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第79話 宝物庫に何もないんだが?
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謁見の間での茶番も終わり、ハイネ領主のヘイゼルと一緒に宝物庫へ。
城の中は至るところが黒く焦げており、皆月茜とサキュバス達の攻撃が如何に酷かったのが、一目で見て取れる。
「それにしても……」
「どうかしましたか? カズマ」
「――いや」
俺は、階段を登っていくヘイゼルの背中を見ながら一人考えていた。
普通、宝物庫は城の地下にある。
それが、アルドガルド・オンラインに置ける定番であり、常識。
――と、言うか普通のゲームでも宝物庫は、普通は地下にあるものだ。
だが! 今、向かう先は城の上層部。
アルドガルド・オンラインの世界において最強のプレイヤーでもあった俺が、デフォルト設定であった地下を無視するような宝物庫の配置場所に疑問を思うのは当然の帰結とも言える。
「カズマ殿」
一人考えていると、ヘイゼルが俺に話しかけてくる。
「こちらが宝物庫になる」
「おお」
まったく装飾が施されていない武骨な両開きの鉄の扉。
それが、期待を裏切ると同時に、期待を彷彿をさせる。
「約束通り両手で持てる分だけ持って行ってくれればよい」
「――分かった」
俺は、両開きの扉の取っ手を引っ張り開けていく。
そして――、部屋の中には……。
「何も無いんだが?」
本当に宝物庫の中には何もない。
唯一あるモノと言ったら、空になった棚とかだろう。
「すまない。どうやら、裏切った勇者であるアカネ・ミナツキが放った魔法で燃えたようなのだ」
「なん……だと……。金や銀、宝石はあるはずだろう?」
少なくとも金は、溶けることはない。
「それが、ハイネ領主は代々、絵画などを宝物として集めているのだ」
「な……」
思わず俺は絶句する。
そんなバカな事があっていいのか……。
「それでは、俺の働きに対する報酬はどうなるんだ?」
「それは……。どうにかしたいが――。今のハイネ領の財政では――、しかも城もこの有様――。ここは、カズマ殿。申し訳ないが、現物支給はできないので違う意味での支払いなど出来ないだろうか? もちろん一括は無理だが――」
つまり宝物で支払う訳ではなく別の意味での支払いをしたいという訳か。
「何なら、カズマ殿をハイネ領で召し抱えて爵位を与えてもよい」
「それはいらない」
俺は即答で断る。
爵位とか面倒な事にしか巻き込まれないからな。
そうなると、金で払ってもらうのがベストになるが分割という事になると何度も足を運ぶ必要性が出て面倒だ。
――あっ……。
良い案が浮かんだ。
「ヘイゼル。俺、今借金をしているんだが……、それを全額支払ってくれるだけでいいぞ」
「ほう……。どこの借金だ?」
「ケインの冒険者ギルドから金を借りている。つまり、その借金を支払ってくれるだけでいい」
「なるほど……。たしかカズマ殿の冒険者ランクはDであったな?」
「そうだが?」
「なるほどなるほど。それなら、カズマ殿の借金をハイネ領で全額、冒険者ギルドに返済するという形で報酬を渡す方向でいいだろうか?」
「ああ、十分だ。俺も、そこまでがめつくはないからな」
「分かった。それでは、執務室で書類を作るとしよう」
俺の冒険者ランクを聞いてきた所を見ると、俺の本当の借金額については知らないらしい。
それなら、俺が背負っている借金を全てハイネ領主に任せるとしよう。
それまでは、小銭を欲しがっている冒険者という体を見せておくのがベストだな。
城の中は至るところが黒く焦げており、皆月茜とサキュバス達の攻撃が如何に酷かったのが、一目で見て取れる。
「それにしても……」
「どうかしましたか? カズマ」
「――いや」
俺は、階段を登っていくヘイゼルの背中を見ながら一人考えていた。
普通、宝物庫は城の地下にある。
それが、アルドガルド・オンラインに置ける定番であり、常識。
――と、言うか普通のゲームでも宝物庫は、普通は地下にあるものだ。
だが! 今、向かう先は城の上層部。
アルドガルド・オンラインの世界において最強のプレイヤーでもあった俺が、デフォルト設定であった地下を無視するような宝物庫の配置場所に疑問を思うのは当然の帰結とも言える。
「カズマ殿」
一人考えていると、ヘイゼルが俺に話しかけてくる。
「こちらが宝物庫になる」
「おお」
まったく装飾が施されていない武骨な両開きの鉄の扉。
それが、期待を裏切ると同時に、期待を彷彿をさせる。
「約束通り両手で持てる分だけ持って行ってくれればよい」
「――分かった」
俺は、両開きの扉の取っ手を引っ張り開けていく。
そして――、部屋の中には……。
「何も無いんだが?」
本当に宝物庫の中には何もない。
唯一あるモノと言ったら、空になった棚とかだろう。
「すまない。どうやら、裏切った勇者であるアカネ・ミナツキが放った魔法で燃えたようなのだ」
「なん……だと……。金や銀、宝石はあるはずだろう?」
少なくとも金は、溶けることはない。
「それが、ハイネ領主は代々、絵画などを宝物として集めているのだ」
「な……」
思わず俺は絶句する。
そんなバカな事があっていいのか……。
「それでは、俺の働きに対する報酬はどうなるんだ?」
「それは……。どうにかしたいが――。今のハイネ領の財政では――、しかも城もこの有様――。ここは、カズマ殿。申し訳ないが、現物支給はできないので違う意味での支払いなど出来ないだろうか? もちろん一括は無理だが――」
つまり宝物で支払う訳ではなく別の意味での支払いをしたいという訳か。
「何なら、カズマ殿をハイネ領で召し抱えて爵位を与えてもよい」
「それはいらない」
俺は即答で断る。
爵位とか面倒な事にしか巻き込まれないからな。
そうなると、金で払ってもらうのがベストになるが分割という事になると何度も足を運ぶ必要性が出て面倒だ。
――あっ……。
良い案が浮かんだ。
「ヘイゼル。俺、今借金をしているんだが……、それを全額支払ってくれるだけでいいぞ」
「ほう……。どこの借金だ?」
「ケインの冒険者ギルドから金を借りている。つまり、その借金を支払ってくれるだけでいい」
「なるほど……。たしかカズマ殿の冒険者ランクはDであったな?」
「そうだが?」
「なるほどなるほど。それなら、カズマ殿の借金をハイネ領で全額、冒険者ギルドに返済するという形で報酬を渡す方向でいいだろうか?」
「ああ、十分だ。俺も、そこまでがめつくはないからな」
「分かった。それでは、執務室で書類を作るとしよう」
俺の冒険者ランクを聞いてきた所を見ると、俺の本当の借金額については知らないらしい。
それなら、俺が背負っている借金を全てハイネ領主に任せるとしよう。
それまでは、小銭を欲しがっている冒険者という体を見せておくのがベストだな。
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