婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫

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第99話 販売するものを考えましょう(4)

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「はい」
「――で、どのような用途に使うのかを聞いても?」
「こんな感じです」

 私はアイテムボックスから二つの木の板を取り出し、ネジをドライバーで回して、二つの板を繋げて見せる。

「おお……。これは……」
「どうですか? ちなみに、逆に回転させると……板が外れます!」
「何と言うか……これは画期的です! これを考えたのは天才です! これなら釘を使わずに色々な用途で木材同士を接着させることができます」
「ですよね。――で、売り物になりそうですか?」
「売り物どころか、建築や家具に至るまで革命が起きます!」
「本当ですか……」

 実は、そんなに大したモノではないと思っていたけど、じつは大したモノだった説。
 
「――で、これを幾らくらいで売る予定ですか? あまり高くても……」
「そうですね」

 とりあえず全て、純正の鉄と言った感じなので価格としては……、日本だとドライバーは100円から売っているから。

「ドライバーに関してはどうか1枚を考えています」
「なるほど。つまり加工が難しく何度も流用の効くネジというものを高くうると?」
「いえ。100個で銅貨2枚くらいで売ろうかなと」
「安すぎます!」

 ニーナさんが、机をバン! と、叩き興奮気味に叫ぶ。

「そ、そうですか」
「はい! 青銅製の釘でも、1本で銅貨3枚はします! それを鉄という金属で作っているのですから……。それに何度も利用できる事を考えますと大銅貨1枚でも安すぎるくらいです! 銀貨1枚でも!」
「さすがに、そこまでは……」
「そのくらい画期的な代物です!」
「ニーナさん、落ち着いてください。とりあえず、エミさん」
「はい」
「鉄製のネジについては、一応は、青銅製のクギよりも安く販売するのは止めてください。市場が崩壊してしまいますので」
「それならいくらくらいが妥当なのでしょうか?」
「青銅製の釘よりも10倍くらいの、銅貨30枚から40枚くらいで販売して頂ければと思います」
「そうですか……」

 ネジ1個で3000円から4000円とかぼろ儲けすぎるけど、異世界の相場が分からない以上、商業ギルドの話を素直に聞いておいた方がいいかも。
 市場経済を破壊すると、既存の職人さんが職を失う可能性だってあるし。

「それにしても精巧に出来ているネジですね。これはさすがにコスト的に見て輸入するのがいいでしょう。それとドライバーですが……」
「何か問題でも?」
「はい。出来れば、ドライバーというモノに関しては拝見させて頂いた限りでは町の職人でも作れると思いますので、職人に発注して頂くことはできませんか?」
「それは、先ほどから言われている経済に関してですか?」
「ご理解頂けて幸いです。遅かれ早かれ、エミさんが扱う商品は王都だけでなく王国中に回ると思います。ただ、その時にドライバーまで独占販売されると、職人が困るのです。ですから……」
「つまり、忖度して欲しいと……」
「はい。ご自身の身の安全のためにも。ただ、エミさんを直接害せる人はいないと思いますが、長い目で見た場合、ある程度の不利益は被って頂いた方が……」
「なるほど……」

 どうも、この世界は商売一つとっても一筋縄ではいかなそう。





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