婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫

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第41話 御店を始めましょう。(3)

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 ――バシャッ! と、言う水に何かが落ちた音が背後から聞こえてくる。
 それに私は、少しだけ思う所がありながら路地を歩く。
 実は、落とし穴の底には、落下した際の衝撃緩衝用として水を召喚しておいた。
 深さは1メートルちょいだけど、「このクソアマが! 覚えてやがれー!」と、言う暴言が聞こえてきた事から、どうやら怪我などはないみたい。

 しばらく裏路地を歩き、セルトラ王国から拝借してきた室内の調度品を売りさばく店を探す。
 とにかく足がつくと余計な問題事に巻き込まれる可能性がある。

「なかなか見つからないわね」

 王都スルトーンの裏路地を歩くこと体感的に2時間程度。
 世紀末風の若者や、怪しげなフードを被った人材や、如何にも仕事の出来ない冒険者と言った感じの人を落し穴へ案内しつつ散策を続けたけど、怪しそうな買い取り専門店の業者などは見当たらない。

「ヒッヒッヒッ」

 粗方、王都の裏路地を歩き立ち止まって思考していた所で、目の前にこれ見よがしに姿を見せた銀色の曲がりくねった杖を持つフードの年寄が話しかけてきた。
 明らかに怪しい。
 もう顔が骸骨のようで、栄養バランスが悪いのかやせ細っている。

「何か、要ですか?」

 とりあえず、相手から手を出してくると言った様子は見受けられないし、裏路地の住民に買取店を聞こうと思っていた事もあり丁度いいので、話しかける事にする。

「お困りごとかね? ヒヒヒッ」
「……とくには」

 よく知らないけど、あまり関わってはいけない人種だと言うのが生理的に分かってしまった。
 上手く説明するとしたら国民的放送局の集金みたいな感じ。

「それでは失礼します」

 相手から手を出してこないならスルー。
 余計な問題を起こすのは私は好きではないし。

「まぁまぁ待つんじゃよっ。ひっひっひっ」

 回れ右して、もと来た道を戻ろうとしたら回り込みされてしまい逃げられなくなってしまった。
 魔王からは逃げられない……。
 そんな言葉が脳裏に横切るけど、いまは、それはどうでもいいと横へと置く。

「私、急いでいますので――」
「そうかい。いまなら、何でも屋に紹介してやってもいいと思ったんじゃがね」

 ――何でも屋?
 聞き慣れない単語に、私は内心で首を傾げながら老人の方へと視線を向けた。
 老人は満足そうに頷くと口を開く。

「儂が教えられるのは何でも屋までの道順くらいじゃ。裏路地に、こんな別嬪さんが来てウロウロしているという事はロクなお願いじゃないんじゃろう?」
「……」
「よいよい。――儂は、ただ紹介料が欲しいのじゃ。ひっひっひっ」
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