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第69話 想いと思い(1)
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静寂の中、私は一人、微睡の中に居た。
「ここは……」
私は、瞼を開けて周囲を見渡す。
どうやら、私は何時の間にか寝ていたみたい。
――コンコン。
扉をノックする音に、私は声をかける。
すると室内に入ってきたのは侍女たち。
彼女たちは、慣れた手つきでスキンケアをし、腰まで伸ばしている髪を丁寧に結え、ドレスに着替えさせてさせてくる。
メイクをして、王城内でも問題ない身嗜みにと整ったあとは――、
「クララ様。本日、午前中は周辺諸国の政治情勢の勉学になります。午後は、商業ギルドと冒険者ギルドのギルド長との顔合わせ、近衛騎士団の激励と言う事になっています」
「そう」
私は、侍女の話を聞きながら小さく呟く。
次の妃候補として、私が学ぶことは多く、自由になる時間はほとんどない。
唯一、あるとすれば、それは睡眠の時間くらい。
「そういえば、今日は――」
そこまで口にしたところで、私は首を傾げる。
誰かと会う約束をしていたはずなのに、その誰かを忘れてしまっていたから。
「――様ですね。本日は、隣国の宰相との会談に国王陛下と共に出席されるとのことです」
「そうなのね」
目の前の侍女が、私に説明してくる。
ただ、名前の部分が変な音が聞こえて聞き取れない。
「ねえ。もう一度、言ってくれるかしら?」
「クララ様。もう一度とか?」
「陛下と同行される方のお名前」
「魔法師団団長のパトリック様です」
「そう……」
その名前は、お兄様の名前。
殆どあったことがないけど、時々、公務で魔法師団を激励に行った時に、職務の一貫として話したことがあるくらい。
その魔法師団団長が陛下と一緒に行動するのは護衛という意味を含めて理解は出来た。
ただ、そこでふと疑問に思ったことがあった。
そして――、首を傾げながら思考した事に、気が付いた侍女が話しかけてくる。
「クララ様。どうかなさいましたか?」
「――いえ。それより、私って……」
「クララ様?」
「ううん。何でもないの」
何を聞こうとしていたのか、私はすっかり忘れてしまっていた。
その忘れた内容も思い出せない。
――でも、忘れるくらいのことだからきっと何の問題もないと思う。
「今日は、茶葉が違うのね」
「はい。皇女殿下からの贈り物ですので」
「そう。マリー様からの……」
マリーゴールド・ド・レゴリス。
レゴリス帝国の皇女殿下。
王太子殿下と婚姻が決まった時から、しばらく経って5歳の時に王城に上がってから、時々、私的に交流のある方。
「マリー様は、お元気かしら?」
「先日、茶葉と一緒にお手紙が届けられたと思われますが……。その際に、クララ様は大変に喜んでおられたのを、私は記憶しております」
「そうだったかしら?」
「はい」
マルク公爵家から派遣されている侍女エイナは、そう教えてくれる。
「そういえば、そうだったわね」
彼女の言葉どおり、漠然とだけどマリー様からの手紙を読んだことを思い出してきた。
どうして、忘れていたのか自分でも不思議に思うくらい。
「クララ様。こちらが王都では、有名な菓子職人が作った菓子になります」
色とりどりのお菓子が並べられているテーブル。
先ほどまで、そんなモノは無かったはずなのに……。
「クララ様?」
「ううん。何でもないの。とても美味しそうね」
私は、一つ手に取り、菓子を口にする。
「甘くておいしい」
「ゆっくりと味わってください」
「そうね」
一口、口にするたびに胸の奥で何か思っていた変な気持ちが、薄らいでいくのが分かった。
「ここは……」
私は、瞼を開けて周囲を見渡す。
どうやら、私は何時の間にか寝ていたみたい。
――コンコン。
扉をノックする音に、私は声をかける。
すると室内に入ってきたのは侍女たち。
彼女たちは、慣れた手つきでスキンケアをし、腰まで伸ばしている髪を丁寧に結え、ドレスに着替えさせてさせてくる。
メイクをして、王城内でも問題ない身嗜みにと整ったあとは――、
「クララ様。本日、午前中は周辺諸国の政治情勢の勉学になります。午後は、商業ギルドと冒険者ギルドのギルド長との顔合わせ、近衛騎士団の激励と言う事になっています」
「そう」
私は、侍女の話を聞きながら小さく呟く。
次の妃候補として、私が学ぶことは多く、自由になる時間はほとんどない。
唯一、あるとすれば、それは睡眠の時間くらい。
「そういえば、今日は――」
そこまで口にしたところで、私は首を傾げる。
誰かと会う約束をしていたはずなのに、その誰かを忘れてしまっていたから。
「――様ですね。本日は、隣国の宰相との会談に国王陛下と共に出席されるとのことです」
「そうなのね」
目の前の侍女が、私に説明してくる。
ただ、名前の部分が変な音が聞こえて聞き取れない。
「ねえ。もう一度、言ってくれるかしら?」
「クララ様。もう一度とか?」
「陛下と同行される方のお名前」
「魔法師団団長のパトリック様です」
「そう……」
その名前は、お兄様の名前。
殆どあったことがないけど、時々、公務で魔法師団を激励に行った時に、職務の一貫として話したことがあるくらい。
その魔法師団団長が陛下と一緒に行動するのは護衛という意味を含めて理解は出来た。
ただ、そこでふと疑問に思ったことがあった。
そして――、首を傾げながら思考した事に、気が付いた侍女が話しかけてくる。
「クララ様。どうかなさいましたか?」
「――いえ。それより、私って……」
「クララ様?」
「ううん。何でもないの」
何を聞こうとしていたのか、私はすっかり忘れてしまっていた。
その忘れた内容も思い出せない。
――でも、忘れるくらいのことだからきっと何の問題もないと思う。
「今日は、茶葉が違うのね」
「はい。皇女殿下からの贈り物ですので」
「そう。マリー様からの……」
マリーゴールド・ド・レゴリス。
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王太子殿下と婚姻が決まった時から、しばらく経って5歳の時に王城に上がってから、時々、私的に交流のある方。
「マリー様は、お元気かしら?」
「先日、茶葉と一緒にお手紙が届けられたと思われますが……。その際に、クララ様は大変に喜んでおられたのを、私は記憶しております」
「そうだったかしら?」
「はい」
マルク公爵家から派遣されている侍女エイナは、そう教えてくれる。
「そういえば、そうだったわね」
彼女の言葉どおり、漠然とだけどマリー様からの手紙を読んだことを思い出してきた。
どうして、忘れていたのか自分でも不思議に思うくらい。
「クララ様。こちらが王都では、有名な菓子職人が作った菓子になります」
色とりどりのお菓子が並べられているテーブル。
先ほどまで、そんなモノは無かったはずなのに……。
「クララ様?」
「ううん。何でもないの。とても美味しそうね」
私は、一つ手に取り、菓子を口にする。
「甘くておいしい」
「ゆっくりと味わってください」
「そうね」
一口、口にするたびに胸の奥で何か思っていた変な気持ちが、薄らいでいくのが分かった。
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