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第24話 純粋なエルフ
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なし崩し的な感じで宿の中へと押されていく私。
宿に入り、まず目に入ってきたのは右手側に2階へと通じる階段。
そして――、左手側にはロビー。
カウンターなどが見当たらない事から、少なくとも宿と言った雰囲気ではない。
「メルサさん! いひん? ユーリエやで! メルサさん!」
何度か、ユーリエさんが声をあげる。
すると2階からパタパタと人が走る音が聞こえてくる。
そして、その音は少しずつ大きくなり、階段から女性が降りてくる。
肩口で金色の髪を揃えたボブカットの女性。
目鼻立ちは整っていて、ユーリエさんよりも耳が長い。
「ユーリエ、戻ってきたの?」
階段を降りると共に、ユーリエさんに話しかける女性。
身長は、160センチに満たない私と同じくらい。
ちなみにスタイルは私よりもいい。
「クエストが終わったら、丁度、この町やってんけど……、始めて村から出てきたらしくて宿を見つけるのは大変やと思うたから、ここを紹介する為に来たの」
「そうなのね……」
そう頷くメルサと呼ばれた女性は頷きながら、そっと私の方を見てくる。
さっきからチラチラと私の方を見てきていたけど、何か私にあるの? と、思ってしまう。
「それにしても、すごい魔力ね。そっちの子」
「――え?」
「純粋なエルフは魔力そのものを見る事ができんねん」
「そうなの?」
「ええ。貴女は、お名前は?」
「エミと言います」
「エミさんね。貴女が家に泊まる子なの?」
「せやね」
私ではなくユーリエさんが答える。
そこは私が答える場面だからねという突っ込みをしようとしたけど、とりあえず「はい。よろしくお願いします」と、返答する。
「そう。分かったわ」
「――私も泊まりたいんだが?」
「貴女は?」
「アネットという」
「アネットさんね。ユーリエも泊まっていくのよね?」
「もちろんや」
「料金は一泊で朝夕食事つきで銀貨1枚だけど、ユーリエの紹介だという事で銅貨8枚でいいわ」
銅貨8枚ということは、日本円で8000円と言ったところ。
その価格が安いかどうかは分からないけど、建物の中を見る限り清潔そうだし、何より同じ女性が経営しているという事で安心感はある。
「はい。よろしくお願いします」
――即答する。
「それじゃ部屋に案内するから付いてきてね」
階段を上がっていくメルサさんに付いていく私達。
二人は2階の部屋で、私は3階に案内される。
「えっと、貴女の部屋はここね。お湯が必要な時は銅貨1枚になるから言ってね」
「お湯に関しては自分で作れますので大丈夫です」
「そう。それだけの魔力があるものね」
「あの――、メルサさんもハーフエルフなのですか?」
案内された部屋の前。
そこで、私は気になっていたことを聞く。
メルサさんが、私の魔力を見る事が出来たのなら、ユーリエさんも私の魔力が見えていたという事になるから。
「違うわ。私は純粋なエルフだから。大気中のマナを見ることができるの。それは純粋なエルフにしか出来ないことなの。あの子は、私の友人のシャルルの忘れ形見だから」
「シャルルって……女性の名前ですよね?」
「ええ。そうね。あの子の母親は、私の友人だから。それじゃ何かあったら1階に来てね。1階に私は住んでいるから」
メルサさんは鍵を私に手渡すと階段を降りていった。
宿に入り、まず目に入ってきたのは右手側に2階へと通じる階段。
そして――、左手側にはロビー。
カウンターなどが見当たらない事から、少なくとも宿と言った雰囲気ではない。
「メルサさん! いひん? ユーリエやで! メルサさん!」
何度か、ユーリエさんが声をあげる。
すると2階からパタパタと人が走る音が聞こえてくる。
そして、その音は少しずつ大きくなり、階段から女性が降りてくる。
肩口で金色の髪を揃えたボブカットの女性。
目鼻立ちは整っていて、ユーリエさんよりも耳が長い。
「ユーリエ、戻ってきたの?」
階段を降りると共に、ユーリエさんに話しかける女性。
身長は、160センチに満たない私と同じくらい。
ちなみにスタイルは私よりもいい。
「クエストが終わったら、丁度、この町やってんけど……、始めて村から出てきたらしくて宿を見つけるのは大変やと思うたから、ここを紹介する為に来たの」
「そうなのね……」
そう頷くメルサと呼ばれた女性は頷きながら、そっと私の方を見てくる。
さっきからチラチラと私の方を見てきていたけど、何か私にあるの? と、思ってしまう。
「それにしても、すごい魔力ね。そっちの子」
「――え?」
「純粋なエルフは魔力そのものを見る事ができんねん」
「そうなの?」
「ええ。貴女は、お名前は?」
「エミと言います」
「エミさんね。貴女が家に泊まる子なの?」
「せやね」
私ではなくユーリエさんが答える。
そこは私が答える場面だからねという突っ込みをしようとしたけど、とりあえず「はい。よろしくお願いします」と、返答する。
「そう。分かったわ」
「――私も泊まりたいんだが?」
「貴女は?」
「アネットという」
「アネットさんね。ユーリエも泊まっていくのよね?」
「もちろんや」
「料金は一泊で朝夕食事つきで銀貨1枚だけど、ユーリエの紹介だという事で銅貨8枚でいいわ」
銅貨8枚ということは、日本円で8000円と言ったところ。
その価格が安いかどうかは分からないけど、建物の中を見る限り清潔そうだし、何より同じ女性が経営しているという事で安心感はある。
「はい。よろしくお願いします」
――即答する。
「それじゃ部屋に案内するから付いてきてね」
階段を上がっていくメルサさんに付いていく私達。
二人は2階の部屋で、私は3階に案内される。
「えっと、貴女の部屋はここね。お湯が必要な時は銅貨1枚になるから言ってね」
「お湯に関しては自分で作れますので大丈夫です」
「そう。それだけの魔力があるものね」
「あの――、メルサさんもハーフエルフなのですか?」
案内された部屋の前。
そこで、私は気になっていたことを聞く。
メルサさんが、私の魔力を見る事が出来たのなら、ユーリエさんも私の魔力が見えていたという事になるから。
「違うわ。私は純粋なエルフだから。大気中のマナを見ることができるの。それは純粋なエルフにしか出来ないことなの。あの子は、私の友人のシャルルの忘れ形見だから」
「シャルルって……女性の名前ですよね?」
「ええ。そうね。あの子の母親は、私の友人だから。それじゃ何かあったら1階に来てね。1階に私は住んでいるから」
メルサさんは鍵を私に手渡すと階段を降りていった。
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