平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。

なつめ猫

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第38話 ようやく会えた(2)

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 高く聳え立つ石造りの尖塔は、王城とは回廊で繋がってはいるけれども、兵士の方が巡回してくるような様子も見受けられない。

「あの、お兄様。ここにレオン様は居られるのですか?」
「ああ」
「そうなのですか……。――でも、何故、王城の近くの尖塔に?」
「その説明はあとだ。まずはこっちに――」

 お兄様は、私を地面の上に下すと、尖塔の壁に手をつき、小さく言葉を紡ぐ。
 それは魔法言語であることはすぐに分かった。
 そして――、尖塔の壁が僅かに波打ち木製の扉が姿を現す。
 
「魔法で入口を隠蔽していたのですか?」

 私の質問に答えるかのようにお兄様は頷くと、私の手を引き尖塔の中へと入っていく。
 尖塔の中は、一切の灯りがなく――、月明かりも無かった事もあり一寸先も見通すことができない。

「お兄様。灯りの魔法を使った方がいいでしょうか?」
「必要ない」

 お兄様が、そう答えてくると共に空中に直径10センチほどの光源が出現した。
 それは光の魔法の一つで、光源の魔法。
 火の魔法にも同じようなモノがあるけれども、光量が一定ということで火の魔法よりも人気があるって、聞いたことがある。

 光に照らされた尖塔内は、螺旋状の階段が壁に沿って上層へと伸びている。

「この尖塔の上にラインハルト様がおられるのですか?」
「王太子殿下が居られるのは――」

 そう答えながら、下を指差すお兄様。
 お兄様が指差した場所は、巨大な1枚の石畳で構成されていて、下へ降りる階段のようなモノは見えない。

「もしかして……」

 私は、自身を中心に結界を展開する。
 それは聖属性系に属する結界魔法で、全ての魔物に対して浄化・封印・防御することができる結界魔法。
 そして――、その結界魔法には、さらに特徴があって、ある程度は周囲の状況を感じることができるというもの。

「地下に階段が続いています。でも、どうやって?」
「ここの尖塔は、幽閉の尖塔だ」
「それって……王家で不祥事が起きた際に、王族関係者を幽閉する場所だと伺ったことがあります」
「ああ。そうだな……」
「……でも、それなら、王太子殿下が行方不明という話を聞きました。まずは、ここに兵士の方が探しに来る可能性は非常にたか……あっ!」

 そこまで考えた時点で、どうしてお兄様がラインハルト様と会える時間が掛かると言われたのか理解する。
 つまり、兵士の方が尖塔に近づけなくする? もしくは不在の時を見計らって、私を連れて来たと言う事に。

「気が付いたようだな。王太子殿下の身柄を安全な場所に……、時が来るまで匿っているのは、反王政派の連中に王太子殿下を利用させないためだ」
「反王政派?」
「ああ、いま王宮は非常に不味い状況でな」

 お兄様は、そう話しながらも床に手を当てると、魔法を発動させ――、それと同時に私達の足元には地下へと通じる階段が姿を現した。









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