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第73話 想いと思い(5)
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「ここは……」
私の声が反響する。
周りを見渡すが私の視界には、真っ白な何もない空間だけが果てしなく広がっている。
「体の感覚はある。だが――」
そう、呟く。
状況を確認するために何度か足元を踏みしめる。
「何かを踏みしめているという感覚はない……か。つまり、ここがクララの精神世界だと言うのか? こんな何もない世界が?」
私は周囲を見渡すが、やはり何もない。
「パトリックの話だと、クララの精神世界で、まずは建造物を見つけるように言われたが……」
そんなモノがない。
「どこに向かえば……」
向かう先が見つからない。
これは、完全にパトリックの予想が外れている。
やはり、永遠の眠りについての調査が進んでいないというところか。
だが、時間がない。
魔法師団長パトリックや、スペンサー教皇が時間を稼いでいる間に何とかしなければ。
「まずは行動が全てだな。クララは、私が救わなければ――」
そう呟いた途端、目の前に唐突に街並みが――、噴水広場が広がっていく。
「ここは王都の中央広場か? それにしても、どうして唐突に風景が切り替わったんだ? どっちでもいい。まずは、クララを探さないと。ここが王都だと、するとクララが居るのは――」
私は、王城の方へと視線を向ける。
王都の中央広場の噴水に出たということは、王城までは、そんなに距離はないはず。
そして、クララが居る場所は王城以外には考えられない。
噴水広場から王城に向かう。
その際に、大通りを走る馬車が追い抜いていく。
「あれは……」
馬車に彫られていた家紋は、イグニス王家のモノ。
そして――、その馬車に乗っているのは……。
「クララ!」
一瞬だけしか見えなかったが、確実に彼女だった。
馬車は、音を立てずに王城へと向かって走り去ってしまう。
「くそっ!」
慌てて馬車を追う。
その度に、気が付く。
馬車の範囲内にだけ人が出現し、そして――、馬車が走り去ったあとは消える現象に。
「都合のいい……望む世界……」
パトリックが語った言葉。
それを思い出し、私は馬車のあとを追う。
そして、王城の城門前に辿り着く。
「衛兵がいない……。そうか、クララは兵士がどのように配置されているのかを知らないはず。つまり、護衛は――、限られた者だけということか」
まったく――、王城で暮らしていた経験が生きるとはな。
周りを見渡しながら王城内を駆ける。
「さて――。どうして、この場に貴方がいるのですか? ラインハルト王太子殿下様」
クララの部屋の前に辿り着いたところで、メイド姿をした侍女であるエイナが頭を下げ話しかけてきた。
「エイナ……なのか?」
私の声が反響する。
周りを見渡すが私の視界には、真っ白な何もない空間だけが果てしなく広がっている。
「体の感覚はある。だが――」
そう、呟く。
状況を確認するために何度か足元を踏みしめる。
「何かを踏みしめているという感覚はない……か。つまり、ここがクララの精神世界だと言うのか? こんな何もない世界が?」
私は周囲を見渡すが、やはり何もない。
「パトリックの話だと、クララの精神世界で、まずは建造物を見つけるように言われたが……」
そんなモノがない。
「どこに向かえば……」
向かう先が見つからない。
これは、完全にパトリックの予想が外れている。
やはり、永遠の眠りについての調査が進んでいないというところか。
だが、時間がない。
魔法師団長パトリックや、スペンサー教皇が時間を稼いでいる間に何とかしなければ。
「まずは行動が全てだな。クララは、私が救わなければ――」
そう呟いた途端、目の前に唐突に街並みが――、噴水広場が広がっていく。
「ここは王都の中央広場か? それにしても、どうして唐突に風景が切り替わったんだ? どっちでもいい。まずは、クララを探さないと。ここが王都だと、するとクララが居るのは――」
私は、王城の方へと視線を向ける。
王都の中央広場の噴水に出たということは、王城までは、そんなに距離はないはず。
そして、クララが居る場所は王城以外には考えられない。
噴水広場から王城に向かう。
その際に、大通りを走る馬車が追い抜いていく。
「あれは……」
馬車に彫られていた家紋は、イグニス王家のモノ。
そして――、その馬車に乗っているのは……。
「クララ!」
一瞬だけしか見えなかったが、確実に彼女だった。
馬車は、音を立てずに王城へと向かって走り去ってしまう。
「くそっ!」
慌てて馬車を追う。
その度に、気が付く。
馬車の範囲内にだけ人が出現し、そして――、馬車が走り去ったあとは消える現象に。
「都合のいい……望む世界……」
パトリックが語った言葉。
それを思い出し、私は馬車のあとを追う。
そして、王城の城門前に辿り着く。
「衛兵がいない……。そうか、クララは兵士がどのように配置されているのかを知らないはず。つまり、護衛は――、限られた者だけということか」
まったく――、王城で暮らしていた経験が生きるとはな。
周りを見渡しながら王城内を駆ける。
「さて――。どうして、この場に貴方がいるのですか? ラインハルト王太子殿下様」
クララの部屋の前に辿り着いたところで、メイド姿をした侍女であるエイナが頭を下げ話しかけてきた。
「エイナ……なのか?」
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