婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫

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第58話 キルワ王国のダンジョン探索(13)

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 肉体を魔力で強化した状態で、地面を蹴りつける。
 視神経を強化している事もあり、刹那の時間でブレイズさんとの距離を詰めると同時に、彼は「チッ!」と舌打ちすると共に、フランベルジュを地面へと叩きつけるけど――、土砂が巻き上がる前に、私の肩はブレイズさんとぶつかり彼を弾き飛ばす。

「――な!?」

 私とブレイズさんと戦っていた様子を見学していた誰かが驚いたような声を上げていたけれど、私はそれを強化された聴覚で拾い上げると共に、空中に待機させていたダガーをブレイズさんへと射出する。
だが10本にも及ぶダガーが、ブレイズさんへと着弾する寸前で全て打ち砕かれた。

「魔法障壁!?」
「あたりだ!」

 強化された視力は、何が起きたのかを魔力の動きを察知することで拾い上げ、それを私の思考が理解する。
 そして、全てのダガーを粉砕したブレイズさんが、こんどは私の方へと向かってきた。
 その速さは、尋常ではなく明らかに身体能力を私と同じように強化しているのは見て取れた。

 ――キンッ!

 彼が袈裟切りしてきたフランベルジュの刃を私の小太刀が受け止め――、そして……、そのまま斬り裂く!

「――ッ!?」

 目を見開くブレイズさん。
 さらに私は得物を失ったブレイズさんの腹に空気弾を放ち彼を吹き飛ばす。
 空中を時速100キロ近い速度で30メートル程の距離を吹き飛んだ彼は、冒険者ギルドの建物の壁をブチ破り、その姿を消す。
 あとに残ったのは、砕けた建物の壁と――、舞い上がった埃。
 
「副ギルドマスター!」
「ブレイズさん!」

 10秒ほど空いた所で、見学にきていた冒険者ギルドの職員たちが慌ててブレイズさんの方へと駆け寄っていく。

「これは……、ちょっとやり過ぎたかも知れないです」

 私は、小さく一人呟きながら魔力操作を行う。
それにより、元々は黒髪と黒瞳だった容姿は、金髪碧眼へと変化する。

「これは酷い……」
「重症だわ。教会へ司祭様を――」

 そんな声が聞こえてくる。
 声の出どころは吹き飛ばされて壁に激突したブレイズさんの方から。
 もちろん切羽詰まった声は冒険者ギルドの職員の人達。

「すいません。治療します」

 自分で致命的なダメージを与えておいて治療とは一体? という突っ込みを心の中で独白しながら、ブレイズさんの方へと向かう。
 案の定、彼の容態はかなり酷いモノ。
 日本だったら放送事故で明らかにお蔵入りの状況。

「ここまで酷い状態では普通の回復魔法では難しい」
「とりあえず、貴女は副ギルドマスターが力試しをするって言ったから、こんな事になっても大丈夫だとは思うけれど……、町の中で此処までの事をしたら衛兵に何か聞かれることは覚悟しないと駄目よ?」

 冒険者ギルドの方々が、私を警戒して語り掛けてくる。

「とりあえず、私は治療魔法も使えますので」

 一刻を争う状態と言う事もあり、私は両手をブレイズさんの胸元に添えて回復魔法を発動させる。
 もちろん人体の設計図などは前世の日本で基礎教養として中学や高校で習っていたので、それを応用する。
 
「……うっ。一体……」

 私の回復魔法は、ブレイズさんの体を完璧に治療を行えたようで、しばらくしてブレイズさんは意識を取り戻した。




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