本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫@書籍化作家

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第111話 デリア総督府消滅(11)

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「まぁ、とりあえずスケルトンやゾンビ相手なら冒険者で十分ってところか」

 一応、見ている限りスケルトンやゾンビは数こそ多いが動きが緩慢であり、ゾンビは近づいて噛みつくくらいしか脳がないようだ。
 それに対して、刃だけで80センチ近くあるブロードソードを振るう冒険者の攻撃リーチは遥かに長い。
 ゾンビが間合いに入る前に、ゾンビの首が次々と宙に舞っていく。
 その余裕の様子から、俺が手助けをするような冒険者はいない。

「あれは引退した冒険者か?」
「そうだな。すでに引退した冒険者には、魔物の迎撃をするように鐘で知らせてあるようだからな。俺が指示する前に。おかげで依頼金を出さなくて済んだのは良かった。何でも出来高制らしいからな。冒険者達は湧き上がっている魔物を倒して稼ごうと士気は高いらしい」
「……」

 出来高制とは言ったが、ここまで魔物が湧くとは想像をしていなかった。
 俺は思わず無言になる。
 どれだけのお金が発生するのか、少しばかり恐怖なんだが……。
 ハイネ領主様には支払いは頑張ってもらうとしよう。

「どうした? 何か顔色が悪いようだが」
「気のせいだ」

 俺は心の中で溜息をつきながらラムドに言葉を返す。
 そして、リオンが引っ張る幌馬車が、総督府の正門へと通じる大通りへと移ったところで――、

「貴様ら、見つけたぞ! まてーっ!」

 どこかで聞いた声。
 怒鳴り声が後ろから聞こえてくる。
 振り向けば、騎馬騎士が俺達を追いかけてくる。

「リオン、全力全開で総督府に突っ込め」
「了解した。マスター」
「お、おい。総督府の兵士達が血眼で俺達を追ってきてるが?」
「まぁ、説明しただろ? 総督府の門を真正面から破壊したって」
「それで、見られて狙われているのか」
「まあな。それより、アイツらゾンビとかスケルトンと戦わないのか?」
「たしかに変だな。民間人を守るのが兵士や騎士の仕事だというのに……」

 俺の問いかけに疑問を持つ冒険者ギルドマスターのラムド。
 
「まぁ、総督府に到着してからアイツらが追い付いてきてからでもいいんじゃないのか?」

俺の問いかけに「そうだな。その時に問い質せばいいか」とラムドは頷く。

「カズマ」
「何だ?」
「後ろから近づいてくる一団の中にミエルちゃんの匂いを感じます」
「何!?」

 俺は、後ろを振り向く。
 俺達を追ってくる一団は全員が完全武装のフルプレートメイルで、顔を伺い知る事ができない。
 それに誰かを縛って連れているような様子も見えない。

「エミリア」
「はい」
「後ろの一団からミエルと同じ匂いがするのは本当なのか?」
「はい。間違いないです」
「……」

 俺は思わず無言になる。

「どうした? カズマ」
「カズマ?」

 ラムドと、エミリアが無言になった俺に話しかけてくるが、俺としてはそれどころではない。
 こういうイベントを経験したことがあるからだ。
 それはアルドガルド・オンライン内の死霊イベント。
 生者の魂を抜き取り死霊の魂を肉体という器に入れることで、術者の想いのまま動かす術。
 反魂の法と呼ばれるモノ。
 ゲーム内では、それを何とかする術はなく、纏めて範囲魔法で殲滅していたが、さすがにミエルの父親が同じ状況に置かれていたとしたら、消し飛ばす訳には……。

「ちっ――、やってくれたな!」

 まさか人間を傀儡に利用する事が、ここまで苛立たせる事とは思わなかった。
 




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