婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫

文字の大きさ
上 下
47 / 105

第47話 キルワ王国のダンジョン探索(2)

しおりを挟む
 とりあえず私は、まず湯浴みをする事にする。
 幸い、メルサさんはエルフと言うこともあり魔法が使えるので、何時でもお風呂には入る事が出来る。

「やっぱり日本人はお風呂ですよね」

 裏路地を散策した事もあり、特に見た感じでは汚れてはいないけれど、匂いなどが染みついているのでは? と心配になったのは事実なので、すぐにお風呂に入れるのは本当に助かります。

 体を備え付けの石鹸で洗い、腰まで伸ばしている髪も時間をかけて洗い浴槽から手桶でお湯を掬い泡など洗い流す。
 さっぱりしたところで肩まで湯舟に浸かり、お湯に体を沈めるという贅沢を満喫していた所で、「酷い怪我じゃないの? 大丈夫なの?」と、言う声が聞こえてきた。
 ただ、悲鳴と言った感じでは無かったので緊急性は感じられない。
 それでも、怪我をしたという声が気になり、私は体をタオルで拭き浴室から出る。

 声の方向へと向かうと、そこはリビングで――、椅子にはアネットさんとユーリエさん。
 そして二人に心配そうな視線を向けているメルサさんの姿があった。
 ユーリエさんは、特に怪我らしい怪我はしていないけど、アネットさんは右腕に包帯を巻いていた。
一の腕だけでなく二の腕まで包帯が巻かれている事から、メルサさんが大きめの声で話していた通り、かなり怪我だという事が包帯に滲み出ている血から容易に想像がついた。

「アネットさん」
「ああ、エミか……いま戻った。」
「エミはん。お願いがあるんやけど」
「分かっています」

 私は、頷きアネットさんの右腕に巻かれている包帯を解いていく。

「これは……切り傷ですよね?」
「ああ、ダンジョン内に出現したノールという白い怪物の持つ大太刀で斬られたんだ」
「なるほど……。それで毒とかは?」
「浅い階層だったから、刃に毒が塗られているという事はなかったが……」

 そこでアネットさんは言い淀む。
 
「とりあえず、怪我を治療しますね。毒などが無ければ魔法で治癒した方が早いですから」

 私は、アネットさんの肩に手を置き回復魔法を発動。
 一瞬でアネットさんの腕の斬られた跡は塞がり何事もなかったかのように紫色だった肌の色も健康的な肌色に。

「エミ、ありがとう。助かった」

 頭を下げてくるアネットさん。

「いえ。それで、二人で探索をしていて怪我をしたのですか?」
「――いや、一応は冒険者ギルドの手練れとパーティを組んでダンジョン内を探索していたんだが、トラップに嵌って私とユーリエだけが他の場所へ転移させられてしまったんだ」
「転移ですか……」
「ああ、浅い階層には存在しない転移のトラップだったから、見落としていた。それにスルトーンの冒険者ギルドも何も言っていなかったからな」
「つまり、想定外の問題が起きたということですか?」
「ああ、そうなる」
「でも二人とも無事に帰ってきて良かったです。メルサさんも心配していましたから」

 二人とも、私の言葉に申し訳なさそうな表情を見せた。
 



しおりを挟む
投稿内容がバグっていた為、再度、修正しました。
感想 2

あなたにおすすめの小説

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」

まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。 【本日付けで神を辞めることにした】 フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。 国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。 人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 アルファポリスに先行投稿しています。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

火弾の魔術師 ~女神ナビで最強の魔導士を目指す~

カタナヅキ
ファンタジー
遊び半分で黒魔術の儀式に参加した主人公の「間藤 真央」は儀式の最中に発生した空間の亀裂に飲み込まれ、本物の女神と遭遇した。自分を「アイリス」と名乗る女神は真央を別の世界に転生させ、彼が念じればいつでも自分と連絡できる能力を与える。新しい世界で「マオ」という名前の少年に生まれ変わった主人公はある時に魔法の存在を知り、自分も使ってみたいと考えた。 「魔法使いになりたいのなら私が教えてあげますよ。一国を支配できるぐらいの立派な魔法使いに育ててあげます!!」 「いや、そこまで大層なのはちょっと……」 女神の考案する奇天烈な修行法で魔法の腕を磨き、最強の魔法使いの称号である「魔導士」を目指す――

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている

五色ひわ
恋愛
 ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。  初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

処理中です...