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第32話 モンスターの襲撃(4)

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「エミ!」

 強力な範囲魔法が使えない事が判明したと同時に、私の名前を叫ぶように呼んでくるアネットさん。
 視線を向けると、オーガーからの攻撃を必死に避けているアネットさんの姿が。
 そんなアネットさんを援護するかのようにユーリエさんが鉄球を投げているのが見えるけど……、パン屋のドアが半壊していて、次の槌の一撃で壊れるのが分かる。

「間に合わないっ! 何とかならないか!?」
「何とかって――」

 範囲魔法で瞬時に倒す事は難しいけど!

「防御魔法!」

 地面に手をつけると同時に、頭の中で発動する魔法をシミュレートし発動。
 パン屋のドアの前――、地面から石の壁が迫り出し、木製のドアを覆い尽くすと共に、――ズガッ! と、言う音と共に石の壁はオーガーの巨大な槌を受け止めた。

「グガッ!?」

 オーガーが周りを見て私の方へと走って向かってくる。
 身長が私の倍以上あるオーガー。
 その迫力は尋常ではないものだけど――。
 近づいてくれば、何とかなる!
 懐に入りつつ、アイテムボックスから金貨を取り出し、電磁場を周囲に展開させながら親指で放つ。
 私が打ち出したレールガンは、光りを放ち、オーガーの強靭とも言える上半身を粉々に消し飛ばす。

「近づけば何となる強度ね」

 私の得体の知れない攻撃に浮足立ったオーガー達は、次々と戦列を乱していきアネットさんとユーリエさんの攻撃で倒されていく。

 そんな様子を見ていると、「エミはん! 後ろ!」と、注意するような鋭い声が。

「え?」
「ウガアアアアア」

 振り向くと目の前には巨大な影が。
 とっさに両手で顔だけをガードしたけど、空中を舞うかのように私の体は一瞬――、滞空しかかと思うと地面の上に背中から叩きつけられた。

「エミはん!」

 薄れゆく意識の中で、私の傍を誰かが通り抜けた。
 それと同時に、何か鈍い振動が体を伝わって感じることができた。

「アネットはんっ! エミはんの状態はどんな感じなん?」
「両腕が、酷いことになってる」

 そんな声が、どこか遠くから聞こえてくる。
 ゆっくりと意識が鮮明となってきたところで、視界は揺らいではいるけれどどのような状況か確認できた。

「ユーリエさん、一体何を……」

体長が6メートル以上もある魔物のオーガーキングと、力比べしているユーリエさん。
明らかに4倍近くある化け物と力比べしている。

「エミはん、はやく回復を」
「そ、そうね」

 驚いている場合じゃない。
 私は急いでヒールの魔法で両腕を治癒してから、上空へ向けてレールガンを放つ。
 電磁場で加速された金貨がオーガーキングの上半身に大穴を空けて倒した。
 
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