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第102話 デリア総督府消滅(2)
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「カズマ!」
その声の元に――、俺を含む全ての周囲の兵士やアイゼンの視線が向かう。
それと同時に、総督府の敷地を囲っている壁を飛び越えてくるエミリア。
「――なっ!?」
アイゼンが口を大きく開ける。
その視線は、エミリアを――、そして、その背中に背負っている20代後半の女性へと向けられていた。
「どうやら成功したようだな」
「――な、何を言っている! 貴様ら!」
「エミリア」
「ただいま戻りました。ミエルちゃんの母親のセリアンさんです」
「ここは……」
「大丈夫ですか? セリアンさん」
「あの……」
どうやら意識がハッキリしていないのか、言葉には力もなく声も虚ろだな。
「よくやった。ヒールLV10」
エミリアが背負っている女性にヒールをする。
すると、すぐに何度か咳をすると、何度か瞬きをしたかと思うと、俺の方を見上げてくる。
「あんたが、ミエルの母親か?」
「あなたは……?」
「宿に宿泊するときに、少し問題に巻き込まれてしまってな。――で、あんたを助けに来たんだ」
女性は、ゆっくりと周囲を見渡す。
そして、場所を理解したのか口をゆっくりと開く。
「私は、セリアンと言います。気がついた時には、総督府の地下に連れていかれて……それで……」
「馬鹿な!? 総督府が――、そんなことする訳が!」
俺達の話を聞いていたアイゼンが、兵士達の前で取り乱す。
「事実は事実だ。それと、お前達に怪我をさせないために態々、門だけを破壊して時間を稼いだ。以上だ」
まぁ、怪我をさせない云々は完全に嘘だが、この説明で理解してくれるだろう。
「そ、そんな馬鹿なことが……」
「お前も目の前で起きた出来事を見たんだろう? 総督府から、女性が助け出されたのを」
「ええい! 煩い! どうせ、最初から潜り込んでいたんだろう! カズマ! 貴様が、ハイネでは英雄扱いされているようだが! どうせ、適当に立ち回った結果で領主が騙されたに過ぎないはずだ!」
まるで見てきたかのように、俺が適当に立ち回った結果、ハイネ領で英雄視扱いされている事を的確に当ててくるな。
まぁ、その事に対して答え合わせをするほど、俺はお人よしではないが。
「アイゼン」
「な、なんだ!?」
「ここの総督府の中に、町のゴロツキと繋がっている奴がいる。まずは、そいつを探して拘束した方がいいぞ? あとあと問題になった時に総督府のトップの住民からの信頼が地に墜ちる結果になりかねないからな」
「うるさい! こっちの信頼よりも、貴様の信頼が失墜することを気にしろ!」
ガーガー文句を言ってくるアイゼン。
腰まで伸ばしている金髪を振り乱しながら、大きな瞳で俺を睨みつけながら文句を言ってくる迫力美人。
まぁ、何と言うか……、総督府は何もしてないという思い込みから、こっちの話を聞かないというのも問題あるな。
「やれやれ……。とりあえず、言っておくぞ? 俺に手を出してくるなら、貴様らは半殺しされるという事だけは理解しておけよ?」
「何と言う言い草! 冒険者の分際で!」
「文句があるなら冒険者ギルドにでも言うんだな。その時は、冒険者ギルドが総督府が起こしている問題について追及すると思うがな」
「ぐぬぬぬ」
さすがに国が管理している冒険者ギルドと対峙すれば、詳細を調べられる可能性が出てくる。
それを一瞬で理解したのか、アイゼンは体を震わせて涙目で俺を睨んでくる。
「覚えておけよー!」
「3秒くらいは覚えておいてやる」
くやしさの余りに叫ぶアイゼンの声を背中に感じながら、俺とエミリアはセリアンを連れて、その場を後にした。
その声の元に――、俺を含む全ての周囲の兵士やアイゼンの視線が向かう。
それと同時に、総督府の敷地を囲っている壁を飛び越えてくるエミリア。
「――なっ!?」
アイゼンが口を大きく開ける。
その視線は、エミリアを――、そして、その背中に背負っている20代後半の女性へと向けられていた。
「どうやら成功したようだな」
「――な、何を言っている! 貴様ら!」
「エミリア」
「ただいま戻りました。ミエルちゃんの母親のセリアンさんです」
「ここは……」
「大丈夫ですか? セリアンさん」
「あの……」
どうやら意識がハッキリしていないのか、言葉には力もなく声も虚ろだな。
「よくやった。ヒールLV10」
エミリアが背負っている女性にヒールをする。
すると、すぐに何度か咳をすると、何度か瞬きをしたかと思うと、俺の方を見上げてくる。
「あんたが、ミエルの母親か?」
「あなたは……?」
「宿に宿泊するときに、少し問題に巻き込まれてしまってな。――で、あんたを助けに来たんだ」
女性は、ゆっくりと周囲を見渡す。
そして、場所を理解したのか口をゆっくりと開く。
「私は、セリアンと言います。気がついた時には、総督府の地下に連れていかれて……それで……」
「馬鹿な!? 総督府が――、そんなことする訳が!」
俺達の話を聞いていたアイゼンが、兵士達の前で取り乱す。
「事実は事実だ。それと、お前達に怪我をさせないために態々、門だけを破壊して時間を稼いだ。以上だ」
まぁ、怪我をさせない云々は完全に嘘だが、この説明で理解してくれるだろう。
「そ、そんな馬鹿なことが……」
「お前も目の前で起きた出来事を見たんだろう? 総督府から、女性が助け出されたのを」
「ええい! 煩い! どうせ、最初から潜り込んでいたんだろう! カズマ! 貴様が、ハイネでは英雄扱いされているようだが! どうせ、適当に立ち回った結果で領主が騙されたに過ぎないはずだ!」
まるで見てきたかのように、俺が適当に立ち回った結果、ハイネ領で英雄視扱いされている事を的確に当ててくるな。
まぁ、その事に対して答え合わせをするほど、俺はお人よしではないが。
「アイゼン」
「な、なんだ!?」
「ここの総督府の中に、町のゴロツキと繋がっている奴がいる。まずは、そいつを探して拘束した方がいいぞ? あとあと問題になった時に総督府のトップの住民からの信頼が地に墜ちる結果になりかねないからな」
「うるさい! こっちの信頼よりも、貴様の信頼が失墜することを気にしろ!」
ガーガー文句を言ってくるアイゼン。
腰まで伸ばしている金髪を振り乱しながら、大きな瞳で俺を睨みつけながら文句を言ってくる迫力美人。
まぁ、何と言うか……、総督府は何もしてないという思い込みから、こっちの話を聞かないというのも問題あるな。
「やれやれ……。とりあえず、言っておくぞ? 俺に手を出してくるなら、貴様らは半殺しされるという事だけは理解しておけよ?」
「何と言う言い草! 冒険者の分際で!」
「文句があるなら冒険者ギルドにでも言うんだな。その時は、冒険者ギルドが総督府が起こしている問題について追及すると思うがな」
「ぐぬぬぬ」
さすがに国が管理している冒険者ギルドと対峙すれば、詳細を調べられる可能性が出てくる。
それを一瞬で理解したのか、アイゼンは体を震わせて涙目で俺を睨んでくる。
「覚えておけよー!」
「3秒くらいは覚えておいてやる」
くやしさの余りに叫ぶアイゼンの声を背中に感じながら、俺とエミリアはセリアンを連れて、その場を後にした。
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