本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫@書籍化作家

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第41話 港町ケイン防衛戦(20)

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「ここからは私がカズマさんを守ります!」
「駄目だ……逃げろ……。ケインには強い冒険者はいない。その状態で、1000匹近い魔物を倒すのは無理だ。だから――、お前だけでも……」
「絶対に嫌です!」

 エミリアは力強い言葉で否定してくる。

「そうですよ! カズマさん!」

 さらにエミリアの横にはソフィアが並び――。

「おう! そうだぜ、カズマ! 途中から聞こえていたぜ! 魔王の四天王が俺達、人間を馬鹿にしていたこともな!」
「ふぉふぉふぉ。まったく――、若い内は無理をするのも良いが――」

 爺さんの放った魔法が、魔物を一匹焼き尽くす。

「少しは儂らの力を舐めてはおらんかの」
「爺さん……」
「師匠と呼べと言ったじゃろうに。さて――、引退する予定じゃったが、今回は本気でいくとするかの……。小僧共! 突破口は、儂が開く。儂の魔法で穿った場所から突撃をするのじゃ!」
「冒険者の皆さん! 魔物は1000匹程度です! カンダタさんが攻撃魔法を放った突撃し殲滅!」

 ソフィアの指示により「ウォオオオオオオオ」とケインの町の冒険者達が声をあげる。

「さて――、小僧みておれ! ファイアーストーム!」

 俺よりは小さいが、それはたしかに火炎旋風と言って差し障りのない魔法。
 炎の竜巻は1000匹の魔物の大軍を中央から分断していく。

「冒険者全軍突撃!」
 
 ソフィアの号令と共に、一斉に抜刀しモンスターの群れに突っ込んでいく冒険者達。
 
「弓隊は、前衛部隊の掩護を! 魔法使いは、上空のモンスターの殲滅を!」

 矢継ぎ早に飛ばされるソフィアの命令に冒険者達は、連携を取り残りのモンスターを討伐していく。
 それは、まさしく戦士の姿と言っていい様相で……。

「カズマさん」
「ソフィア?」
「魔王軍の四天王は、人間を取るに足らない存在だと思っていたかも知れません」

 ソフィアは、背中を向けて俺に話してくるから、どんな表情をしているのか分からない。

「――ですが、人間には人間の戦い方があります。カズマさんも、私達を少し舐めていたのではないですか?」
「たしかにそうかも知れないな……」

 最初に俺は言ったじゃないか。
 これはレイドバトルだと……。
 一人で戦うのはレイドバトルではない。
 皆の力を束ねて戦うのがレイドバトルだ。
 力を合わせた時の戦力値は一人の時よりも桁外れに強い。

「あまり、私達、冒険者を甘くみないでください」
「ああ……、分かった」
「それでは、あとの後始末は、私達冒険者に任せて休んでおいてください。エミリアさん、カズマさんの介護は頼みましたよ?」
「はい!」

 ソフィアが離れていく。
 その足取りはしっかりとしていて、的確に魔物を倒す為の指揮をしている。
 もはや態勢は決したと言っていい。

「エミリア」
「はい」
「怒っているか?」
「怒っています! 一人で戦いにいくなんて――。もっと私を信頼してください」
「そうだな……」
「カズマさんは、私が死ぬことが嫌だと思ったから置いていったんですよね?」
「……」
「無言は肯定だと受け取ります。――でも、私だって、カズマさんが居なくなったら寂しいです。カズマさんがケインから出ていって1時間、何も出来ずに見ていることしか出来なかった私達の気持ちを考えてください! みんな、カズマさんを同じ冒険者の仲間だと思っているんですよ!」
「ああ……」
「だから、あとで怪我が治ったら、ごめんなさいしてくださいね」
「分かったから、泣くな……」

 ポロポロと涙を零しているエミリア。
 その蒼穹よりも青く美しい瞳は、ボロボロになり血塗れの俺の姿を映している。
 そして、俺の言葉に、頷いたエミリアを見て俺の意識は途絶えた。



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