本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫@書籍化作家

文字の大きさ
上 下
1 / 200

第1話 チュートリアルは完了しました。

しおりを挟む
「一馬、お前、今日でクビな!」
「――え?」

 ダンジョンから戻り換金して、冒険者ギルドから出て、しばらく進んだ裏路地で、アイテムを整理したいからと言われて、アイテムボックス内のアイテムを全部出したところで、唐突に俺は一方的にパーティを追放された。
 それを言って来たのは、金子(かねこ)隆(たかし)。
 俺は、何が何だから分からない内に無理矢理、首を掴まれる。

「ようやくお前とおさらばできるぜ! まったくアイテムボックスさえ貰えるSランク冒険者になれば、お前みたいなアイテムボックスしかスキルを持ってないゴミはいらねーんだよ! この寄生虫が!」

 突然のことに、俺は何も出来ずに頭の中は真っ白だった。
 金子に俺は無防備に殴られる。
 何度も! 何度も! 何度も!
 どれだけ殴られたか分からない。
 もう体中がボロボロで逃げることすら許されない。

「皆月さん……」

 俺は同じパーティメンバーの名前を呼ぶ。
 だけど、そんな俺の願いは簡単に踏みにじられた。
 右腕が、同じパーティメンバーの皆月(みなつき)茜(あかね)さんの炎の初級魔法(ファイアーボール)で焼かれたから。
 脳裏を突き抜けるような激痛。
 それは痛みを通り越して拷問だった。
 
 ――叫ぶ。

 だけど、裏路地だった事もあり誰も通らない。
 なんで? と、いう感情も相まって俺の思考は混乱し、さらに、もう片腕も焼かれる。
 顔は、金子に殴られ続け意識は朦朧としてくる。

「ほんと! キモイよね。自分が好意を持たれているとか勘違いしてさ! あー、同じ空気を吸っているってだけで気持ち悪い」

 声だけが――、皆川さんの声が聞こえてくる。
 薄れゆく意識の中で、自分の体が何かに刺されたところで、もう一人のパーティメンバーである高山(たかやま)浩二(こうじ)の笑い声が聞こえてくる。

「簡単に騙されやがって! てめーみたいな、社会の底辺のゴミ屑を仲間だと思うわけがねーだろ!」

 何度も何度も何度も、自分の体が刺される。
 痛みは無い。
 ただ――、信じた仲間に裏切られたのは、とても痛かった。
 そして……俺の意識は暗闇の中へと落ちていった。
 それと同時に脳内に声が反響する。

 ――チュートリアルが完了しました。

 そこで俺は何が起きたのかと必死に意識を繋ぎ止めながら目を開ける。
 どうやら倒れているのは、裏路地だった。
 仲間だった連中に放置されたらしい。

 もう体は殆ど動かせない。
 全てのアイテムは仲間に奪われた。
 お金が入った袋も奪われ、手元には何も残ってない。
 信じていたのに、俺は裏切られたという事実は変わらないらしい。
 
「もう無理だ……」

 ――そこで俺の意識は途切れた。


 ――夢を見た。

 そこは異世界ガルドランド。
 剣と魔法の世界で、エルフやドワーフなどもいるファンタジーな世界。
 そんな世界の森の中に、ある日、俺、田中(たなか)一馬(かずま)は目を覚ましたら召喚されていた。

 ――しかも、40歳という年齢で初老の域に入っていた俺の体は17歳まで若返っていた。

 当然、突然のことに驚いた。
 だが、大国アルドノアの王様の命令で俺を迎えに来た兵士に、俺は召喚された勇者だからと城に案内された。

 ――到着した謁見の間。

 国王アルザスの前には、俺以外に3人の召喚された日本人が居た。
 高校時代に俺を虐めた主犯格の男2人。
 そして常に俺をゴミでも見るような目で見下していた女子生徒。

 俺は警戒しつつ、謁見の間で片膝をつき国王の話を聞く。

 国王アルザスは言った。
 本来、勇者は3人のはず。
 だが、4人、召喚されてしまったと――。

 全員が勇者という事で、魔王を討伐する為に4人でパーティを組んだ。
 だが、すぐに俺は役立たずだという事が判明してしまう。
 
 ――理由は簡単。

 ゲームのようにステータスが見られたから。
 他人には、自分のステータスを見られることはないが、自分自身ではステータスを見ることは出来る。
 だから、称号の部分を見れば、自分が勇者かどうかはすぐに判別できた。

 そして――、俺は神に近い魔王を倒す必須の称号である『勇者』の称号を持っていなかった。
 だけど、高校時代に俺を虐めていた奴らは別人だと思うほどに、やさしく良い奴らだった。

「同じ高校の仲間だろ! ずっと友だろ!」

 そう言って親指を立ててアピールしてくる金子隆。

「そうよ! 一馬は、同じ日本から来た友達なんだから、一緒にがんばりましょう!」

 皆月(みなつき)茜(あかね)さんは、俺を励ましてくれた。
 
「まぁ、一馬。今日からは一緒に頑張ろうぜ!」

 そう言い、俺に笑いながら話しかけてくる高校生時代に俺をサンドバック扱いしていた高山(たかやま)浩二(こうじ)。
 俺は、あまりにも彼らの態度が違うことに驚いたが、俺と同じように若返ったのかと思った。
 だが話を聞く限り全員が高校で授業を受けていた時に異世界に召喚された事が、すぐに判明する。
 俺は自分が若返ったことは隠した。
 余計な詮索をされて、せっかく気立ての良い奴らを不安にさせる必要はないと思って。

 ――だが……、それが……、判断の誤りだった。
 仲間だと思って一緒に行動していた結果が……。

「大丈夫ですか? 生きていますか?」

 死ぬ間際に俺は、ふいに目が覚めた。
 そして、俺を心配そうに覗き込んでいる獣人の美少女に目を奪われた。



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...