婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫

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第66話 キルワ王国のダンジョン探索(21)

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 しばらくすると、先ほど、私と会話をした上級騎士の方が近寄ってくる。

「エミは、この二人と同じパーティだという話だが、二人と行動を供にすると言う事でいいのか?」
「はい。同じ冒険者ギルドのメンバーでもありますので……、それで問題でもありましたでしょうか?」
「……いや、何も問題はない。それでは、少し待っていてくれ」

 彼が何を言いたいのか? と――、私は首を傾げてしまう。

「エミはすごいな」
「そうですか?」

 後ろからアネットさんが私を抱きしめてくる。
 身長差があるから、覆いかぶさられるような形になってしまうけど。

「ああ」
「せやで! ほんまにすごいねん。以前は、めっさ横柄で、ウチらを使い潰すつもりで指示も適当やったのに」
「そうなのですか」

 3人で、騎士団の方々に聞こえないように小声で話をしていると、先ほどの男性が駆け寄ってきた。

「おほん。それでは迷宮探索だが、騎士団が5人ほど先行する事になった」
「そうなのですか?」
「ええ。まずは、騎士団を5人先行させ中衛には、私とエミさん達一行と、後方には残りの騎士団を配置する事になった。君達には、中衛を務めてもらいたい」
 
 その言葉に、ユーリエさんが「ほーん」と、小さく鼻を鳴らす。

「何か?」
「いや、何でもあらへん」
「言いたいことがあるのなら、この場で言ってくれないと困るのだが?」
「べつに――」

 拗ねたようなユーリエさんの言い方に、顔を引きつらせる上級騎士の方。
 当然、彼は、上級騎士。
 つまり実家は貴族家となる。
 貴族家を敵に回すと後々面倒になることは王宮で暮らしていた私はよく理解している。

「ロドリア様。ユーリエは、すでに迷宮を探索する心構えになっているのです」
「それが何か関係があるのか?」
「はい。弓兵というのは先制攻撃を取り、一番最初に得物を見つけるのが誇りです。中衛に置かれてしまっては、騎士団の方々に貢献できないと思い、プロの観点から不機嫌な態度を取ってしまったのです。その点につきましては、騎士団の方々の御心を汲み取ることが出来なかった事も含めて! こちらの落ち度です。申し訳なく思います」

 私は軽く頭を下げる。
 そして――、上目遣いで。

「騎士団の方――、そしてロドリア様は前回起きたトラップに関しまして、同じようなことが起きないようにと最善の注意を払って、私達を守るように陣形を配置してくださったのですよね?」
「――え? あ、ああ。そうだな……」
「やはり! そうかと思いました。騎士団の方と言えば勇猛果敢で、弱きものを守るというのが古来からの習わしですものね?」
「おほん! 分かってくれればよい。それでは、編成は――」
「ロドリア様にお任せします」
「う、うむ。ではダンジョンに入るとしようか」
「はい!」

 うまく話しを逸らすことができた。
 それにしても、ユーリエさんやアネットさんの様子から見るに、ロドリアという男性は色々と問題を抱えた人物みたいですね。




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