婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫

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第89話 商業ギルドカードを手に入れました。

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 テストに合格した足で、商業ギルドの受付に向かう。

「――あ、もう、終わったんですか?」

 何故か、気の毒そうな表情を向けられてしまう。
 きっと不合格したと思っているのかも知れない。

「これをマンハットンさんから渡すようにと言われました」

 私は、マンハットンさんから渡された銀色のバッジを、ニーナさんに渡す。
 すると彼女は大きく眼を開き、自身の手元のバッジと私を交互に見た後、「――え?」と言う、表情を見せる。

「あの……、マンハットンさんより合格したら、そのバッチを渡すように言われたのですが……」

 話しが進まないので、私はニーナさんに話しかける。

「あ、はい! ご、合格ですか!? すごいですね。その年齢で! 普通は、もっと年を経てから合格しますのに」
「そうなのですか?」
「はい。受講料も高いですから、まさか……大商会の方でもない飛び込みの方が、一発で合格してしまうなんて思いませんでした。ギルドカードを用意しますので、少しお待ちください」

 冒険者ギルドカードは、すぐに作ることが出来たし更新も早かったのに、商業ギルドカードは少し時間が掛かるらしく受付から立ち上がると、奥へと通じる廊下を走っていってしまった。
 
「どのくらいで戻ってくるのか聞いた方が良かったのかも……」

 思わず一人呟きながら、壁に背中を預けて待つことにする。
 そして――、1時間ほどが経過したところでニーナさんが戻ってきた。

「お待たせしました」
「いえ」

 実際、かなり待たされていたので、少し思う所が無いと言えばウソになるのだけれど、顔には出さずに対応する事にする。
 これから商売を、キルワ王国でするのなら商業ギルドとのやり取りは増えると計算した結果だけど。

「それでは、こちらが商業ギルドカードとなります」

 彼女が差し出してきたのは、銀色のカード。
 大きさとしては冒険者ギルドカードと同じくらいだけど、画用紙のような質感の冒険者ギルドカードとは違い、商業ギルドカードの質感は金属。

「これって鉄ですか?」
「――いえ。銀になります。銀は古来より魔除けの意味合いもありますが、魔法線を刻むことが容易で魔力の伝導性が極めて高いため、商業ギルドではメンバーには銀で作ったカードを渡しております」
「そうなのですか」

 魔法線ね……。
 多種多様な効果魔法を付与する時に事前に物体に魔力の電動回路を刻みこむ術式のこと。
 主に武器の切れ味を上げたり防具の耐久力を上げるのがメインで利用されているけど。
 それをカードに応用しているとは……。

「はい。こちらのカードを利用することによって、カードには商人が持っているお金の残高が刻み込まれます。もちろん硬貨での取引も可能ですが、硬貨や延べ棒などの取引に関しては重量が発生しますので、カード同士での金銭の取引が、商業ギルドに加入している商人の間では一般的です」
「なるほど……」

 たしかに、全員がアイテムボックスの魔法を使う事が出来る訳ではないし、理に叶っている。

「分かりました」
「――では、エミ様。お店を開かれると言う事でしたが、どちらで開かれるかは決めては?」
「まだ決めてはないです。というよりも店舗をコレから探しますので」
「なるほど……。それでは商業ギルドの方から店舗を紹介することもできますが?」
「そうなのですか?」
「はい。契約が成立した場合には、多少は中間マージンを多少頂くことになりますが」
「そういうことですね。是非お願いします」





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