婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫

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第48話 キルワ王国のダンジョン探索(3)

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「分かっている……。本当に、迷惑をかけてすまなかった……」
「うちも、今回は、いままでがとんとん拍子やっただけに気が緩んどったわ」

 二人とも、気落ちした様子で呟く。
 その様子から、痛いほど伝わってきた。
 
 ――そう、反省しているということは。

 静まり返ったというよりも、どんよりと暗くなった室内の空気は、呼吸するのも躊躇いを感じるほど。

「二人とも、とにかく無事で戻ってきたのだから、それでいいんじゃないのかしら?」

 メルサさんは、明るく二人に声をかける。
 
「そうですよ! 無事に戻ってくるまでが遠足だって言いますし!」
「遠足?」

 私の励ましに引っかかる分があったのか、アネットさんが顔を上げてくる。
 もちろん、その際にアネットさんと視線が交差する訳だけど……。

「はい! 簡単に言えば、出かけて戻ってくるまでが仕事みたいな感じです」
「仕事か……、ふっ――、そうだな」
「相も変わらず、エミはんは良く分からん言い回しをするわ」
「村の秘伝なので……」
「そう言うことにしておくわ。せやな、無事に生きて帰ってきよった。また、ダンジョンに挑める。つまり負けやないってことやからね」
「はい!」
「それじゃ二人ともお腹は空いているわよね?」
「ペコペコだ」
「うちも」

 メルサさんの提案に、アネットさんとユーリエさんは頷く。

「それでは、私はお風呂に行ってきます」

 きちんと体を温めていなかったので湯冷めしそうなので、さっさとお風呂に入って温まるとしましょう。

「お風呂に入っていたのか?」
「ですよ」

 私は、リビングからお風呂に向かい、出てきたのは1時間が経過したころ。
 リビングに戻ると、二人とも食事を摂り終えたのだろう。
 今後の方針について話し合っているのが聞こえてきた。
 どうやら、今後のダンジョン探索に関係するもののようで……。

「――お! エミ! 風呂から出たのか?」
「はい」

 いち早く、リビングに入ってきた私に気がついたアネットさんが話しかけてくる。

「今回は、エミに本当に迷惑をかけたな」
「気にしないでください。一応、同じパーティメンバーで戦った知り合い同士じゃないですか」
「そこは仲間と言ってほしいんやけど」
「まぁ、そこは、一度はパーティを解散していますから」
「固いな、エミは」
「そこは常識人と言ってほしいのですけど……。それよりも、冒険者としての今後について相談されているようでしたので、席を外しましょうか?」
「――いや、外さなくていい」
「そうですか……」

 私は、二人に勧められるまま椅子に座る。
 すると奥まった台所から「エミさんは、ハーブティでも飲む?」と声をかけてくる。

「はい。お願いします」

 お風呂から出たばかりという事もあって水分が足りていないので、私は念慮なく御馳走してもらう事にする。




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