カズマ、お前は……今何を……」
ラムドが驚いた様子で俺に尋ねてくる。
「ただのヒールだ。それより余所見をしている場合じゃない。どうやら、総督府の大半の兵士は傀儡になっているようだ」
俺は、20人近くの兵士が一斉に規格が同じブロードソードを抜き放つ様子を見ながらラムドに忠告する。
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