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第6話 暗闇の中、ただ一人。
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目を覚ますと、部屋の中は薄暗い。
「えっと……」
思わず擦れた声が唇から漏れる。
室内を見渡せば、私が寝ていた部屋は、5歳まで私が使っていた部屋。
そして、5歳から王宮で妃教育を受けるようになってからは、一年に一回だけ帰省した時に滞在している部屋でもあった。
「どうして、ここに……」
まだハッキリとしない意識のまま記憶の糸を手繰る。
思い起こすと、私はお母様に抱きしめられたまま泣いてしまって……、そこからの記憶がない。
たぶん、すごく泣いたと思う。
もしかしたら泣きつかれて寝てしまったのかも知れない。
妃教育の中には、自分の感情を相手に見せないようにする術も教えられていた。
理由は、相手国との交渉の際に感情の起伏を見られると、不利に働く事があるから。
「そうなのね……」
一人、呟きながら、私はベッドから絨毯の上へと降りる。
音は一切しない。
絨毯の毛が、踝まであるから音を出さずにいてくれたから。
室内の鏡面台まで歩き、椅子に座り鏡を見る。
鏡の大きさは、高さ2メートルほどあるので、私の上半身は全て映っていた。
「ひどい顔……」
薄暗い室内でも分かるほど、目元が赤く腫れていて、ずっと泣いていた事が伺い知れてしまう。
洋服は、ドレスではなく寝間着ようのワンピースに着替えさせられている事から、メイドのエイナさんか、お母様が、着がえさせてくれたのかも知れない。
「これから、私は、どうしたらいいのかしら」
お兄様の話だと、貴族学院のサーバル院長様は、私を貴族学院から追放したらしいし、もう貴族学院の方々と会う事はできない。
でも、貴族の常識から考えて国王陛下は、すぐにでも何かしらの行動を起こされると思う。
その時の事を考えると、自室で私は静かに待っていた方がいい。
余計なことをすれば、公爵家にどんな非が降りかかるのか分からないから。
「駄目ね。考えても私は、何もできることは無いわ」
未来の王妃と言っても、私には何の権力も発言権もない。
ただの公爵家の長女でしかないから。
そうすると、私ができる事と言えば、寝る事くらい。
――でも……。
眠気などを一切感じないし、何より幾分か気持ちがスッキリとしているので、たぶん12時間くらいは寝ていたはず。
私は鏡の前から立ち上がり、自分のベッドに腰を下ろす。
そして、ランプに灯りを灯し、纏めて購入した貴族令嬢の間で流行っている恋愛小説に目を落す。
その恋愛小説には、貴族の男性が女性を大事にしてくれる場面や、プロポーズに四苦八苦しながらも、最後には紆余曲折を経て結ばれるというラブストーリーが書かれている。
「――あれ?」
気がつけば、私が視線を落としていた本には、幾つもの染みが出来ていた。
その染みは次々と増えていく。
そこで、私はようやく気がつき理解する。
頬を伝わる私自身の涙に。
私は、自分が王家に嫁ぐという理由で両親の元から離され、それでもラインハルト様が、私を気にかけてくれていたので、頑張ってこられた。
それは、まるでラブロマンスの小説の中のように。
――だけど……。
「うっ……ぐすっ……、どうして……」
目元が泣き腫れるまで泣いたのに、涙は止めどなく瞳からポロポロと零れ落ち、文字が書かれている紙の上へと落ちていく。
染みは広がりインクが滲んでいくのを私は見ながらも、涙を止めることは出来なかった。
「えっと……」
思わず擦れた声が唇から漏れる。
室内を見渡せば、私が寝ていた部屋は、5歳まで私が使っていた部屋。
そして、5歳から王宮で妃教育を受けるようになってからは、一年に一回だけ帰省した時に滞在している部屋でもあった。
「どうして、ここに……」
まだハッキリとしない意識のまま記憶の糸を手繰る。
思い起こすと、私はお母様に抱きしめられたまま泣いてしまって……、そこからの記憶がない。
たぶん、すごく泣いたと思う。
もしかしたら泣きつかれて寝てしまったのかも知れない。
妃教育の中には、自分の感情を相手に見せないようにする術も教えられていた。
理由は、相手国との交渉の際に感情の起伏を見られると、不利に働く事があるから。
「そうなのね……」
一人、呟きながら、私はベッドから絨毯の上へと降りる。
音は一切しない。
絨毯の毛が、踝まであるから音を出さずにいてくれたから。
室内の鏡面台まで歩き、椅子に座り鏡を見る。
鏡の大きさは、高さ2メートルほどあるので、私の上半身は全て映っていた。
「ひどい顔……」
薄暗い室内でも分かるほど、目元が赤く腫れていて、ずっと泣いていた事が伺い知れてしまう。
洋服は、ドレスではなく寝間着ようのワンピースに着替えさせられている事から、メイドのエイナさんか、お母様が、着がえさせてくれたのかも知れない。
「これから、私は、どうしたらいいのかしら」
お兄様の話だと、貴族学院のサーバル院長様は、私を貴族学院から追放したらしいし、もう貴族学院の方々と会う事はできない。
でも、貴族の常識から考えて国王陛下は、すぐにでも何かしらの行動を起こされると思う。
その時の事を考えると、自室で私は静かに待っていた方がいい。
余計なことをすれば、公爵家にどんな非が降りかかるのか分からないから。
「駄目ね。考えても私は、何もできることは無いわ」
未来の王妃と言っても、私には何の権力も発言権もない。
ただの公爵家の長女でしかないから。
そうすると、私ができる事と言えば、寝る事くらい。
――でも……。
眠気などを一切感じないし、何より幾分か気持ちがスッキリとしているので、たぶん12時間くらいは寝ていたはず。
私は鏡の前から立ち上がり、自分のベッドに腰を下ろす。
そして、ランプに灯りを灯し、纏めて購入した貴族令嬢の間で流行っている恋愛小説に目を落す。
その恋愛小説には、貴族の男性が女性を大事にしてくれる場面や、プロポーズに四苦八苦しながらも、最後には紆余曲折を経て結ばれるというラブストーリーが書かれている。
「――あれ?」
気がつけば、私が視線を落としていた本には、幾つもの染みが出来ていた。
その染みは次々と増えていく。
そこで、私はようやく気がつき理解する。
頬を伝わる私自身の涙に。
私は、自分が王家に嫁ぐという理由で両親の元から離され、それでもラインハルト様が、私を気にかけてくれていたので、頑張ってこられた。
それは、まるでラブロマンスの小説の中のように。
――だけど……。
「うっ……ぐすっ……、どうして……」
目元が泣き腫れるまで泣いたのに、涙は止めどなく瞳からポロポロと零れ落ち、文字が書かれている紙の上へと落ちていく。
染みは広がりインクが滲んでいくのを私は見ながらも、涙を止めることは出来なかった。
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