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第四章 超古代文明遺跡編
第190話 貴族の偏見(2)
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「――ッ!」
表情を青くしていくヨアヒムを見ながら、俺は手を離す。
一応、腐っても公爵家の跡取り。
ヨアヒムの父親が、どういう人間かは知らないが、全ての貴族を出し抜いて一番最初に王都に到着できるように取り計らったという事は、無能ではないという証。
なら、敵対するのは避けた方がいいだろう。
――いまはな!
「今回のことについては、俺は不問とする。国王陛下のお考えについて、お前が、冒険者を馬鹿にするような言動をしたことについてはな!」
「何を――」
「別に、お前が冒険者ギルドや冒険者を馬鹿にするような言動を取ったことについて国王陛下に伝えてもいいが、そうなれば全ての町や村に置かれている冒険者ギルドに所属している全冒険者ギルドメンバーを敵に回すことになる。俺としては、それでもいいが? お前はどうなんだ? お前がいいのなら、俺の口から――」
俺は、一端、言葉を区切りヨアヒムの目を見る。
「ヨアヒム、お前が冒険者ギルドシステムという一般庶民のセーフティネットを蔑ろにしているという思想を持っていると陛下に伝える。そうなれば、お前は確実に王家に対して反思想を持っていると思われるだろう。そうなれば、あとは分かるな?」
「そ、それは……」
歯ぎしりしつつ、ヨアヒムは頭をゆっくりと地面に下げてきた。
「わ、分かった……。今回のことについては――」
「――なら、この話しはここまでだ」
「わ、わかった……」
どうやら、自分の立場が分からないほどのボンクラという感じではないようだな。
ただし庶民に対しての偏見は強いと。
所謂、貴族特有の選民思想というやつだろう。
なら、目的を与えて思考を誘導した方がいいか。
「ヨアヒム。今、俺たちが一番考えないといけない事はなんだ?」
「一番考えないといけないこと?」
「ああ。俺たちが最優先で守らないといけないのは陛下の御身のはずだろう?」
「それは、そうだが……」
「――なら、獣人族だからとか身分が低いからだとか冒険者だからだとかの理由で、味方を減らすのは愚かな行為じゃないのか? あくまでも陛下の身を守るのが臣下の役目だろう? お前だって、現状の王城と王宮の警備状況は知っているはずだ。見回りの警備だけでもハッキリ言って、いま現状、人手が足りてない。そんな中で、出ていけというのは自殺行為だ。陛下の身を守る為なら、まずは毒を啜ってでも、警備を手厚くするのが本筋だろう?」
「……わかった。だが!」
「分かっている。俺だって、いつまでも王城に滞在したいとは思っていないからな。ただし、今はある程度は王城の設備を警護の連中に使わせてもらう。英気を養うのは、士気を維持するためには必要不可欠だからな」
俺の言葉にコクリと頷いたヨアヒム。
「じゃ、選別は任せたぞ」
「分かっている。あと国王陛下には、このことは――」
「ああ。貸し一つな」
俺はディアナの腕を掴むと引っ張る。
ディアナの小柄な体は、抵抗することもなく俺の腕の中に収まる。
そして、俺は獣人族の女たちの視線を向けた。
「お前たちは王城の警備を続けてくれ」
「「はい! ご主人様!」」
獣人族の女たちが、部屋の前から去っていく。
「じゃ、ヨアヒム。またな」
俺は、何か言いたげなヨアヒムの視線を扉を閉めて遮ってから、鍵をかけた。
「ご主人様……、良かったのですかニャン?」
「何がだ?」
「アレを生かしておいてですニャン。あれは、絶対に将来は敵になるニャン」
「仕方ないだろ」
「仕方ないって……」
「さっきヨアヒムにも説明したが、今は借りにでも同じ王国に仕える人間なんだから敵対するのは愚かモノの極致だ。あとあと敵になるとしても、今は味方だからな。旨く利用するしかない」
「ご主人様が、そうおっしゃるのでしたら……」
「それよりも風呂に入ってきたのか?」
「はいですニャン! お風呂に入れる時間が取れましたので」「
俺は、自身の腕の中で煽情的な表情で俺を見上げてきているディアナに顔を近づけて匂いを嗅ぐ。
女性特有のいい匂いが鼻孔を擽る。
「とりあえず寝るか」
今日も色々あって疲れたからな。
「ニャン!」
ディアナを連れ立って、俺は来客に宛がわれる客間の部屋に用意されていたベッドの中へとディアナと一緒に入った。
そして発情期のディアナを満足させたあと、俺はディアナと共に眠りについた。
ヨアヒムと一悶着あったあと、一週間が経過したところで次々と遠くの領地を治めている貴族の子息たちが集まってきた。
それらの選別をしているのはヨアヒムであり、俺は、その動向の一部始終を監視しているだけ。
俺は王家に仕える貴族の選定が、どんな基準で行われるのか知らないから、ヨアヒムに任せることを国王陛下が考えたのは当然の成り行きと言う事だろう。
ただし、時々、国王陛下が謁見した貴族を領地に戻すことなく王城内で何の職務も与えることもなく客間に監禁しているところを見ると、国王陛下が最終的なチェックはしているようだ。
そして、2週間が経過したところで、ようやく貴族たちが連れてきた兵士たち――、主に下級貴族出の子息だけで王城や王宮を守る騎士団が設立された。
表情を青くしていくヨアヒムを見ながら、俺は手を離す。
一応、腐っても公爵家の跡取り。
ヨアヒムの父親が、どういう人間かは知らないが、全ての貴族を出し抜いて一番最初に王都に到着できるように取り計らったという事は、無能ではないという証。
なら、敵対するのは避けた方がいいだろう。
――いまはな!
