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第97話 城塞都市デリア(3)
しおりを挟む「――ど、どうかしたのですか?」
案の定というかエミリアが、女の子に話しかける。
「ご、ごめんなさい。えっと一晩、おひとり様、銀貨1枚になります」
どうやら、商売に徹することにしたようだ。
まぁ、通りすがりの俺達が関わる必要はないからな。
それに、俺達が何とかできる内容なら、とっくに解決しているだろうし。
「それじゃ3人分で」
「はい。お部屋は3部屋用意しますか?」
「いや――、2部屋でいい」
「あの、カズマ」
「何だ?」
「リオンちゃんを一人だけ部屋に置くのは……」
「大丈夫だ。あいつは」
「そうでしょうか?」
たしかにリオンは、俺のことをマスターと呼んでいるからな。
だが、リオンは、この世界において最強の4匹のモンスターの一匹。
寂しいという感覚はないだろ。
それでも……、エミリアが一緒の部屋に泊まりたいなら――。
「3人で一部屋泊まれるプランとかはあるか?」
「はい!」
どうやらあるようだ。
「お部屋を先に確認しますか?」
「いや、それよりも幌馬車で移動しているんだが、馬車を停めるスペースとかはあるか?」
「ありますけど……、停めるスペースの料金も銀貨1枚かかります」
「そのくらいなら問題ない」
俺は、金貨を1枚、アイテムボックスから取り出す。
「支払いは、これで大丈夫か?」
「は、はい!」
女の子は慣れた手つきで、おつりを用意すると俺に差し出してくる。
「204号室が、お部屋になります」
「世話になる」
俺は一端、外に停めている幌馬車へと戻る。
すると幌馬車の周辺には、いかにもゴロツキの風貌と思わしき男達が転がっていた。
その顔はボコボコに殴られていて原型をとどめていない。
「リオン」
「はっ! マスター」
「何が起きた?」
「妾もよくは分かりませんが、マスターが宿に入っていたあとに、宿を利用するようなことを命令してきただけでなくマスターの持ち物に無断で手を触れた為、人間の分際で生意気だったため、かなり手加減をして教育しておきました」
「なるほど……」
俺は幌馬車の周囲に転がっている四肢が曲がってはいけない方向へ曲がっているばかりか、顔が陥没しているゴロツキを見て溜息をつく。
「とりあえず始末しておくか」
「さすがはマスター、英断です! 敵には死を!」
「だめです! 往来の通りですよ!」
俺の呟きに反論してくるエミリア。
エミリアの言う通り周りを見渡せば、道行く人たちは足を止めて俺達の方を見てきている。
「仕方ないな。リオン、エリアヒールで回復を」
「正気ですか? マスター」
「さすがに、この場で、惨殺はできないだろう?」
「なるほど。理解しました。あとで! ということですか」
「その思考は止めておけ」
リオンに命じ、すぐにエリアヒールにより30人近くのゴロツキ達の傷が治る。
だが、すぐに意識を取り戻さない。
もう少し手加減をしてくれないと、時間がもったいないんだが……。
「コイツでいいか」
とりあえずゴロツキの中でも身なりのいい男を見つけて、俺はゴロツキの腕に足を振り下ろす。
ゴキッ! メキッ! と、言う骨が砕け折れる音と共に――、
「ぎやああああああああ」
――と、言う汚らしい声が往来の通りに響き渡る。
どうやら痛みから目を覚ましてくれたようで良かった。
「おい」
「――ひっ!」
恐怖の色を宿した瞳で俺を見てくる男。
「お、おまえは……」
「あ? 俺は、この幌馬車の持ち主だが、俺の持ち物に対して何か用か?」
「お、お前が……あの基地外の幼女の――親なのか!」
「失礼な! マスターは、妾を作り出したと言ってよいが、下がれ下郎が! マスターに、お前という言葉など!」
リオンが、上半身だけ起こしていた男の顔面に向けて全力で蹴りを放つ。
その威力は、間違いなく男の上半身が消し飛ぶ威力。
「おい、リオン」
俺は、その蹴りを片手で受け止める。
その際に衝撃音と衝撃波が周囲に撒き散らされ疾風が巻き起こり埃や小石が舞い上がる。
「ひぃいいい」
「ここでは殺るなと言っただろう?」
「申し訳ありませぬ。マスターを侮辱されたので、つい!」
ほら、リオンが攻撃を入れようとしたから、ゴロツキが体を震わせているじゃないか。
「なあ、俺はあいつと違って話は通じる方だ。俺の幌馬車に何をしようとしたのか、詳しく話してくれるよな?」
「は、はひっ!」
