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第31話 支持基盤(4)
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「お待ちしておりました、聖女様」
手を借りて馬車から降りた私に向かってかけられた第一声は、それだった。
ただ、目の前の女性の表情を見るに、とくに崇拝しているような様子は見受けられない事から職務上、そう語り掛けてきた事は容易に看過する事が出来た。
「これは、これは――」
思考していた所で、一人の紺色の神官服を纏った男性が近づいてくる。
そして、目の前で立ち止まると、恭しく頭を下げてきた。
「聖女様、急なお呼びたて申し訳ありません」
「――いえ。困っておられる方がいらっしゃれば駆け付け、穏やかに暮らして頂けるようにお力添えするのが教会のあるべき姿であり、聖女としての役目ですので」
私は、目の前で頭を下げてきているスペンサー枢機卿に対して言葉を返す。
それにしても枢機卿が直接、私を出迎えにくるとは思っても見なかっただけに少し驚いてしまった。
大聖堂の方で待っているとばかり思っていた事もあり、表情には出さなかったけど、少し声が上ずってしまったのは、失態と言わざるを得ません。
「それでは、聖女様は私が案内致しますので、少し距離を置いて護衛につくように」
「はい」
スペンサー枢機卿の指示に、私に先ほど話しかけてきた女性の神殿騎士の方が敬礼をする。
彼女は、すぐに周囲の女性騎士に命令を下していて――、それを横目に私は歩き出したスペンサー枢機卿の後を追うように、その場を後にする。
馬車が停まっていた敷地内から、しばらく歩くと回廊へと辿りつく。
「スペンサー枢機卿」
「なんですかな? 聖女殿」
「その聖女という呼び名は必要ありませんので、少し本題に入りたいのですが……」
「そうですか」
目の前を歩いているスペンサー枢機卿に――、背中越しに話しかけると彼は振り向くことなく、かつ歩みを遅らせることもなく言葉を紡いでくる。
「――で、何を聞きたいのですかな?」
「今回の急な招集についてです」
「なるほど……。――ですが、聡明な聖女様でしたら、すでにある程度の目ぼしは付けているのではないですかな?」
その返答に、私は思わず心の中で溜息をつく。
どうやら、素直に教えてくれるという感じではなく、こちらを試してきている。
それは、私の能力を測る為という意味合いが強いような気がする。
「有力な商人の方々を怪我の治療と言うことは、足場作りと言う所ですか」
「よく分かっていらっしゃる」
「――ですが、こんなに早く動く必要があるのですか?」
「そうですな。貴女の思い人の処遇について動きがあった――、そういうところですかな?」
「――え?」
私は、スペンサー枢機卿の言葉に動揺して思わず足を止めてしまう。
「――ど、どういうことなのですか?」
「動揺を隠されますように。あくまでも、手に入れた情報に関しては、まだ確証は得られているものではありませんからね」
手を借りて馬車から降りた私に向かってかけられた第一声は、それだった。
ただ、目の前の女性の表情を見るに、とくに崇拝しているような様子は見受けられない事から職務上、そう語り掛けてきた事は容易に看過する事が出来た。
「これは、これは――」
思考していた所で、一人の紺色の神官服を纏った男性が近づいてくる。
そして、目の前で立ち止まると、恭しく頭を下げてきた。
「聖女様、急なお呼びたて申し訳ありません」
「――いえ。困っておられる方がいらっしゃれば駆け付け、穏やかに暮らして頂けるようにお力添えするのが教会のあるべき姿であり、聖女としての役目ですので」
私は、目の前で頭を下げてきているスペンサー枢機卿に対して言葉を返す。
それにしても枢機卿が直接、私を出迎えにくるとは思っても見なかっただけに少し驚いてしまった。
大聖堂の方で待っているとばかり思っていた事もあり、表情には出さなかったけど、少し声が上ずってしまったのは、失態と言わざるを得ません。
「それでは、聖女様は私が案内致しますので、少し距離を置いて護衛につくように」
「はい」
スペンサー枢機卿の指示に、私に先ほど話しかけてきた女性の神殿騎士の方が敬礼をする。
彼女は、すぐに周囲の女性騎士に命令を下していて――、それを横目に私は歩き出したスペンサー枢機卿の後を追うように、その場を後にする。
馬車が停まっていた敷地内から、しばらく歩くと回廊へと辿りつく。
「スペンサー枢機卿」
「なんですかな? 聖女殿」
「その聖女という呼び名は必要ありませんので、少し本題に入りたいのですが……」
「そうですか」
目の前を歩いているスペンサー枢機卿に――、背中越しに話しかけると彼は振り向くことなく、かつ歩みを遅らせることもなく言葉を紡いでくる。
「――で、何を聞きたいのですかな?」
「今回の急な招集についてです」
「なるほど……。――ですが、聡明な聖女様でしたら、すでにある程度の目ぼしは付けているのではないですかな?」
その返答に、私は思わず心の中で溜息をつく。
どうやら、素直に教えてくれるという感じではなく、こちらを試してきている。
それは、私の能力を測る為という意味合いが強いような気がする。
「有力な商人の方々を怪我の治療と言うことは、足場作りと言う所ですか」
「よく分かっていらっしゃる」
「――ですが、こんなに早く動く必要があるのですか?」
「そうですな。貴女の思い人の処遇について動きがあった――、そういうところですかな?」
「――え?」
私は、スペンサー枢機卿の言葉に動揺して思わず足を止めてしまう。
「――ど、どういうことなのですか?」
「動揺を隠されますように。あくまでも、手に入れた情報に関しては、まだ確証は得られているものではありませんからね」
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