本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫@書籍化作家

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第62話 ハイネ城炎上!(9)

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「アクアドラゴン……?」
「ハイネ領主が話していた水竜の名前だな」
「そうなんですか……。この先に、竜が……」
「覚悟はいいか? 相手は、最強の魔物の一匹だ」

 俺の言葉にゴクリと唾を呑み込むエミリア。
 その表情は、とても真剣であり青い瞳には恐怖の色が見え隠れしていたが――、エミリアは唇を噛みしめると――、

「はい!」

 ――と、ハッキリと答えてきた。
 
「ならいくか」

 俺は、魔法陣の中へと足を踏み入れる。
 すると何の抵抗もなく――、巨大な水圧が体を押しつぶそうとしてきた。
 すぐにアイテムボックスを発動し、水竜の巣――、大空洞内を満たしている水をアイテムボックスの中へと仕舞いこんでいく。
 それと同時にアイテムボックス内から空気を放出。
 数十秒で体に掛かっていた水圧は消え去り、膝丈までの水量へと変わった。

「ケホッケホッ」
「大丈夫か? エミリア?」
「――あ、はい。大丈夫です。それより、何かの攻撃ですか?」
「いや巨大な水が、この地底の大空洞内を満たしていたんだ。その水圧が、俺達に襲いかかってきたようだ」
「そう……だったんですか」
「ああ。とりあえず、しばらく休もう」

 俺はヒールをエミリアにかけながら声をかけたところで――。

『ほう。こんなところに人間が来るとは……』
「――なっ!?」

 俺は振り向く。
 すると、そこは体高が10メートルを超える巨大な白き竜アクアドラゴンが鎮座していた。
 アクアドラゴンは、アルドガルド・オンラインの世界では、水竜の巣の一番奥にしかいないはずだ!
 だが――。

「――くっ」

 俺の知識は、あくまでもゲームの世界のものだ。
 そして現実世界というのは侭ならないもの。

『人間。誰の許可を得て、この地へと足を踏み入れた?』

 その声は、威圧を含んでおり、まるで言葉そのものが叩きつけられてくる。
 そして――、ドシャッという何かが水の中に倒れ込む音が聞こえてくると共に、俺は視線を音がした方へと向ける。

「エミリア!」

 そこには過呼吸気味のエミリアの姿が。
 
「カズ……マ……」

 弱々しい声で、俺の名前を呼んでくるエミリア。

「何をしたっ!」
『妾は、何もしてはおらん。だが――、妾の言霊にやられたのだろうな』
「なんだと……」
『その小娘、ずいぶんと大仰な装飾品をしておるが、本来であるのなら、即死であったところを、装飾品に救われたな』

 俺はエミリアを抱きかかえて、水竜を無視し結界から元の神殿の場所へと戻る。

「す……いません……。まったくお役に立てずに……」
「いや、俺の方こそ完全な計算違いだった。とりあえず体力が回復したら、すぐに領主と合流してハイネの町の住人の避難を徹底してくれ。あれが外に出たら威圧だけで、どれだけの人間が死ぬか分からない」
「わかりました……。でも、カズマは……」
「あとは、俺に任せておけ」
「――でも……」
「エミリアが居る所に俺は戻る。それだけだ」

 コクリとエミリアが頷いたのを見たあと、俺は水竜の巣へと戻る。


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