婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫

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第97話 販売するものを考えましょう(2)

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「ただいまー」
「あら、ずいぶんと早いお帰りなのね」

 宿に戻った私を出迎えてくれたメルサさんは、緑茶を出してくれた。
 私は、出されたお茶を飲みながら、御茶請けとして出されたお煎餅を口にする。

「落ち着きますね」
「エミさんは、エルフみたいな味覚をしているのね」
「そうですか?」
「ええ。緑茶を飲むのはエルフくらいだもの」
「へー」
「だって、普通の人間は、渋いだけのお茶を飲むなんて! って、嫌煙するのよ?」
「そうなのですか?」
「でも、エミさんは普通に飲むわよね? 砂糖とか入れなくても」

 そう言われれば、テーブルの上には黒砂糖が置かれている。
 
「緑茶に砂糖を入れるのは邪道です」
「ほら! そう言う所が、エミさんはエルフみたいな味覚をしているって思ったのよね」
「なるほど……」

 つまり、日本人はエルフだった説が! なんて、事もないよね

「私は雑食なだけなので……。そういえば、エルフと言えば動物性たんぱく質って取らない民族だって聞いたのですけど」
「動物性たんぱく質?」
「えっと、動物の肉ってことです」
「そういうことね」

 私の説明に得心がいったのか頷くメルサさん。
 
「それは、誰に聞いたのかしら?」
「色々と又聞きしている間に教えてもらいました」
「そうなのね。商人として見習いを経験しているのなら、そう言う事もあるわよね」
「はい」

 話しながらも、私は転生前の日本で得た知識だということは伏せておくことにする。

「肉を食べない習慣――、それは昔の話ね。ハイエルフの習慣から、そういう話が出回ったようだけど、普通にエルフは肉も食べるわよ? ハイエルフは、普通のエルフとは違って精霊や妖精に近いから肉を取らなくても問題ないけどね」
「なるほど……」
「そういえば、店舗契約の方は上手くいったの?」
「はい。何とか契約をする事が出来ました」
「そう! おめでとう!」
「ありがとうございます」
「お店の場所は、どのへんなの?」
「えっと、一応はダンジョンが出現した地区になります。空き家が多くなったということで、安く借りる事が出来ました」
「そう。たぶん、ダンジョン近くは危険だから、それで引っ越したのかも知れないわね」
「私も、そう思っています」
「とりあえず、無理はしないようにね」
「はい」
「あとは……そうそう。どんなモノを取り扱うお店にする予定なの?」
「まだ考えてはいないのですが……」
「そうなのね。無理はせずにゆっくりと考えるといいわ」
「そのつもりです」

 ただ、色々と規制がありそうなので、その点も踏まえて、どんな商品を扱うのか翌々考えないと。





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