婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫

文字の大きさ
上 下
32 / 105

第32話 モンスターの襲撃(4)

しおりを挟む
「エミ!」

 強力な範囲魔法が使えない事が判明したと同時に、私の名前を叫ぶように呼んでくるアネットさん。
 視線を向けると、オーガーからの攻撃を必死に避けているアネットさんの姿が。
 そんなアネットさんを援護するかのようにユーリエさんが鉄球を投げているのが見えるけど……、パン屋のドアが半壊していて、次の槌の一撃で壊れるのが分かる。

「間に合わないっ! 何とかならないか!?」
「何とかって――」

 範囲魔法で瞬時に倒す事は難しいけど!

「防御魔法!」

 地面に手をつけると同時に、頭の中で発動する魔法をシミュレートし発動。
 パン屋のドアの前――、地面から石の壁が迫り出し、木製のドアを覆い尽くすと共に、――ズガッ! と、言う音と共に石の壁はオーガーの巨大な槌を受け止めた。

「グガッ!?」

 オーガーが周りを見て私の方へと走って向かってくる。
 身長が私の倍以上あるオーガー。
 その迫力は尋常ではないものだけど――。
 近づいてくれば、何とかなる!
 懐に入りつつ、アイテムボックスから金貨を取り出し、電磁場を周囲に展開させながら親指で放つ。
 私が打ち出したレールガンは、光りを放ち、オーガーの強靭とも言える上半身を粉々に消し飛ばす。

「近づけば何となる強度ね」

 私の得体の知れない攻撃に浮足立ったオーガー達は、次々と戦列を乱していきアネットさんとユーリエさんの攻撃で倒されていく。

 そんな様子を見ていると、「エミはん! 後ろ!」と、注意するような鋭い声が。

「え?」
「ウガアアアアア」

 振り向くと目の前には巨大な影が。
 とっさに両手で顔だけをガードしたけど、空中を舞うかのように私の体は一瞬――、滞空しかかと思うと地面の上に背中から叩きつけられた。

「エミはん!」

 薄れゆく意識の中で、私の傍を誰かが通り抜けた。
 それと同時に、何か鈍い振動が体を伝わって感じることができた。

「アネットはんっ! エミはんの状態はどんな感じなん?」
「両腕が、酷いことになってる」

 そんな声が、どこか遠くから聞こえてくる。
 ゆっくりと意識が鮮明となってきたところで、視界は揺らいではいるけれどどのような状況か確認できた。

「ユーリエさん、一体何を……」

体長が6メートル以上もある魔物のオーガーキングと、力比べしているユーリエさん。
明らかに4倍近くある化け物と力比べしている。

「エミはん、はやく回復を」
「そ、そうね」

 驚いている場合じゃない。
 私は急いでヒールの魔法で両腕を治癒してから、上空へ向けてレールガンを放つ。
 電磁場で加速された金貨がオーガーキングの上半身に大穴を空けて倒した。
 
しおりを挟む
投稿内容がバグっていた為、再度、修正しました。
感想 2

あなたにおすすめの小説

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」

まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。 【本日付けで神を辞めることにした】 フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。 国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。 人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 アルファポリスに先行投稿しています。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている

五色ひわ
恋愛
 ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。  初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

スキルがないと追い出されましたが、それには理由がありますし、今は幸せです。

satomi
恋愛
スキルがないからと婚約破棄をされたうえに家から追い出されたギジマクス伯爵家の長女リンドラ。 スキルに関して今は亡きお母様との約束で公開していないが、持っている。“降水量調節”。お母様曰く「自然の摂理に逆らうものだから安易に使ってはダメ。スキルがあることを秘密にしなさい。この人なら大丈夫!って人が現れるまでは公開してはダメよ」ということで、家族には言っていません。 そんなリンドウが追い出されたあと、路上で倒れていた所、公爵様に拾われましたが……

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

処理中です...