婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫

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第80話 聖女の失踪 第三者side(1)

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 ――セルトラ王国は人口30万人を有しており、ローレンシア大陸南方においても5本の指に入る大国。
 いま、そのセルトラ王国の王都では重大な問題が発生していた。

 王都の中心部の高台に建設された王城の執務室には、国の重鎮が集まっており緊迫した雰囲気が漂っていた。

「父上、私から王位継承権を剥奪するとはどういうことですか!」
「どうもこうもない」

 執務室のソファーに座っていた国王ローレンツ・ド・セルトラは、目の前に座っている自身の子供に向けて冷淡な声をかけていた。

「お前が勝手に婚約解消を宣言したせいで、今、我が国はどういう状況になっているのか理解しているのか?」
「それは――」

 自身の父親であり国王陛下であるローレンツに、現在の王国の置かれた状況を聞かれた第一王位継承権を持つクルト・ド・セルトラは言い淀む。

「答えられる訳もないな」
「それは……」
「答えられるのか? クルト」
「……」
「お前が、男爵家の娘に現を抜かしていた間に、どういう国際状況になっているのか、一切調べていなかったというのに」
「ですが! それと、王位継承権剥奪は関係ないのでは!」
「馬鹿者! お前にも、幼少期の頃から何度も教えていただろう! 女神の祝福を受けた聖女が誕生すると!」
「それは、いくらなんでも……」
「教会の啓示だ。実際に、オイレンブルグ公爵家に珍しい黒髪黒眼の女児が生まれた。しかも稀有な白銀の魔力を持つ者。我がセルトラ王国は、代々、生まれた聖女を迎い入れ繁栄してきた。それを忘れた訳ではないだろうな?」
「――ですが、別に聖女を娶らなくても……」
「お前は、何を貴族学院で学んできたのだ? 王家や貴族は強い魔力を持つ子らを持つ事が国を守る上で重要視されている。そして、子供の魔力の質にもっとも影響を与えるのは母体の方になる。この意味が分かるな?」
「……それでは、レーナは不適合だと言うのですか!」
「不適合以前の問題だ。そもそも男爵家風情が王家に嫁ぐことなどありえない。伯爵家などに一度、養子として迎い入れられてからではないと格が保てないというのは分からないのか?」
「……ならば! いまから、レーナをそうすればいいのではないのですか!」
「どこまで馬鹿なのだ」

 クルトの言葉をバッサリと切り捨てるローレンツ国王陛下。
 その様子を見ていた軍務大臣であり、オイレンブルグ公爵家の当主であるユリウス・フォン・オイレンブルグは深く溜息をついていた。
 ここまで、物事を見られない王太子殿下に娘を嫁がせようとしていたのかと、後悔しながら。




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