婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫

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第70話 キルワ王国のダンジョン探索(25)

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「ふう……。何とか、なりましたね。とりあえず――」

 周りを見渡す。
 騎士団でも、流石にオーガー相手では無傷では済まなかったようで、腕を追っている方や、腹部から血を流している方もいる。

「エリアヒール!」

 周囲に、回復魔法を放つ。
 一定の範囲内に存在する私が視認し認識した生命の傷を癒す魔法。

「怪我が……」
「折れた腕が治った!?」
「腹部が抉られたのに!?」

 次々と完治した騎士の方々が声を上げていく。
 そして、範囲回復魔法の発動が終わったところで、私は一息つく。

「お、おい! 一体、何がどうなっている!?」

 私の魔法に驚いたのか慌てた様子で駆け寄ってくるロドリアさん。

「範囲攻撃魔法で殲滅しました。あとは範囲回復魔法で皆さんの治癒をしただけです」
「なん……だと……」
「一応、賢者ですので――」
「賢者でも瀕死の人間を治す事なんて……。聖女でもない限り――」
「うちの村では普通でしたが?」
「また村って言っているぞ」
「いつものことやね」

 ロドリアさんに説明している横で、アネットさんとユーリエさんが突っ込みを入れてきていますけど、無視しておきましょう。

「そ、そうなのか……。君の村は、稀有な場所であったのか」
「稀有と言えば、そうだと思いますけど……。それよりも隊列を組みなおした方がいいと思います。追加で魔物が襲ってくるとは限りませんので」
「あ、ああ。そうだな……。君のことに関しては後で教えてもらうとしよう」

 彼が私から離れていき騎士団の元へと向かう。
 その後ろ姿を見ながら、私は溜息をつく。

「ずいぶんとロドリアに気にいられたみたいやね」
「別に嬉しくはないのですが……」

 ユーリエさんに言葉を返す。

「それよりも良かったのか? あんな大魔法を連発して……魔力の方も大丈夫なのか?」
「はい。あの程度の魔法なら殆ど魔力消費はありませんから」
「ドラゴン討伐の時も思ったが、エミの強さは規格外すぎるな」
「そんなことは……」

 私の魔法は、魔法であって魔法ではない。
 あくまでも地球の科学知識を応用したものに過ぎない。
 エリアヒールに関しても、学校で習う生物学などを参考に人体の基本構成を忠実に真似て修正しただけ。
 つまり、地球人と同じ身体的特徴を持っていなければ、効果はほとんどない。
 幸い、魔力以外は人体構成は地球と差分がないから問題はないけれど、妖精族関係の回復になった場合に、回復魔法が正しく作用しなくなる可能性があるので注意が必要。

「それよりも、ロドリアの顔見たか? ユーリエ」
「見た、傑作やったね」


 






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