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第四章 超古代文明遺跡編
第183話 殲滅命令
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「えー」
不平不満な表情を見せるマキリ。
「あの、ご主人様。今日の夜とかは――」
「しばらくは、警備の仕事に集中してくれ」
「はーい」
スープの味見をし終わったあと、熊人族のマキリが身長180センチ近くの巨体でがっかりしながら答えてきた。
「まぁ、あれだ……」
その様子に少しだけ居心地が悪いと思った俺は、「まぁ、今回の王城と王宮の警備の仕事が終わったらな」と、言葉を返すと、黒髪のポニテ―ルを揺らし俺の方を眩いばかりの瞳で見てくる。
「それでは、ご主人様! 期待していますね!」
「お、おう……」
まったく、獣人族は、リルカの言う通り性欲が強すぎるだけでなく、性交渉に関しての心構えがストレートすぎるな。
まぁ、別にいいが!
食堂で軽く食事を摂ったあとは、俺は王城の門へと向かう。
門前には、獣人族が4人警備あたっている。
「コローナ」
「ワンッ!?」
「驚いた演技をするのはやめておけ。それよりも王城と王宮内の警備はどうなっている?」
「わうーっ。やっぱりご主人様には、全部、バレてしまっているわんっ」
「当たり前だ。一瞬、俺の方へと視線を向けてきただろ? そのくらいは、俺にも分かる」
何せ王城から出た際に、城門近くが見えた時に、コローナの姿が見えたと同時に、この子は俺の方を見てきたのだから。
近い距離なら分からなかったかも知れないが――、さすがに王城から城門までの50メートルほどの距離があるのだから、視線の誘導くらいは分かる。
「さすが、ご主人様ですワン」
「――で、何か変わった事とかはなかったか?」
「何人か、闇夜に紛れて侵入してきようとしたのは確認したワン」
やっぱり、闇ギルドが動いたか。
「――で、そいつらは? 捕縛したのか?」
「私らの姿を見た途端、壁を超えることもせずに踵を返して去っていったワン!」
「なるほど……」
それは、厄介だな……。
俺は思わず頭を抱えそうになる。
つまり、王城内の警備をしているのを獣人族だと断定した時点で撤退を選んだという事は、情報収集は、それで十分だと闇ギルドは考えたと思った方がいい。
獣人族は、五感や身体能力のソレは人間よりも遥かに優れている。
だからこそ、闇ギルドは必要最低限の情報収集だけに止めたと考えるのが正しいだろう。
そして、そこから導き出される答えは――、
「早い内に仕掛けてくるか……」
「敵が攻めてくるワン?」
「その可能性は非常に高いな」
一般の兵士どころか近衛騎士団から普段は普通に働いている使用人まで不在の王城や王宮なんて犯罪者からしてみれば、目先に吊るされたニンジンのように見えるはずだ。
「どうするワン?」
「もし攻めてくるようなら殲滅だな。禍根を残さないように――」
途中まで言いかけたところで、俺は口を閉じる。
そして思考する。
闇ギルドは、こちらの戦力が少ないと考えたのなら、貴族連中から徴兵が始まる前に攻めてくるだろう。
――いや、間違いなく攻めてくる。
「ソルティ」
「はい。マスター」
俺の言葉と同時に、何もない空間から白い粉――、塩を撒き散らしながらソルティは出現すると、静かに石畳の上に降り立つと、顔を上げてくる。
「闇ギルドの件ですね?」
「ああ。何とかできるか?」
「それは殲滅してもいいという事でしょうか?」
「ああ。殲滅しろ。一人残らずな」
王城を攻められれば警備が薄くなる部分が必ず出てくる。
それなら先制攻撃を仕掛けて相手の武力を封殺した方がいいだろう。
そもそも本当に戦闘になれば、誰かしら傷を負うかも知れない。
俺が奴隷として購入した獣人族の彼女らはもともとは戦闘奴隷ではないのだから。
あくまでも身体能力の高さから――、人間と比べてフィジカル面の高さから相手を抑え込む役割だ。
ならば、相手が殺す為に仕掛けてきたら――。
「それは、メディデータの皆殺しという命令でいいのでしょうか?」
「ああ」
「そうですか。身内が傷つくのは困りますものね」
「そう……だな……」
どうやら、ソルティは俺の考えを見通しにようだ。
その上で確認してくる。
――確認してきた。
本当に、邪魔者を殺してもいいのか? と――。
本当に、それに対する罪悪感はないのか? と。
罪悪感はある。
人殺しを命ずるのだ。
そこに罪の意識がないと言ったら、それこそ嘘だ。
だが、俺は自身の身内が傷つくくらいなら、敢えて関わりのない第三者である悪意を持って接してくる暴漢を殺す。
それが身内の安全を守るためなら、選択する上で迷う必要すらない。
「マスター?」
「ソルティ。命令だ。王都の闇ギルドに所属している連中と関係者、家族含めて全て殲滅しろ」
「了解しました。マイマスター」
ソルティの姿が大気に溶け込むようにして消える。
「ご主人様」
「どうした? コローナ」
「よかったのですかワン? 本当に皆殺しにして……」
「ああ。それが王家からの俺への依頼だからな」
この世界は、殺そうとしてくる相手に対して情をかけることが出来るほど余裕のある世界ではない。
狙ってきたのなら――、殺そうとしてくるのなら、殺すという選択肢が必要になる世界なのだ。
不平不満な表情を見せるマキリ。
「あの、ご主人様。今日の夜とかは――」
「しばらくは、警備の仕事に集中してくれ」
「はーい」
スープの味見をし終わったあと、熊人族のマキリが身長180センチ近くの巨体でがっかりしながら答えてきた。
「まぁ、あれだ……」
その様子に少しだけ居心地が悪いと思った俺は、「まぁ、今回の王城と王宮の警備の仕事が終わったらな」と、言葉を返すと、黒髪のポニテ―ルを揺らし俺の方を眩いばかりの瞳で見てくる。
「それでは、ご主人様! 期待していますね!」
「お、おう……」
まったく、獣人族は、リルカの言う通り性欲が強すぎるだけでなく、性交渉に関しての心構えがストレートすぎるな。
まぁ、別にいいが!
