婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫

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第49話 キルワ王国のダンジョン探索(4)

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 メルサさんに淹れてもらったハーブティーを飲みながら、目の前で話されているダンジョンに関しての会話に耳を傾ける。
 どうやら、王国の騎士団と冒険者ギルドからの依頼と言うことでダンジョンの調査に向かったらしいのだけれど、やはり最初に聞いたとおりに成果は芳しくないようで、今後の対策についての目途が立っていないのが実情のようで……。

「それなら、断った方がいいんじゃない?」

 ユーリエさんと、アネットさんの話を黙って聞いていた宿屋の女将メルサさんが口を開く。
 
「やっぱり、そうなるよな……」
「せやな」

 二人も、既に話を聞いてほしいという段階で、結論には至っていたようで深々と溜息をついている。
 そんな様子を見ながら、私はテーブルの上の和菓子を口にする。
 砂糖などは高級品なので、和菓子と言ってもおせんべいに近いものではあるけれど、醤油は、エルフが作っているらしく、きちんとした日本のおせんべいに近い。
 パリパリと口の中で噛み砕きながら、ハーブティーを飲み二人を交互に見る。
 ユーリエさんと、アネットさんは既に答えは決まっているようだけど、どうも踏ん切りがつかないように思えてならない。

 そりゃ冒険者ギルドから出す依頼というのは高位冒険者だから信頼して出すのであって、その依頼が失敗したという事になれば、冒険者ギルドの沽券に関わりかねない。
 つまり、冒険者ギルドの看板に泥を塗る行為に近い。

「あの……」
「なんだ?」

 困った表情をしているアネットさんが私を見てくる。

「冒険者ギルドで依頼が失敗した場合って、とくにペナルティーとかはないはずですけど」
「そうは言うても実際に失敗すれば信頼を失うさかいにええ仕事とか稼げる仕事を回してもらえんようになるから、せやから困っとるのよね」
「なるほど……」

 つまり現代の日本と同じように、信用されているからこそ、重要な役割を与えられたと……、だけど、それを満足に遂行できなければ信頼を失って立場が危うくなると。

「でも、さすがに命が関わっていることですよ? 名誉や信頼とどっちが大事なのかは一目瞭然ですよね?」
「そうだな……。なあ、ユーリエ」
「みなまで言わんでも分かっとるから。せやけど、オーガーまで倒したって事で冒険者ギルドには認識されとるから」
「あー」

 思わず、声が漏れる。
 つまり、ダンジョン内での探索の仕事はオーガーを倒せる冒険者なら可能と判断されたと……。

「どうかしたのか? エミ」
「いえ。もしかして、いま調査中のダンジョンって、オーガーを倒せる実力があるのなら、苦もなく探索できる場所なのですか?」

 私の言葉に、二人は力無く前後に頭を動かした。



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