壊れた機械のように頭を前後に動かすゴロツキ。
案の定というかエミリアが、女の子に話しかける。
「ご、ごめんなさい。えっと一晩、おひとり様、銀貨1枚になります」
どうやら、商売に徹することにしたようだ。
まぁ、通りすがりの俺達が関わる必要はないからな。
それに、俺達が何とかできる内容なら、とっくに解決しているだろうし。
「それじゃ3人分で」
「はい。お部屋は3部屋用意しますか?」
「いや――、2部屋でいい」
「あの、カズマ」
「何だ?」
「リオンちゃんを一人だけ部屋に置くのは……」
「大丈夫だ。あいつは」
「そうでしょうか?」
たしかにリオンは、俺のことをマスターと呼んでいるからな。
だが、リオンは、この世界において最強の4匹のモンスターの一匹。
寂しいという感覚はないだろ。
それでも……、エミリアが一緒の部屋に泊まりたいなら――。
「3人で一部屋泊まれるプランとかはあるか?」
「はい!」
どうやらあるようだ。
「お部屋を先に確認しますか?」
「いや、それよりも幌馬車で移動しているんだが、馬車を停めるスペースとかはあるか?」
「ありますけど……、停めるスペースの料金も銀貨1枚かかります」
「そのくらいなら問題ない」
俺は、金貨を1枚、アイテムボックスから取り出す。
「支払いは、これで大丈夫か?」
「は、はい!」
女の子は慣れた手つきで、おつりを用意すると俺に差し出してくる。
「204号室が、お部屋になります」
「世話になる」
俺は一端、外に停めている幌馬車へと戻る。
すると幌馬車の周辺には、いかにもゴロツキの風貌と思わしき男達が転がっていた。
その顔はボコボコに殴られていて原型をとどめていない。
「リオン」
「はっ! マスター」
「何が起きた?」
「妾もよくは分かりませんが、マスターが宿に入っていたあとに、宿を利用するようなことを命令してきただけでなくマスターの持ち物に無断で手を触れた為、人間の分際で生意気だったため、かなり手加減をして教育しておきました」
「なるほど……」
俺は幌馬車の周囲に転がっている四肢が曲がってはいけない方向へ曲がっているばかりか、顔が陥没しているゴロツキを見て溜息をつく。
「とりあえず始末しておくか」
「さすがはマスター、英断です! 敵には死を!」
「だめです! 往来の通りですよ!」
俺の呟きに反論してくるエミリア。
エミリアの言う通り周りを見渡せば、道行く人たちは足を止めて俺達の方を見てきている。
「仕方ないな。リオン、エリアヒールで回復を」
「正気ですか? マスター」
「さすがに、この場で、惨殺はできないだろう?」
「なるほど。理解しました。あとで! ということですか」
「その思考は止めておけ」
リオンに命じ、すぐにエリアヒールにより30人近くのゴロツキ達の傷が治る。
だが、すぐに意識を取り戻さない。
もう少し手加減をしてくれないと、時間がもったいないんだが……。
「コイツでいいか」
とりあえずゴロツキの中でも身なりのいい男を見つけて、俺はゴロツキの腕に足を振り下ろす。
ゴキッ! メキッ! と、言う骨が砕け折れる音と共に――、
「ぎやああああああああ」
――と、言う汚らしい声が往来の通りに響き渡る。
どうやら痛みから目を覚ましてくれたようで良かった。
「おい」
「――ひっ!」
恐怖の色を宿した瞳で俺を見てくる男。
「お、おまえは……」
「あ? 俺は、この幌馬車の持ち主だが、俺の持ち物に対して何か用か?」
「お、お前が……あの基地外の幼女の――親なのか!」
「失礼な! マスターは、妾を作り出したと言ってよいが、下がれ下郎が! マスターに、お前という言葉など!」
リオンが、上半身だけ起こしていた男の顔面に向けて全力で蹴りを放つ。
その威力は、間違いなく男の上半身が消し飛ぶ威力。
「おい、リオン」
俺は、その蹴りを片手で受け止める。
その際に衝撃音と衝撃波が周囲に撒き散らされ疾風が巻き起こり埃や小石が舞い上がる。
「ひぃいいい」
「ここでは殺るなと言っただろう?」
「申し訳ありませぬ。マスターを侮辱されたので、つい!」
ほら、リオンが攻撃を入れようとしたから、ゴロツキが体を震わせているじゃないか。
「なあ、俺はあいつと違って話は通じる方だ。俺の幌馬車に何をしようとしたのか、詳しく話してくれるよな?」
「は、はひっ!」
壊れた機械のように頭を前後に動かすゴロツキ。
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