婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫

文字の大きさ
上 下
64 / 105

第64話 キルワ王国のダンジョン探索(19)

しおりを挟む
 ――翌朝。

 現在、私は宿屋1階のリビングでご飯とお味噌汁と生姜焼きを食べ終えて、緑茶を啜っていた。
 ちなみにアネットさんとユーリエさんは、迷宮探索の用意をしている。

 二人が用意している理由は簡単で、昨日、冒険者ギルドの受付女性に教えられた迷宮探索の予定が今日だから。
 朝早く集合場所に行くことになったので、二人は装備の最終チェックをしているところ。
 ちなみに私の装備と言えば村娘が着るような赤く染色された木綿のワンピースと下着だけで、靴は走りやすいように魔法で精錬した運動靴を履いていたりする。
 
 そう――! 明らかに迷宮に潜る恰好ではない!

「エミさんは、何の用意もしなくて大丈夫なの?」

 緑茶のお代わりを湯飲みに注ぎながら、メルサさんが語りかけてくる。

「はい。全部、アイテムボックスに入っていますので!」
「そうなのね……。でも、その服装で迷宮に入るのは危険だと思うわよ?」
「そうでしょうか?」

 それは、分かっています。 
 だけど、一つ問題があって……。
 私が魔法で作れるのは、あくまでも大学までに習った科学の授業の再現にすぎない。
 日本で暮らしていた時は、よく映画で自衛隊の人とかが良く分からない迷彩服とか色々と着こんでいたのを見た事がありますけど、じつは知らない材質や物を作ることはできない。
 そこが、私の魔法の弱点と言えば弱点。
 あくまでも、地球の科学を応用した魔法に過ぎないから、本当の魔法ではないのかも知れない。
 つまり、本当の意味では弱点は腐るほどあったりする。
 それを吐露するつもりはないけど……。

「でも、エミさんは、ブレイズさんを倒したから大丈夫よね?」
「アネットさんとユーリエさんも居ますし、王国の騎士団の方も同行されるという事なので大丈夫だと思います」
「そう。無理はしないようにね」
「はい。ごちそうさまでした」

 両手を合わせて、食材と料理人に感謝する。
 そこで階段が軋む音が聞こえてくる。

「二人とも、もうエミさんの食事は終わったわよ?」

 階段から降りてきたのはユーリエさんとアネットさん。
 アネットさんは、鉄で作られた重装備をしていて――、ユーリエさんはライトアーマーを着こんでいる。
 二人とも、黒色で装備を染めている。
 どうして、色をつけているの? と、私は首を傾げてしまったけど、何か理由があるのかも知れない。

「エミは、もう食事していたのか?」
「はい。二人とも食事しておいた方がいいのでは?」
「もう失敗できひんよって、今日はこのままでいくよ」
「そうなのですか」

 やはり前回の迷宮探索が失敗したのが、尾を引いているのかも知れない。

「そう言うと思って携帯食を作っておいたから、迷宮探索中にお腹が空いたら食べてね」

 そう言いながらバゲットを差し出してきたメルサさん。

「メルサさん、私が受け取ってアイテムボックスの中に入れておきます」
「エミさん、よろしくね」
「はいっ」

 彼女から受け取りアイテムボックスに入れたあと、私達はキルワ王国の騎士団との待ち合わせ場所へと向かう為に、宿を後にした。







しおりを挟む
投稿内容がバグっていた為、再度、修正しました。
感想 2

あなたにおすすめの小説

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」

まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。 【本日付けで神を辞めることにした】 フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。 国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。 人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 アルファポリスに先行投稿しています。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている

五色ひわ
恋愛
 ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。  初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

スキルがないと追い出されましたが、それには理由がありますし、今は幸せです。

satomi
恋愛
スキルがないからと婚約破棄をされたうえに家から追い出されたギジマクス伯爵家の長女リンドラ。 スキルに関して今は亡きお母様との約束で公開していないが、持っている。“降水量調節”。お母様曰く「自然の摂理に逆らうものだから安易に使ってはダメ。スキルがあることを秘密にしなさい。この人なら大丈夫!って人が現れるまでは公開してはダメよ」ということで、家族には言っていません。 そんなリンドウが追い出されたあと、路上で倒れていた所、公爵様に拾われましたが……

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

処理中です...