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第39話 ようやく会えた(3)
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「お兄様?」
「この先に王太子殿下は居られる」
目が語っていた。
先に進みなさいと。
私は高鳴る鼓動を抑えることもせずに階段を降りていく。
地下へと通じる階段は、お兄様が付けてくれたのか光の魔法で明るく照らされていて歩く分には支障はない。
階段を降り切ったところで、横へと真っ直ぐに伸びる通路がある。
私は、その通路を歩いていたけれど、何時の間にか走っていた。
ようやく! ようやく! ようやく! あの方に会えるから。
「ラインハルト様! ラインハルト様!」
私は、彼の――、思い人の名前を呟きながら走る。
通路の床は石が敷き詰められていて、壁も石で積まれて作られている。
でも、それらの石にはヒビが入っていて、走り難く転びそうになる。
だけど……。
視線の先に灯りが見えてきたところで、歩みをさらに早める。
そして――、灯りが灯っている場所で足を止めたところ。
そこは牢屋の前で、中にはラインハルト様の後ろ姿が見えた。
「ラインハルト様」
ようやく会えた彼の後ろ姿。
私が見間違うはずがない。
「ラインハルト様」
私は赤茶けに錆びた鉄格子を掴む。
「ラインハルト様っ!」
ラインハルト様は反応してくれない。
背を向けたまま、まったく私の声が届いていないようで、私はラインハルト様が何かしらの魔法がかけられていたら? と、憂慮しディスペルの魔法を発動するけど、何の反応もない。
「ラインハルト様! 何かあったのですか! お兄様から全ての話は伺いしました! ユリエールという女性に操られていたと!」
「ユリエール……」
「――え?」
私の声に反応しなかったのに、ラインハルト様はユリエールという女性の名前の言葉に反応して、その女性の名前を呟いて……。
「ラインハルト様! クララです!」
「クララ……?」
「はい! クララです! クララ・フォン・マルクです! ラインハルト様の婚約しておりますクララです!」
「……ああ、お前か」
「ライン……ハルト様?」
いつもは、クララと呼んでくれているのに……「お前なんて言葉で呼ばれた事なんて無いのに……、彼の――、ラインハルト様の言葉に私は一瞬、驚いてしまう。
「お前に、名前を呼ばれる謂われはない」
「えっ……」
「だいたい、俺は、お前のことは何とも思ってない。お前のせいで、俺は、この牢屋に入れられている。その事くらいは気が付け」
「それは……。で、でも! ラインハルト様は、他国の間者の魔法で操られていたってお兄様がおっしゃっていました! ですから!」
「クララ」
「はい!」
ここにきて、ラインハルト様に名前を呼ばれた私は、私の言葉で彼が私に対して興味を持ってくれた事に嬉しく思い――。
「私はお前の事が嫌いだ」
「……え?」
まったく感情が込められていない。
そのことを理解した途端、私は心の中の何かが折れてしまった音が聞こえた。
膝から力が抜けて、私は床の上に座り込んでしまう。
「ライン……ハルト様? どうして……」
弱々しい声。
自分でも思っていない程、まったく力の篭っていない言葉が口から零れる。
それと同時に、ラインハルト様は椅子に座ったまま、こちらを一度も見ずにテーブルを強く叩くと――、
「お前みたいな奴は、父上が決めたから婚約者として接していたに過ぎない!」
「この先に王太子殿下は居られる」
目が語っていた。
先に進みなさいと。
私は高鳴る鼓動を抑えることもせずに階段を降りていく。
地下へと通じる階段は、お兄様が付けてくれたのか光の魔法で明るく照らされていて歩く分には支障はない。
階段を降り切ったところで、横へと真っ直ぐに伸びる通路がある。
私は、その通路を歩いていたけれど、何時の間にか走っていた。
ようやく! ようやく! ようやく! あの方に会えるから。
「ラインハルト様! ラインハルト様!」
私は、彼の――、思い人の名前を呟きながら走る。
通路の床は石が敷き詰められていて、壁も石で積まれて作られている。
でも、それらの石にはヒビが入っていて、走り難く転びそうになる。
だけど……。
視線の先に灯りが見えてきたところで、歩みをさらに早める。
そして――、灯りが灯っている場所で足を止めたところ。
そこは牢屋の前で、中にはラインハルト様の後ろ姿が見えた。
「ラインハルト様」
ようやく会えた彼の後ろ姿。
私が見間違うはずがない。
「ラインハルト様」
私は赤茶けに錆びた鉄格子を掴む。
「ラインハルト様っ!」
ラインハルト様は反応してくれない。
背を向けたまま、まったく私の声が届いていないようで、私はラインハルト様が何かしらの魔法がかけられていたら? と、憂慮しディスペルの魔法を発動するけど、何の反応もない。
「ラインハルト様! 何かあったのですか! お兄様から全ての話は伺いしました! ユリエールという女性に操られていたと!」
「ユリエール……」
「――え?」
私の声に反応しなかったのに、ラインハルト様はユリエールという女性の名前の言葉に反応して、その女性の名前を呟いて……。
「ラインハルト様! クララです!」
「クララ……?」
「はい! クララです! クララ・フォン・マルクです! ラインハルト様の婚約しておりますクララです!」
「……ああ、お前か」
「ライン……ハルト様?」
いつもは、クララと呼んでくれているのに……「お前なんて言葉で呼ばれた事なんて無いのに……、彼の――、ラインハルト様の言葉に私は一瞬、驚いてしまう。
「お前に、名前を呼ばれる謂われはない」
「えっ……」
「だいたい、俺は、お前のことは何とも思ってない。お前のせいで、俺は、この牢屋に入れられている。その事くらいは気が付け」
「それは……。で、でも! ラインハルト様は、他国の間者の魔法で操られていたってお兄様がおっしゃっていました! ですから!」
「クララ」
「はい!」
ここにきて、ラインハルト様に名前を呼ばれた私は、私の言葉で彼が私に対して興味を持ってくれた事に嬉しく思い――。
「私はお前の事が嫌いだ」
「……え?」
まったく感情が込められていない。
そのことを理解した途端、私は心の中の何かが折れてしまった音が聞こえた。
膝から力が抜けて、私は床の上に座り込んでしまう。
「ライン……ハルト様? どうして……」
弱々しい声。
自分でも思っていない程、まったく力の篭っていない言葉が口から零れる。
それと同時に、ラインハルト様は椅子に座ったまま、こちらを一度も見ずにテーブルを強く叩くと――、
「お前みたいな奴は、父上が決めたから婚約者として接していたに過ぎない!」
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