おっさんの異世界建国記

なつめ猫

文字の大きさ
上 下
186 / 190
第四章 超古代文明遺跡編

第186話 貴族の到着と謁見(1)

しおりを挟む
 王城や王宮の警備をスタートして2週間が経過したところで、ようやく町にも物資が行き届いたのか治安面で統制が効くようになった。
 闇ギルドが壊滅したという報は、王都中に出回ったのも犯罪組織による犯罪の抑制につながったのも大きい。
 おかげで王城へと続く城門前には、王城に興味のある王都民が足を運ぶだけ。
それ以外は、荒廃した王都の立て直しが進んでいた。
 
「ご主人様っ!」
 
 国王陛下の寝室へ食事を届け終わり、厨房でマキリが作ってくれた朝食を食べていたら、血相を変えてディアナが厨房に入ってくると俺の名を呼んできた。
 
「どうかしたのか? ディアナ」
「貴族が、王都の城壁に来たと報告があったニャン!」
「そうか。やっとか……」
 
 長かったなー。
 感慨深く思うが、とりあえずは――、
 
「それで、どこの貴族が来たんだ? ――いや、貴族というよりも家名は?」
 
 俺は国王陛下から渡されていた羊皮紙を掴むと、広げて信頼がおける順ということで聞いていた家名を確認することにする。
 
「シュライファイアー?」
「ふむ……」
 
 そんな家名は無いな……。
 近いところで言うと、シュライヒャーと言ったところか。
 
「シュライヒャーじゃないのか?」
「あ、そうニャン!」
「――となると……伯爵位を有する辺境伯か。王家に対する忠誠は高いようだ。それに王家からは王女が下賜されている事もあるから、信頼は置けるようだな……。すぐに王都内に通すように門番に指示を出してくれ」
「分かったニャン! 行ってくるニャン!」
 
 ディアナに命令を下すと、すぐにディアナは厨房から出ていく。
 
「さて、俺もさっそく行動しないとな……」
 
 今の王城と王宮内の現状は、冒険者が届けた手紙に書かれているはずだ。
 そのことを踏まえると、辺境伯が、いの一番に駆け付けたメリットは大きい。
 何せ、王家の血が入っている大貴族だ。
 朝食を急いで摂ったあとは、体を洗い服に着替えて国王陛下の元へと向かう。
 
「俺だ! エイジだ!」
 
 国王陛下の部屋の扉を何度かノックしながら俺の名前を告げる。
 するとすぐに部屋の扉を守っていた結界が解かれると、室内側から扉が開かれた。
 
「どうした? エイジ」
「陛下が、手紙を送った貴族の方が到着した。今、王都を囲っている壁を通り王城へと向かっている」
「分かった」
 
 扉が内側に開かれる。
 寝所に入ると、ロランはすぐに国王陛下のベッドへと小走りで向かう。
 
「陛下。王都の外の貴族が王都に到着したとのことです」
 
 カーテン向こうに移動することなくロランが声を張り上げるようにして現状を報告する。
 しばらくすると、カーテン向こう側からローブをまとった陛下が姿を見せる。
 
「そうか。――で、どこの貴族が到着したのだ?」
 
 2週間近く接していると、砕けてきたのか国王陛下という事を忘れてしまうが、久しぶりに威厳のある様子を見ると、やはり国王陛下なのだなと思ってしまう。
 
「エイジ。どこの貴族だった?」
「シュライヒャー家になります」
「それは重畳であるな。――と、なると、これだけの短期間で王都に来たという事は、ヨアヒムが直接来たと考えられるのう」
 
ヨアヒムか……。
たしか、ヨアヒムってガルガンの師だったという事を以前に聞いたことがある。
つまり、少なくとも50歳近くってことか。
そういえば、ガルガンが以前にヨアヒムという辺境伯は魔物狩りのエキスパートで、辺境の獅子と別名があると言っていたな」
 
「――では、すぐに出迎えの準備をした方がいいですね」
「エイジ殿、頼めるか? 儂も、すぐに着替えるとする。謁見の間まで、シュライヒャー辺境伯を案内しておいてくれ」
「分かりました」
 
 臣下が居ないとしても、一応、謁見の間で登城してきた貴族を迎い入れるのか。
 まぁ、互いに面子ってのもあるからな。
 とくに貴族や王族だと尚更。
 国王陛下の寝室から出たあとは、すぐに王城前へと移動する。
 
「ご主人さま! 噴水広場から、たくさんの兵士が、私たちがいる王城に向かってきてるワン!」
「どれどれ」
 
 城壁の上から、俺に話しかけてきたコローナの話を聞きながら、俺も城壁の上へと上がる。
 
「たしかに噴水広場から、こっちに向かってきているな」
 
 噴水広場から、俺たちが居る王城へと向かってきている一団。
 その数は100人近い。
 全員が帯剣しており、鎧こそ着てはいないが全員が全員、馬に乗り一糸乱れぬよう此方へと近づいてきている。
 その動きから見るだけで分かる。
 
「かなり訓練を受けている兵士たちだな。しかし……」
「どうかしましたワン?」
「――いや、随分と軽装だったからな。本当に進軍というか移動を主軸に置いた編成なんだろう。まぁ、だからこそ何処の貴族よりも早く到着することが出来たのかも知れないな」
「ご主人様、扉は開けるワン?」
「――いや、本人確認が先だな」
 
 携帯電話とか顔写真付きの免許証制度があれば便利なんだが、この世界では、そんなモノは存在していない。
 だから、確認する方法は一つしかない。
 
「ちょっと行ってくる」
 
 身体強化した上で城壁上から外へと飛び降りる。
 スタッ! と、言う音と共に石畳の上に着地した俺は、顔を上げると近づいてくる貴族の一団へと視線を移した。
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

元天才貴族、今やリモートで最強冒険者!

しらかめこう
ファンタジー
魔法技術が発展した異世界。 そんな世界にあるシャルトルーズ王国という国に冒険者ギルドがあった。 強者ぞろいの冒険者が数多く所属するそのギルドで現在唯一、最高ランクであるSSランクに到達している冒険者がいた。 ───彼の名は「オルタナ」 漆黒のコートに仮面をつけた謎多き冒険者である。彼の素顔を見た者は誰もおらず、どういった人物なのかも知る者は少ない。 だがしかし彼は誰もが認める圧倒的な力を有しており、冒険者になって僅か4年で勇者や英雄レベルのSSランクに到達していた。 そんな彼だが、実は・・・ 『前世の知識を持っている元貴族だった?!」 とある事情で貴族の地位を失い、母親とともに命を狙われることとなった彼。そんな彼は生活費と魔法の研究開発資金を稼ぐため冒険者をしようとするが、自分の正体が周囲に知られてはいけないので自身で開発した特殊な遠隔操作が出来るゴーレムを使って自宅からリモートで冒険者をすることに! そんな最強リモート冒険者が行く、異世界でのリモート冒険物語!! 毎日20時30分更新予定です!!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

処理中です...