食堂で軽く食事を摂ったあとは、俺は王城の門へと向かう。
門前には、獣人族が4人警備あたっている。
「コローナ」
「ワンッ!?」
「驚いた演技をするのはやめておけ。それよりも王城と王宮内の警備はどうなっている?」
「わうーっ。やっぱりご主人様には、全部、バレてしまっているわんっ」
「当たり前だ。一瞬、俺の方へと視線を向けてきただろ? そのくらいは、俺にも分かる」
何せ王城から出た際に、城門近くが見えた時に、コローナの姿が見えたと同時に、この子は俺の方を見てきたのだから。
近い距離なら分からなかったかも知れないが――、さすがに王城から城門までの50メートルほどの距離があるのだから、視線の誘導くらいは分かる。
「さすが、ご主人様ですワン」
「――で、何か変わった事とかはなかったか?」
「何人か、闇夜に紛れて侵入してきようとしたのは確認したワン」
やっぱり、闇ギルドが動いたか。
「――で、そいつらは? 捕縛したのか?」
「私らの姿を見た途端、壁を超えることもせずに踵を返して去っていったワン!」
「なるほど……」
それは、厄介だな……。
俺は思わず頭を抱えそうになる。
つまり、王城内の警備をしているのを獣人族だと断定した時点で撤退を選んだという事は、情報収集は、それで十分だと闇ギルドは考えたと思った方がいい。
獣人族は、五感や身体能力のソレは人間よりも遥かに優れている。
だからこそ、闇ギルドは必要最低限の情報収集だけに止めたと考えるのが正しいだろう。
そして、そこから導き出される答えは――、
「早い内に仕掛けてくるか……」
「敵が攻めてくるワン?」
「その可能性は非常に高いな」
一般の兵士どころか近衛騎士団から普段は普通に働いている使用人まで不在の王城や王宮なんて犯罪者からしてみれば、目先に吊るされたニンジンのように見えるはずだ。
「どうするワン?」
「もし攻めてくるようなら殲滅だな。禍根を残さないように――」
途中まで言いかけたところで、俺は口を閉じる。
そして思考する。
闇ギルドは、こちらの戦力が少ないと考えたのなら、貴族連中から徴兵が始まる前に攻めてくるだろう。
――いや、間違いなく攻めてくる。
「ソルティ」
「はい。マスター」
俺の言葉と同時に、何もない空間から白い粉――、塩を撒き散らしながらソルティは出現すると、静かに石畳の上に降り立つと、顔を上げてくる。
「闇ギルドの件ですね?」
「ああ。何とかできるか?」
「それは殲滅してもいいという事でしょうか?」
「ああ。殲滅しろ。一人残らずな」
王城を攻められれば警備が薄くなる部分が必ず出てくる。
それなら先制攻撃を仕掛けて相手の武力を封殺した方がいいだろう。
そもそも本当に戦闘になれば、誰かしら傷を負うかも知れない。
俺が奴隷として購入した獣人族の彼女らはもともとは戦闘奴隷ではないのだから。
あくまでも身体能力の高さから――、人間と比べてフィジカル面の高さから相手を抑え込む役割だ。
ならば、相手が殺す為に仕掛けてきたら――。
「それは、メディデータの皆殺しという命令でいいのでしょうか?」
「ああ」
「そうですか。身内が傷つくのは困りますものね」
「そう……だな……」
どうやら、ソルティは俺の考えを見通しにようだ。
その上で確認してくる。
――確認してきた。
本当に、邪魔者を殺してもいいのか? と――。
本当に、それに対する罪悪感はないのか? と。
罪悪感はある。
人殺しを命ずるのだ。
そこに罪の意識がないと言ったら、それこそ嘘だ。
だが、俺は自身の身内が傷つくくらいなら、敢えて関わりのない第三者である悪意を持って接してくる暴漢を殺す。
それが身内の安全を守るためなら、選択する上で迷う必要すらない。
「マスター?」
「ソルティ。命令だ。王都の闇ギルドに所属している連中と関係者、家族含めて全て殲滅しろ」
「了解しました。マイマスター」
ソルティの姿が大気に溶け込むようにして消える。
「ご主人様」
「どうした? コローナ」
「よかったのですかワン? 本当に皆殺しにして……」
「ああ。それが王家からの俺への依頼だからな」
この世界は、殺そうとしてくる相手に対して情をかけることが出来るほど余裕のある世界ではない。
狙ってきたのなら――、殺そうとしてくるのなら、殺すという選択肢が必要になる世界なのだ。
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