本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫@書籍化作家

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第112話 デリア総督府消滅(12)

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「カズマ。どうしたのですか?」

 突然、声をあげた俺に怪訝そうな表情で聞いてくるエミリア。
 
「エミリア、良く聞け」
「はい」
「後ろから俺達を追ってくる一団の中にミエルの父親がいる」
「そうなのですか? でも――」
「連れている様子は無い――、そう言いたいんだろう?」
「はい」
「つまりアレか? そのミエルの父親ってのは魔王軍に傀儡として操られているってことか?」

 俺とエミリアの話を聞いていた冒険者ギルドマスターのラムドが割って入ってくる。

「ああ、間違いない」

 これがゲームの世界であるのなら、相手の名前が表示されるが、ここはゲームの世界を忠実に再現した異世界。
 そのような便利な機能はない。

「なるほど……。それで、納得できたな」
「何がだ?」
「さっき俺の所に報告に来た従業員が言っていただろう? 衛兵が攻撃をしてきたと」

 ラムドが溜息交じりに呟く。
 それが意味しているところは――。

「つまり、城塞都市デリアは……」
「本来なら都市を守るはずの衛兵や警備兵ですら傀儡にされて民間人に攻撃をしているんだ。つまり、この都市を守れるのは俺達冒険者だけってことだ」

 ラムドは吐き捨てるように、そう語る。

「まったく厄介な敵が潜入したな」

 そう愚痴るラムドに、俺は「そうだな」と言葉を短く返す。

「ラムド」
「何だ?」
「傀儡を解除する術はあるのか?」
「術者に魂を戻させるしか方法は無いが――」
「つまり……」
「助からないってことだな」

 俺が聞きたくない言葉。

「そんなっ!」

 そして、それはエミリアも同じで――、

「カズマ。何とかならないんですか?」
「何とか出来るなら、何とかしている」

 アルドガルド・オンラインでも、傀儡化された連中は幾らでも敵として出てきた。
 だが、それらを救う術なんて存在しなかった。
 それは、そのはずだ。
 何しろ倒される為に作られただけのモンスターカテゴリーに分類されるモノを救う術なんてゲームバランスを崩す以外の何物でもないからだ。

「マスター」
「何だ? リオン」
「もうすぐ総督府とやらに到着する」
「そうか」

 後ろからは騎馬兵が近づいてきている。
 このまま総督府に行けば、間違いなく挟み撃ちになるだろう。
 
「助けられないなら――」

 俺は広範囲魔法で、追っ手きている兵士に向けて魔法を発動させる為に視界内のカーソルを動かす。

「カズマ……」

 手のひらを騎馬兵の一団に向けたところで、エミリアが俺の腕に、触れてくる。

「私に何とかさせてもらえますか?」
「エミリア、彼らを助ける術はない。それは分かったはずだろう?」
「はい。――でも、それでも……」
「余計な情けは、悪戯に被害を増やすだけだ。だから――」
「カズマは、言いました。助けると――」
「それは事情が判明しなかった時のことだ」
「きっと、カズマの言葉を信じて待っています。たぶん、ミエルちゃんは……セリアンさんは、カズマが約束を守ると」
「……」
「だから、私にやらせてはもらえませんか? きっと魔王軍の幹部との戦いでは、私はたぶん足手纏いになります。それに――、私も助けたいんです。小さな子供の願いを希望を守ってあげたいんです。だから――」
「エミリア、感情論では――」
「よいではないか? マスター」
「リオン?」
「後ろを追ってきている連中を殺さずに無力化し、あとで何とかする術を見つけるのも手であろう? それに、エミリアは妾が戦い方を教えたのだ。殿を任せるのもマスターとしての度量のなせるわざであろう?」
「……分かった」

 リオンが付いているなら問題ない。
 だが――。

「エミリア、無理はするなよ?」
「はい」
「リオン、命令だ。俺達が総督に合うまで殿を務めろ」
「了解した。マスター」

 話しが終わると同時に幌馬車は総督府の敷地内――、じゃりが敷かれている部分へと突入する。
 激しい振動と、石が舞い上がる視界。
 そして煙が視線を遮る。

「ラムド。いくぞ」
「ああ、そうだな。お嬢ちゃんたちも死なないようにな」

 俺とラムドは、幌馬車から飛び降りると、前方へと見える総督府向けて走り出す。



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