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第51話 壊れた記憶(11)第三者視点
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「まったく……余計な事を言ってくれたものだ」
マルク公爵家の当主であるオイゲン・フォン・マルク公爵は、深く溜息をつく。
理由は、目の前の――、執務室に入ってきた自身の息子であるパトリック・フォン・マルクが話した内容に起因した。
パトリック・フォン・マルクは、苛立つ感情を王太子にぶつけるようにして話、その中で妹の今後の事を考えて独自に提案をしてしまったのだ。
――国を捨てて妹と共に生きろと。
そして、そのことを自分の父親であるオイゲンに報告し、現在に至っている。
「申し訳ありません」
「お前が勝手に話した内容だが――、一応は今だに王太子という継承権を所持している方に、暴言を吐くなど王家に仕える臣下として失格だぞ」
「はい……」
「まぁ、言いたいことは分かる。さて――、どうしたものか」
オイゲンは、棚からウイスキーを取り出す。
そしてグラスを二つ用意すると、彼は息子であるパトリックの隣に座り、グラスにウイスキーを注いでいき、グラスの一つをパトリックに手渡した。
「本来ならば、教会とエイゼル王国が裏で繋がっている確固たる証拠が見つかるまでは王太子殿下を隠しておくつもりであったが……」
「はい」
教会内に存在するイグニス王国を転覆させようとしている一部の勢力。
それは王家が少し前から噂として掴んでいた内容であった。
ただ、その手口が巧妙だったこともあり未だに全容が掴めておらず王国でも動くことができないでいた。
「王太子殿下の一件以降、不審な人物が教会上層部と関わっていることが何度か目撃去れて――」
「それは分かっている。問題は、教会のどこまでが王国転覆に関わっているかだ。下手に探りを入れれば、信仰をしている信者が何をするか分からないからな」
「分かっています。それと王太子殿下の件で、エイナから情報が」
「エイナか。――で、情報とは?」
「はい。Sランク冒険者のエイナからの情報によりますと、やはりスペンサー枢機卿の様子がおかしいと」
「ふむ」
「しつこく妹のクララと、王太子殿下が何時会うのかを聞いてきたとのことです」
「なるほど……。理由は、分かっているのか?」
「どうやら王太子殿下を保護したいという名目のようです」
「そうか。だが保護だけが目的とは限らないか」
「はい。これは余談ですが、王太子殿下を旗印に内戦を起こし国ごと乗っ取る考えもあると思われます」
「そして隣国のエイゼル王国の属国に落すという可能性もあるな」
「はい。ですが、そのためには――」
「現、王政の腐敗を暴露する必要があるか」
「はい。民衆の支持を得る為、陛下が魔力を持たない王太子殿下を切り捨て、それを聖女が助けるという大衆にも分かりやすい美談が必要なのかも知れません」
「だろうな。それ以外には思いつかん。ユリエールの王太子殿下の篭絡が失敗した以上、何かしらの行動をするのは分かっているからな」
「――では、どうしますか?」
「そうだな……。まずは王太子殿下と娘を一度会わせてみるか」
「それは……」
「心配なのは分かっているが、レゴリス帝国のマリーゴールド姫が、こちらに向かってきているのだ。荒療治かも知れないが何とかするほかないだろう」
そう言いウイスキーに口をつけるオイゲンを、神妙な眼差しでパトリックは見つめていた。
マルク公爵家の当主であるオイゲン・フォン・マルク公爵は、深く溜息をつく。
理由は、目の前の――、執務室に入ってきた自身の息子であるパトリック・フォン・マルクが話した内容に起因した。
パトリック・フォン・マルクは、苛立つ感情を王太子にぶつけるようにして話、その中で妹の今後の事を考えて独自に提案をしてしまったのだ。
――国を捨てて妹と共に生きろと。
そして、そのことを自分の父親であるオイゲンに報告し、現在に至っている。
「申し訳ありません」
「お前が勝手に話した内容だが――、一応は今だに王太子という継承権を所持している方に、暴言を吐くなど王家に仕える臣下として失格だぞ」
「はい……」
「まぁ、言いたいことは分かる。さて――、どうしたものか」
オイゲンは、棚からウイスキーを取り出す。
そしてグラスを二つ用意すると、彼は息子であるパトリックの隣に座り、グラスにウイスキーを注いでいき、グラスの一つをパトリックに手渡した。
「本来ならば、教会とエイゼル王国が裏で繋がっている確固たる証拠が見つかるまでは王太子殿下を隠しておくつもりであったが……」
「はい」
教会内に存在するイグニス王国を転覆させようとしている一部の勢力。
それは王家が少し前から噂として掴んでいた内容であった。
ただ、その手口が巧妙だったこともあり未だに全容が掴めておらず王国でも動くことができないでいた。
「王太子殿下の一件以降、不審な人物が教会上層部と関わっていることが何度か目撃去れて――」
「それは分かっている。問題は、教会のどこまでが王国転覆に関わっているかだ。下手に探りを入れれば、信仰をしている信者が何をするか分からないからな」
「分かっています。それと王太子殿下の件で、エイナから情報が」
「エイナか。――で、情報とは?」
「はい。Sランク冒険者のエイナからの情報によりますと、やはりスペンサー枢機卿の様子がおかしいと」
「ふむ」
「しつこく妹のクララと、王太子殿下が何時会うのかを聞いてきたとのことです」
「なるほど……。理由は、分かっているのか?」
「どうやら王太子殿下を保護したいという名目のようです」
「そうか。だが保護だけが目的とは限らないか」
「はい。これは余談ですが、王太子殿下を旗印に内戦を起こし国ごと乗っ取る考えもあると思われます」
「そして隣国のエイゼル王国の属国に落すという可能性もあるな」
「はい。ですが、そのためには――」
「現、王政の腐敗を暴露する必要があるか」
「はい。民衆の支持を得る為、陛下が魔力を持たない王太子殿下を切り捨て、それを聖女が助けるという大衆にも分かりやすい美談が必要なのかも知れません」
「だろうな。それ以外には思いつかん。ユリエールの王太子殿下の篭絡が失敗した以上、何かしらの行動をするのは分かっているからな」
「――では、どうしますか?」
「そうだな……。まずは王太子殿下と娘を一度会わせてみるか」
「それは……」
「心配なのは分かっているが、レゴリス帝国のマリーゴールド姫が、こちらに向かってきているのだ。荒療治かも知れないが何とかするほかないだろう」
そう言いウイスキーに口をつけるオイゲンを、神妙な眼差しでパトリックは見つめていた。
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