「今回のことについては、俺は不問とする。国王陛下のお考えについて、お前が、冒険者を馬鹿にするような言動をしたことについてはな!」
「何を――」
「別に、お前が冒険者ギルドや冒険者を馬鹿にするような言動を取ったことについて国王陛下に伝えてもいいが、そうなれば全ての町や村に置かれている冒険者ギルドに所属している全冒険者ギルドメンバーを敵に回すことになる。俺としては、それでもいいが? お前はどうなんだ? お前がいいのなら、俺の口から――」
俺は、一端、言葉を区切りヨアヒムの目を見る。
「ヨアヒム、お前が冒険者ギルドシステムという一般庶民のセーフティネットを蔑ろにしているという思想を持っていると陛下に伝える。そうなれば、お前は確実に王家に対して反思想を持っていると思われるだろう。そうなれば、あとは分かるな?」
「そ、それは……」
歯ぎしりしつつ、ヨアヒムは頭をゆっくりと地面に下げてきた。
「わ、分かった……。今回のことについては――」
「――なら、この話しはここまでだ」
「わ、わかった……」
どうやら、自分の立場が分からないほどのボンクラという感じではないようだな。
ただし庶民に対しての偏見は強いと。
所謂、貴族特有の選民思想というやつだろう。
なら、目的を与えて思考を誘導した方がいいか。
「ヨアヒム。今、俺たちが一番考えないといけない事はなんだ?」
「一番考えないといけないこと?」
「ああ。俺たちが最優先で守らないといけないのは陛下の御身のはずだろう?」
「それは、そうだが……」
「――なら、獣人族だからとか身分が低いからだとか冒険者だからだとかの理由で、味方を減らすのは愚かな行為じゃないのか? あくまでも陛下の身を守るのが臣下の役目だろう? お前だって、現状の王城と王宮の警備状況は知っているはずだ。見回りの警備だけでもハッキリ言って、いま現状、人手が足りてない。そんな中で、出ていけというのは自殺行為だ。陛下の身を守る為なら、まずは毒を啜ってでも、警備を手厚くするのが本筋だろう?」
「……わかった。だが!」
「分かっている。俺だって、いつまでも王城に滞在したいとは思っていないからな。ただし、今はある程度は王城の設備を警護の連中に使わせてもらう。英気を養うのは、士気を維持するためには必要不可欠だからな」
俺の言葉にコクリと頷いたヨアヒム。
「じゃ、選別は任せたぞ」
「分かっている。あと国王陛下には、このことは――」
「ああ。貸し一つな」
俺はディアナの腕を掴むと引っ張る。
ディアナの小柄な体は、抵抗することもなく俺の腕の中に収まる。
そして、俺は獣人族の女たちの視線を向けた。
「お前たちは王城の警備を続けてくれ」
「「はい! ご主人様!」」
獣人族の女たちが、部屋の前から去っていく。
「じゃ、ヨアヒム。またな」
俺は、何か言いたげなヨアヒムの視線を扉を閉めて遮ってから、鍵をかけた。
「ご主人様……、良かったのですかニャン?」
「何がだ?」
「アレを生かしておいてですニャン。あれは、絶対に将来は敵になるニャン」
「仕方ないだろ」
「仕方ないって……」
「さっきヨアヒムにも説明したが、今は借りにでも同じ王国に仕える人間なんだから敵対するのは愚かモノの極致だ。あとあと敵になるとしても、今は味方だからな。旨く利用するしかない」
「ご主人様が、そうおっしゃるのでしたら……」
「それよりも風呂に入ってきたのか?」
「はいですニャン! お風呂に入れる時間が取れましたので」「
俺は、自身の腕の中で煽情的な表情で俺を見上げてきているディアナに顔を近づけて匂いを嗅ぐ。
女性特有のいい匂いが鼻孔を擽る。
「とりあえず寝るか」
今日も色々あって疲れたからな。
「ニャン!」
ディアナを連れ立って、俺は来客に宛がわれる客間の部屋に用意されていたベッドの中へとディアナと一緒に入った。
そして発情期のディアナを満足させたあと、俺はディアナと共に眠りについた。
ヨアヒムと一悶着あったあと、一週間が経過したところで次々と遠くの領地を治めている貴族の子息たちが集まってきた。
それらの選別をしているのはヨアヒムであり、俺は、その動向の一部始終を監視しているだけ。
俺は王家に仕える貴族の選定が、どんな基準で行われるのか知らないから、ヨアヒムに任せることを国王陛下が考えたのは当然の成り行きと言う事だろう。
ただし、時々、国王陛下が謁見した貴族を領地に戻すことなく王城内で何の職務も与えることもなく客間に監禁しているところを見ると、国王陛下が最終的なチェックはしているようだ。
そして、2週間が経過したところで、ようやく貴族たちが連れてきた兵士たち――、主に下級貴族出の子息だけで王城や王宮を守る騎士団が設立された。
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