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第45話 何でも屋(3)
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「正確な位置を知らないって当然な気がしますけど……」
思わず、思った事が口に出てしまっていた。
何せ、案内されないと辿り着かないような場所なのだから。
「まぁ、そうじゃな」
カッカッカッと、軽く笑いながら私の言葉を肯定してくる。
「あの、それで買取店というのは――」
「ここが買取もしている店じゃな」
店内を見渡して何となく察しは付いていたけれど、何でも屋は、本当に何でも屋みたい。
「そうなのですか」
「うむ。だから、一般の人間は立ち入ることが出来ないようにしておる」
「一般の人間は……ですか。だから、裏路地で散策をしていた私に声をかけてきたという事ですか?」
「まぁ、それもあるがの。お前さんが、魔法使いという事もある」
「……」
「黙しても何も変わらんぞ? 最初に、お主に声をかけてきた悪漢を魔法で退けていたじゃろ?」
「つまり、最初から私のことを見ていたという事ですか?」
「裏路地に入ってくるような人間はロクな人間ではないし、それなりに表では活動できないモノが多いからの。そういう者との取引が主な儂にとって裏路地に入ってくる人間を見て選別し顧客にするかは大事な商売だからの」
「なるほど……」
私は、心の内で溜息をつきながら意識を切り替える。
どうやら、目の前の老人は見た目どおりの人間ではなく、かなり厄介な相手。
何故なら相手を試して自身のテリトリーに連れてくるどころか、顧客にしようという大胆不敵な行動を取るという事までしてきたから。
正直、厄介な相手に目をつけられたという思いはあるけれど……。
「ずいぶんと淡泊な反応じゃな」
目の前の老人――、デメトルさんは何か他にリアクションが欲しかったのか残念そうな素振りを見せるけれど……。
「十分、驚いています。それよりも、デメトルさん」
「なんじゃな?」
「私が魔法使いということを認識した上で店まで連れて来たという事ですが、私が店を吹き飛ばすとは考えなかったのですか?」
「そんなことをするくらいなら、最初から冒険者でもしていた方が稼げるじゃろう? それをしなかったという事は表立って功績が残るような事はしたくないというところかの?」
「……」
私が冒険者だという事は一切、話していないはず。
それなのに、こちらの素性が分かっている? つまり、それはどういうこと?
「ずいぶんと優秀な情報網を持っているのですね」
「仕事上、必要なことじゃからの」
「そうですか。それなら、私が登録をかけた名前なども知っていると。たしかに、商人の方の中に知り合いがいれば分かりますよね」
「残念じゃが、その程度の引っ掛けでは口が滑るような事はないのう」
「分かっています」
情報源が何処から漏れているのか分からない。
それに海千山千とも思われる老人に対して口を割らせる術と言ったら力で何とかするしかないけれど、相手の情報が不足している段階では此方も下手に動いて情報を与える訳にはいかない。
「――さて、カンダと言ったかな? 何を買い取りして欲しくて店を探していたのか聞きたいのだが?」
「いえ、とくには――」
とりあえず、ここは余計な情報を提供する必要はないと思う。
それこそ、王妃見習いとして与えられていた私室の調度品など売ったら身元が一発でバレそうだし……。
「ほう……」
私の回答が以外だったのか、老人は私に向けて笑みを向けてきた。
思わず、思った事が口に出てしまっていた。
何せ、案内されないと辿り着かないような場所なのだから。
「まぁ、そうじゃな」
カッカッカッと、軽く笑いながら私の言葉を肯定してくる。
「あの、それで買取店というのは――」
「ここが買取もしている店じゃな」
店内を見渡して何となく察しは付いていたけれど、何でも屋は、本当に何でも屋みたい。
「そうなのですか」
「うむ。だから、一般の人間は立ち入ることが出来ないようにしておる」
「一般の人間は……ですか。だから、裏路地で散策をしていた私に声をかけてきたという事ですか?」
「まぁ、それもあるがの。お前さんが、魔法使いという事もある」
「……」
「黙しても何も変わらんぞ? 最初に、お主に声をかけてきた悪漢を魔法で退けていたじゃろ?」
「つまり、最初から私のことを見ていたという事ですか?」
「裏路地に入ってくるような人間はロクな人間ではないし、それなりに表では活動できないモノが多いからの。そういう者との取引が主な儂にとって裏路地に入ってくる人間を見て選別し顧客にするかは大事な商売だからの」
「なるほど……」
私は、心の内で溜息をつきながら意識を切り替える。
どうやら、目の前の老人は見た目どおりの人間ではなく、かなり厄介な相手。
何故なら相手を試して自身のテリトリーに連れてくるどころか、顧客にしようという大胆不敵な行動を取るという事までしてきたから。
正直、厄介な相手に目をつけられたという思いはあるけれど……。
「ずいぶんと淡泊な反応じゃな」
目の前の老人――、デメトルさんは何か他にリアクションが欲しかったのか残念そうな素振りを見せるけれど……。
「十分、驚いています。それよりも、デメトルさん」
「なんじゃな?」
「私が魔法使いということを認識した上で店まで連れて来たという事ですが、私が店を吹き飛ばすとは考えなかったのですか?」
「そんなことをするくらいなら、最初から冒険者でもしていた方が稼げるじゃろう? それをしなかったという事は表立って功績が残るような事はしたくないというところかの?」
「……」
私が冒険者だという事は一切、話していないはず。
それなのに、こちらの素性が分かっている? つまり、それはどういうこと?
「ずいぶんと優秀な情報網を持っているのですね」
「仕事上、必要なことじゃからの」
「そうですか。それなら、私が登録をかけた名前なども知っていると。たしかに、商人の方の中に知り合いがいれば分かりますよね」
「残念じゃが、その程度の引っ掛けでは口が滑るような事はないのう」
「分かっています」
情報源が何処から漏れているのか分からない。
それに海千山千とも思われる老人に対して口を割らせる術と言ったら力で何とかするしかないけれど、相手の情報が不足している段階では此方も下手に動いて情報を与える訳にはいかない。
「――さて、カンダと言ったかな? 何を買い取りして欲しくて店を探していたのか聞きたいのだが?」
「いえ、とくには――」
とりあえず、ここは余計な情報を提供する必要はないと思う。
それこそ、王妃見習いとして与えられていた私室の調度品など売ったら身元が一発でバレそうだし……。
「ほう……」
私の回答が以外だったのか、老人は私に向けて笑みを向けてきた。
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