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第83話 ダンジョン探索の報酬(1)
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迷宮を10階層まで攻略してから、2日が経過。
いま、私はアネットさんやユーリエさんと共に冒険者ギルドの受付に来ていた。
正確には呼び出されたに近いけど。
「それでは、御三方の報酬は冒険者ギルドからの強制依頼分として金貨2枚。あと追加報酬として金貨200枚が王宮より支払われる形となりました」
「思ったより少ないな」
「せやね」
私の横で、冒険者ギルドの受付担当の女性リアナさんが引き攣った笑みを浮かべる。
それは、そのはずで、棺に入っていた砂金の量はどう見積もっても数百キロはくだらない。
金が何金かによるけれど、それでも金貨200枚というのは……。
でも日本円にして2億円近く。
当面の資金というか開業資金としては十分な価格。
「もっと王室に言えないのか? 安すぎるって」
「アネットさんとユーリエさんでは無理かと」
「――くっ。前回、ヘタこいたのが痛い」
「ただ、エミさんなら交渉出来るのでは?」
チラッと意味深な様子で視線を私に向けてくる。
「いえ。私は、金貨200枚で十分ですので」
「ええ。エミ、頼むよ!」
「同じパーティの仲間やろ」
「お二人とも、よく考えてください。ここは引き下がって、王宮に恩を売っておくほうが絶対にいいのです」
「だが、冒険者は自分達の事を安く売らないのが鉄則だぞ?」
「エミはんの村はどうかしらんけど、稼げるときは稼いで搾り取れるところからは搾り取らんと生きていかないで」
「王宮側も色々とあるのです。王宮側の財政についても、突然、町中にダンジョンが出現した結果、民が怪我をしたり職を失ったり、建物が住めなくなったり、治安が悪化したりと、表面上だけでは見る事ができない部分に、国税が使われ、その結果、報酬が減っている可能性だってあります」
「でも、それって私達には関係ないよな?」
私の説明にアネットさんが突っ込みをしてくる。
「関係はおおありです。治安改善のためには多額の国税が必要になります。そして治安の上昇は、物価の安定を保つことになります。強いて言えば、冒険に必要な装備や商品を安く購入することが出来るのです。つまり巡り巡って自分達に還元されると言う事です」
「それは分かったけど、どうしてウチらが犠牲にならへんといけへんの」
「昔からよく言います。そして偉い人は言いました。『損をして得を取れ』と」
「どういう意味なんだ?」
「目先の利益だけを追うのではなく、将来的に大きな利益が生まれる可能性があるという意味です」
私の説明に何故かリアナさんも感心したように頷いている。
それだけでなく周りの冒険者ギルドの受付の人も此方を見てきていた。
ちょっと語り過ぎてしまったかも?
「とにかく、私としては金貨202枚で十分です」
話しをさっさと切り上げようと思い、リアナさんへ伝える。
「仕方ないな」
「エミはんが、そう言うなら」
「――では、こちらが報酬になります」
リアナさんが差し出してきた金貨が入った袋。
重さはだいたい2キロくらい。
私はアイテムボックスに袋入れ、二人は大半の金貨を冒険者ギルドに預けていた。
「では帰りましょう」
早く空き店舗探さないと。
「エミ、何かクエストの依頼をこなさないのか?」
「とりあえず私は購入できる店舗を探そうと思います」
「――ん? どういうことだ?」
「私、お店を始めたいと思っていますので」
「えー!」
アネットさんへの返答に、大声で立ち上がり叫んだのはリアナさんだった。
どうして、彼女が驚くのか……。
いま、私はアネットさんやユーリエさんと共に冒険者ギルドの受付に来ていた。
正確には呼び出されたに近いけど。
「それでは、御三方の報酬は冒険者ギルドからの強制依頼分として金貨2枚。あと追加報酬として金貨200枚が王宮より支払われる形となりました」
「思ったより少ないな」
「せやね」
私の横で、冒険者ギルドの受付担当の女性リアナさんが引き攣った笑みを浮かべる。
それは、そのはずで、棺に入っていた砂金の量はどう見積もっても数百キロはくだらない。
金が何金かによるけれど、それでも金貨200枚というのは……。
でも日本円にして2億円近く。
当面の資金というか開業資金としては十分な価格。
「もっと王室に言えないのか? 安すぎるって」
「アネットさんとユーリエさんでは無理かと」
「――くっ。前回、ヘタこいたのが痛い」
「ただ、エミさんなら交渉出来るのでは?」
チラッと意味深な様子で視線を私に向けてくる。
「いえ。私は、金貨200枚で十分ですので」
「ええ。エミ、頼むよ!」
「同じパーティの仲間やろ」
「お二人とも、よく考えてください。ここは引き下がって、王宮に恩を売っておくほうが絶対にいいのです」
「だが、冒険者は自分達の事を安く売らないのが鉄則だぞ?」
「エミはんの村はどうかしらんけど、稼げるときは稼いで搾り取れるところからは搾り取らんと生きていかないで」
「王宮側も色々とあるのです。王宮側の財政についても、突然、町中にダンジョンが出現した結果、民が怪我をしたり職を失ったり、建物が住めなくなったり、治安が悪化したりと、表面上だけでは見る事ができない部分に、国税が使われ、その結果、報酬が減っている可能性だってあります」
「でも、それって私達には関係ないよな?」
私の説明にアネットさんが突っ込みをしてくる。
「関係はおおありです。治安改善のためには多額の国税が必要になります。そして治安の上昇は、物価の安定を保つことになります。強いて言えば、冒険に必要な装備や商品を安く購入することが出来るのです。つまり巡り巡って自分達に還元されると言う事です」
「それは分かったけど、どうしてウチらが犠牲にならへんといけへんの」
「昔からよく言います。そして偉い人は言いました。『損をして得を取れ』と」
「どういう意味なんだ?」
「目先の利益だけを追うのではなく、将来的に大きな利益が生まれる可能性があるという意味です」
私の説明に何故かリアナさんも感心したように頷いている。
それだけでなく周りの冒険者ギルドの受付の人も此方を見てきていた。
ちょっと語り過ぎてしまったかも?
「とにかく、私としては金貨202枚で十分です」
話しをさっさと切り上げようと思い、リアナさんへ伝える。
「仕方ないな」
「エミはんが、そう言うなら」
「――では、こちらが報酬になります」
リアナさんが差し出してきた金貨が入った袋。
重さはだいたい2キロくらい。
私はアイテムボックスに袋入れ、二人は大半の金貨を冒険者ギルドに預けていた。
「では帰りましょう」
早く空き店舗探さないと。
「エミ、何かクエストの依頼をこなさないのか?」
「とりあえず私は購入できる店舗を探そうと思います」
「――ん? どういうことだ?」
「私、お店を始めたいと思っていますので」
「えー!」
アネットさんへの返答に、大声で立ち上がり叫んだのはリアナさんだった。
どうして、彼女が驚くのか……。
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