38 / 81
第38話 ようやく会えた(2)
しおりを挟む
高く聳え立つ石造りの尖塔は、王城とは回廊で繋がってはいるけれども、兵士の方が巡回してくるような様子も見受けられない。
「あの、お兄様。ここにレオン様は居られるのですか?」
「ああ」
「そうなのですか……。――でも、何故、王城の近くの尖塔に?」
「その説明はあとだ。まずはこっちに――」
お兄様は、私を地面の上に下すと、尖塔の壁に手をつき、小さく言葉を紡ぐ。
それは魔法言語であることはすぐに分かった。
そして――、尖塔の壁が僅かに波打ち木製の扉が姿を現す。
「魔法で入口を隠蔽していたのですか?」
私の質問に答えるかのようにお兄様は頷くと、私の手を引き尖塔の中へと入っていく。
尖塔の中は、一切の灯りがなく――、月明かりも無かった事もあり一寸先も見通すことができない。
「お兄様。灯りの魔法を使った方がいいでしょうか?」
「必要ない」
お兄様が、そう答えてくると共に空中に直径10センチほどの光源が出現した。
それは光の魔法の一つで、光源の魔法。
火の魔法にも同じようなモノがあるけれども、光量が一定ということで火の魔法よりも人気があるって、聞いたことがある。
光に照らされた尖塔内は、螺旋状の階段が壁に沿って上層へと伸びている。
「この尖塔の上にラインハルト様がおられるのですか?」
「王太子殿下が居られるのは――」
そう答えながら、下を指差すお兄様。
お兄様が指差した場所は、巨大な1枚の石畳で構成されていて、下へ降りる階段のようなモノは見えない。
「もしかして……」
私は、自身を中心に結界を展開する。
それは聖属性系に属する結界魔法で、全ての魔物に対して浄化・封印・防御することができる結界魔法。
そして――、その結界魔法には、さらに特徴があって、ある程度は周囲の状況を感じることができるというもの。
「地下に階段が続いています。でも、どうやって?」
「ここの尖塔は、幽閉の尖塔だ」
「それって……王家で不祥事が起きた際に、王族関係者を幽閉する場所だと伺ったことがあります」
「ああ。そうだな……」
「……でも、それなら、王太子殿下が行方不明という話を聞きました。まずは、ここに兵士の方が探しに来る可能性は非常にたか……あっ!」
そこまで考えた時点で、どうしてお兄様がラインハルト様と会える時間が掛かると言われたのか理解する。
つまり、兵士の方が尖塔に近づけなくする? もしくは不在の時を見計らって、私を連れて来たと言う事に。
「気が付いたようだな。王太子殿下の身柄を安全な場所に……、時が来るまで匿っているのは、反王政派の連中に王太子殿下を利用させないためだ」
「反王政派?」
「ああ、いま王宮は非常に不味い状況でな」
お兄様は、そう話しながらも床に手を当てると、魔法を発動させ――、それと同時に私達の足元には地下へと通じる階段が姿を現した。
「あの、お兄様。ここにレオン様は居られるのですか?」
「ああ」
「そうなのですか……。――でも、何故、王城の近くの尖塔に?」
「その説明はあとだ。まずはこっちに――」
お兄様は、私を地面の上に下すと、尖塔の壁に手をつき、小さく言葉を紡ぐ。
それは魔法言語であることはすぐに分かった。
そして――、尖塔の壁が僅かに波打ち木製の扉が姿を現す。
「魔法で入口を隠蔽していたのですか?」
私の質問に答えるかのようにお兄様は頷くと、私の手を引き尖塔の中へと入っていく。
尖塔の中は、一切の灯りがなく――、月明かりも無かった事もあり一寸先も見通すことができない。
「お兄様。灯りの魔法を使った方がいいでしょうか?」
「必要ない」
お兄様が、そう答えてくると共に空中に直径10センチほどの光源が出現した。
それは光の魔法の一つで、光源の魔法。
火の魔法にも同じようなモノがあるけれども、光量が一定ということで火の魔法よりも人気があるって、聞いたことがある。
光に照らされた尖塔内は、螺旋状の階段が壁に沿って上層へと伸びている。
「この尖塔の上にラインハルト様がおられるのですか?」
「王太子殿下が居られるのは――」
そう答えながら、下を指差すお兄様。
お兄様が指差した場所は、巨大な1枚の石畳で構成されていて、下へ降りる階段のようなモノは見えない。
「もしかして……」
私は、自身を中心に結界を展開する。
それは聖属性系に属する結界魔法で、全ての魔物に対して浄化・封印・防御することができる結界魔法。
そして――、その結界魔法には、さらに特徴があって、ある程度は周囲の状況を感じることができるというもの。
「地下に階段が続いています。でも、どうやって?」
「ここの尖塔は、幽閉の尖塔だ」
「それって……王家で不祥事が起きた際に、王族関係者を幽閉する場所だと伺ったことがあります」
「ああ。そうだな……」
「……でも、それなら、王太子殿下が行方不明という話を聞きました。まずは、ここに兵士の方が探しに来る可能性は非常にたか……あっ!」
そこまで考えた時点で、どうしてお兄様がラインハルト様と会える時間が掛かると言われたのか理解する。
つまり、兵士の方が尖塔に近づけなくする? もしくは不在の時を見計らって、私を連れて来たと言う事に。
「気が付いたようだな。王太子殿下の身柄を安全な場所に……、時が来るまで匿っているのは、反王政派の連中に王太子殿下を利用させないためだ」
「反王政派?」
「ああ、いま王宮は非常に不味い状況でな」
お兄様は、そう話しながらも床に手を当てると、魔法を発動させ――、それと同時に私達の足元には地下へと通じる階段が姿を現した。
116
お気に入りに追加
964
あなたにおすすめの小説
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。

〖完結〗聖女の力を隠して生きて来たのに、妹に利用されました。このまま利用されたくないので、家を出て楽しく暮らします。
藍川みいな
恋愛
公爵令嬢のサンドラは、生まれた時から王太子であるエヴァンの婚約者だった。
サンドラの母は、魔力が強いとされる小国の王族で、サンドラを生んですぐに亡くなった。
サンドラの父はその後再婚し、妹のアンナが生まれた。
魔力が強い事を前提に、エヴァンの婚約者になったサンドラだったが、6歳までほとんど魔力がなかった。
父親からは役立たずと言われ、婚約者には見た目が気味悪いと言われ続けていたある日、聖女の力が覚醒する。だが、婚約者を好きになれず、国の道具になりたくなかったサンドラは、力を隠して生きていた。
力を隠して8年が経ったある日、妹のアンナが聖女だという噂が流れた。 そして、エヴァンから婚約を破棄すると言われ……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
ストックを全部出してしまったので、次からは1日1話投稿になります。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる