婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫

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第37話 日本人とエルフの王国

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「そうよ。それはエルフの国の特殊な技術で作られたものなの。他の国には輸出はしていないはずなのに……」
「私が住んでいた村では、普通にありました」
「そうなの?」

 メルサさんは、眉間に皺を寄せながら何かを考えているような素振りを見せる。

「はい。村では良くあったものですので、それと――、アネットさんやユーリエさんから、私の村は少し変だと言われましたので……、それでかもしれないです」
「そう……。ちなみに、貴女が住んでいたのは、どこなの?」
「地理には、疎いので……」
「そう……」

 深く、メルサさんが聞いてくるようなことはない。
 この異世界では、地形を含む地図はとても貴重品というよりも軍事機密という側面が強い事から、そこまで地図が市民階層まで普及していない。
 そのために、街道を通ることが主流となっていると教えられた。

「それにしても、エミさんの村にも耐熱グラスがあるなんてビックリね」
「そうですか?」
「ええ。耐熱グラスは、過去に異世界から来た日本人という種族が伝えたモノとされているのよ?」
「――え? 日本人ですか?」
「そうよ。もしかして、エミさんの村にも日本人がいたのかしら?」
「そういう話は聞いたことがないです」

 メルサさんと話ながらも、私よりも前に日本人が異世界に来ていたことに少しだけ心の中で動揺してしまう。
 そんなこと、異世界に転生させた女神は一言も言っていなかったから。

「あの……」
「どうかしたの?」
「過去に来た日本人って、何時頃の話なのですか?」
「そうね。200年前くらいって聞いているけど……、私は、その頃は生まれていなかったから……」
「そうですか」

 もしかしたらというか間違いなく、この宿の基礎というか文化を伝えたのは日本人で間違いないと思う。
 少しどころか、かなりエルフの王国には興味が湧いたけど……、また国間を移動するのは正直大変なので、移動は諦めることにした。

「――でも、お母さんなら何か知っているかも?」
「え? 200年前の話ですよね?」
「ええ。そうね。でもエルフは人種と違って長生きだから……」
「そうなのですか。ちなみにメルサさんは……」
「まだ177歳よ?」
「……そうなのですか」

 見た目、20代で通じるメルサさんが177歳……。
 ちょっとというか、かなりビックリなのですけど。

 とりあえず、今は2週間近く移動してきたばかりですし、少し腰を落ち着かせる場所の確保を最優先にして、エルフの王国に関しては、また考えるとしましょう。
 もしかしたら、色々と、この世界では手に入らない貴重なモノがあるかも知れませんし。
 

 
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