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第44話 何でも屋(2)
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「……」
思わず私は無言になる。
試されていたのは、察する事は出来たけど、何と言うか一方的に此方を試験させられていたような事は正直言って、心地いいモノではないから。
それと共に、どうして街の裏路地などで私に話しかけてきたのか? という素朴な疑問が浮かび上がってくる。
ただ、ここで知りたいという欲求から話しかけても下に見られそうで正直、そういうのは私の好みではない。
「カッカッカッ。聞きたいときは素直に聞いておいた方がよいぞ?」
「とくには――」
「そうか」
デメトルさんは、短く呟くとランタンを手に持ったまま近くの階段を上がっていく。
ギシギシと鳴る階段を彼は数歩上がったかと思うと、視線だけ私へと向けてきた。
どうやら付いてこいという合図のご模様。
一応、軽く身体強化を行い、デメトルさんの後を付いていく。
階段は、やはり木で作られていて年期がかなり入っているのか、僅かに沈む。
板が割れると言った様子ではないけれど、微妙に不安感を煽る感じで心許ない。
暗闇に閉ざされた空間をデメトルさんが手に持つランタンの灯りだけが照らしている。
目の前に存在する階段を、デメトルさんの後ろをトレースするかのように追いかけ、数十段上がったところで、周囲が明るくなってきた事に気がつく。
「よし、到着じゃ」
階段を上り切ったところは、朽ちかけた木の板で作られた通路で、立派という言葉からは程遠いもの。
それでも、私が乗った板は砕けることも抜けることもなかった。
小学校の通路の同程度の広さの通路を歩く。
幸い、所々、外が見えないように打ち付けられた窓から明かりが入ってくるので歩行に支障はない。
通路を真っ直ぐに歩き、また階段を上がる。
今度は、1回分程度、20段ほどの木製の階段を上がったところでフロアにつく。
「こっちじゃ」
あとを追うと、デメトルさんはフロアと言っても学校の教室程度の広さの部屋の一角――、扉の前に立つとドアノブに鍵を差し込み回した。
するとキイッという音と共にドアノブが開く。
デメトルさんが部屋に入ったあと、私も部屋に入ると、そこは幾つもの棚が並び、棚にはネックレスや宝飾品が並んでいた。
「ようこそ。何でも屋へ」
「ここが何でも屋ですか?」
「うむ。その道では知らぬモノがいない程の店じゃ。まぁ、この店の正確な位置を知っている者は少ないがな」
そう説明してくると、デメトルさんは、髭を揺らしながら笑みを浮かべた。
思わず私は無言になる。
試されていたのは、察する事は出来たけど、何と言うか一方的に此方を試験させられていたような事は正直言って、心地いいモノではないから。
それと共に、どうして街の裏路地などで私に話しかけてきたのか? という素朴な疑問が浮かび上がってくる。
ただ、ここで知りたいという欲求から話しかけても下に見られそうで正直、そういうのは私の好みではない。
「カッカッカッ。聞きたいときは素直に聞いておいた方がよいぞ?」
「とくには――」
「そうか」
デメトルさんは、短く呟くとランタンを手に持ったまま近くの階段を上がっていく。
ギシギシと鳴る階段を彼は数歩上がったかと思うと、視線だけ私へと向けてきた。
どうやら付いてこいという合図のご模様。
一応、軽く身体強化を行い、デメトルさんの後を付いていく。
階段は、やはり木で作られていて年期がかなり入っているのか、僅かに沈む。
板が割れると言った様子ではないけれど、微妙に不安感を煽る感じで心許ない。
暗闇に閉ざされた空間をデメトルさんが手に持つランタンの灯りだけが照らしている。
目の前に存在する階段を、デメトルさんの後ろをトレースするかのように追いかけ、数十段上がったところで、周囲が明るくなってきた事に気がつく。
「よし、到着じゃ」
階段を上り切ったところは、朽ちかけた木の板で作られた通路で、立派という言葉からは程遠いもの。
それでも、私が乗った板は砕けることも抜けることもなかった。
小学校の通路の同程度の広さの通路を歩く。
幸い、所々、外が見えないように打ち付けられた窓から明かりが入ってくるので歩行に支障はない。
通路を真っ直ぐに歩き、また階段を上がる。
今度は、1回分程度、20段ほどの木製の階段を上がったところでフロアにつく。
「こっちじゃ」
あとを追うと、デメトルさんはフロアと言っても学校の教室程度の広さの部屋の一角――、扉の前に立つとドアノブに鍵を差し込み回した。
するとキイッという音と共にドアノブが開く。
デメトルさんが部屋に入ったあと、私も部屋に入ると、そこは幾つもの棚が並び、棚にはネックレスや宝飾品が並んでいた。
「ようこそ。何でも屋へ」
「ここが何でも屋ですか?」
「うむ。その道では知らぬモノがいない程の店じゃ。まぁ、この店の正確な位置を知っている者は少ないがな」
そう説明してくると、デメトルさんは、髭を揺らしながら笑みを浮かべた。
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