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第68話 乾坤一擲(4)
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イグニス王国の王城――、謁見の間。
そこには多くの高位貴族や文官、武官が集まっていた。
誰もが表情を強張らせ、王座に座る国王クラウス・ド・イグニスへと視線を向けたあと、謁見の間へと入ってくる扉を交互に見ていた。
そして、しばらく間を置いたあと、扉が開き謁見の間に入ってきた男。
その男が姿を見せたことで、場の空気は張り詰めたように緊張感に包まれる。
「ラインハルト・ド・イグニス王太子殿下。陛下の前へ」
「はい」
威風堂々とした様子で、国王の前まで馳せ参じたところで膝をつき頭を垂れるラインハルト。
それを、王座から見下ろしていたイグニスは口を開く。
「ラインハルト・ド・イグニス」
「はっ」
「この度、イグニス王国を精霊神教の教皇と、エイゼル王国の間者であったユリエールの謀略から救った其方の働きと功績は、素晴らしいものである」
「はっ」
「――だが、其方が独断先行したことでマルク公爵家のクララ・フォン・マルクを含め、イグニス王国だけでなく王家にも多大な損害を与えた事も承知しておるな?」
「分かっております」
「うむ。では、沙汰を下す。ラインハルト・ド・イグニス! 本日をもって、そなたの王位継承権と王家の籍の剥奪を決定する」
「分かりました」
「うむ。それと同時に、第一王位継承権はゲールへと引き継がれる事とする。それでよいな?」
「はい」
「それと、其方のために振り回されたクララ・フォン・マルクとの婚姻だが――、一度は聖女として教会へ入った者を王家に嫁がせる訳にはいかん。よって責任をとるように」
「分かりました」
そのまま頭を垂れつつ、国王の言葉に承諾したラインハルト。
そんな息子であるラインハルトを見下ろしながら、クラウスは内心では深く溜息をついていた。
聖女たる力を持つ公爵家令嬢を王家が取り込むことは非常にメリットが大きいというのは誰の目から見ても明らかであり、実際、王国の家臣の中にはクララの血を王家が入れないという選択しは不満を漏らす者も多くいた。
ただ、それは協会で有力者たちに回復魔法をかけていた彼女の功績を新教皇へと上り詰めたスペンサーが上手く立ち回ったことでおさめることが出来ていた。
それでも、何かしら意見が出る可能性というのはあった。
だからこそ、謁見の間はピリピリとした雰囲気に包まれていた。
「うむ。それでは下がってよい」
「失礼致します」
立ち上がり謁見の間から去っていくラインハルト。
そんな彼が扉から出て行ったあと、扉が閉まり謁見の間は静まり返る。
全ては予定調和であり、決まっていた流れ。
それが滞りなく終わったあと、国王は王座から立ち上がり、その場を後にした。
そこには多くの高位貴族や文官、武官が集まっていた。
誰もが表情を強張らせ、王座に座る国王クラウス・ド・イグニスへと視線を向けたあと、謁見の間へと入ってくる扉を交互に見ていた。
そして、しばらく間を置いたあと、扉が開き謁見の間に入ってきた男。
その男が姿を見せたことで、場の空気は張り詰めたように緊張感に包まれる。
「ラインハルト・ド・イグニス王太子殿下。陛下の前へ」
「はい」
威風堂々とした様子で、国王の前まで馳せ参じたところで膝をつき頭を垂れるラインハルト。
それを、王座から見下ろしていたイグニスは口を開く。
「ラインハルト・ド・イグニス」
「はっ」
「この度、イグニス王国を精霊神教の教皇と、エイゼル王国の間者であったユリエールの謀略から救った其方の働きと功績は、素晴らしいものである」
「はっ」
「――だが、其方が独断先行したことでマルク公爵家のクララ・フォン・マルクを含め、イグニス王国だけでなく王家にも多大な損害を与えた事も承知しておるな?」
「分かっております」
「うむ。では、沙汰を下す。ラインハルト・ド・イグニス! 本日をもって、そなたの王位継承権と王家の籍の剥奪を決定する」
「分かりました」
「うむ。それと同時に、第一王位継承権はゲールへと引き継がれる事とする。それでよいな?」
「はい」
「それと、其方のために振り回されたクララ・フォン・マルクとの婚姻だが――、一度は聖女として教会へ入った者を王家に嫁がせる訳にはいかん。よって責任をとるように」
「分かりました」
そのまま頭を垂れつつ、国王の言葉に承諾したラインハルト。
そんな息子であるラインハルトを見下ろしながら、クラウスは内心では深く溜息をついていた。
聖女たる力を持つ公爵家令嬢を王家が取り込むことは非常にメリットが大きいというのは誰の目から見ても明らかであり、実際、王国の家臣の中にはクララの血を王家が入れないという選択しは不満を漏らす者も多くいた。
ただ、それは協会で有力者たちに回復魔法をかけていた彼女の功績を新教皇へと上り詰めたスペンサーが上手く立ち回ったことでおさめることが出来ていた。
それでも、何かしら意見が出る可能性というのはあった。
だからこそ、謁見の間はピリピリとした雰囲気に包まれていた。
「うむ。それでは下がってよい」
「失礼致します」
立ち上がり謁見の間から去っていくラインハルト。
そんな彼が扉から出て行ったあと、扉が閉まり謁見の間は静まり返る。
全ては予定調和であり、決まっていた流れ。
それが滞りなく終わったあと、国王は王座から立ち上がり、その場を後にした。
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