おっさんの異世界建国記

なつめ猫

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第四章 超古代文明遺跡編

第182話 昨晩はお愉しみでしたね

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「きのせいだ」
「きのせいじゃないだろ?」
「だから、きのせいだ」
 
 ギロリと殺気を含んだ目でロランを睨みつける。
 おそらく、寝不足で充血しているだろう。
 
「――お、おう……」
 
 ロランが、そこでようやく引き下がる。
 俺は、調理してきた料理をテーブルの上に並べたあと食器を洗う。
 
「大丈夫か? エイジ殿」
 
 俺が、食器を洗っていると、黙って寝所から起きてきた国王陛下が食事をしながら俺に話しかけてきた。
 それにしても、自身の子供や家来が軒並み魔物に殺されたというのに、ずいぶんとたくましい老人だ。
 まるで衰えを感じない。
 まぁ、数日前までは毒で死の一歩手前だったが……。
 
「大丈夫です。それよりも国王陛下、自分の部下が昨日の夜から王宮と王城の警備をするようになりましたので、そのことだけを報告しておきます」
「うむ。大儀であった。それと城下の方はどうなっておる? 外からの物流は滞りなく行えておるか?」
「はい。勅命書により、冒険者ギルドの副マスターが信頼のおける末端冒険者に仕事を振り、外から商人より製品を購入の上、市井に流す形を取るようです」
「ふむ。それならば、地方からの信における貴族から応援が到着するまで持つかのう」
「持てばいいのですが……」
「何か問題でも?」
「闇ギルドが王城を狙っているようです」
「なるほどのう……。たしかに、あれら犯罪組織であるのなら、何か独自の情報源もあるであろうし、こちらの警備状況を調べ上げて攻めることが可能だと考えたのなら攻めてくる可能性はあるのう。何しろ、王都内の法衣貴族は腰抜けしかおらぬからのう。むしろ法衣貴族が加担して攻めてくると仮定してもよいのかも知れん」
「たしかに、それはありそうですね」
 
 王都の人間が広場で殺されそうになっても一切動かなかった保身を第一に考えた法衣貴族ならば、すでに自分達が王城に呼び出されていない時点で、その地位が揺らいでいる事くらいは、少し考えれば分かるはずだ。
 そうなると法衣貴族と闇ギルドが手を結んで攻めてくることも十分考えられる。
 
「――で、エイジ殿としては、もし闇ギルドが攻めてきたとしたら、対処はできるのか?」
「まぁ、そうですね。何とかなると思います」
 
 この世界の真理をある程度、ソルティから説明を受けてからと言うモノ、魔法ではなく科学という事で、俺の生活魔法は構成が組まれている。
 そして科学ならば、頭の中で想像するだけでノータイムでノーラグで、脳裏で思い描いた通り魔法という科学現象を再現することが出来る。
 その威力は、想像を絶していて、地球の科学文明を有している俺からしたら数千・数万の大軍が攻めてきてもまとめて殲滅できるだけの科学魔法を発動させる事も出来るだろう。
 ただ、その場合は、広範囲の威力すぎて町中では使うことは出来ないが。
 
「そうか……。――ならば、余はしばらく忙しくなるまでは、このままの喰っちゃ寝の生活を続けるとするかのう」
「書類作業も上がってきませんからね」
「うむ。その点はエイジ殿に感謝しておる。――ロラン、お主も適度に休むがよいぞ」
「分かっています」
 
 ロランも席に座って、俺が調理してきた料理を黙々と食べつつ、国王陛下からの言葉に返事を返した。
 
 
 
 国王陛下の寝所を後にした俺は、欠伸をしながらカートを押しつつ王宮内を歩く。
 
「ご主人様! おはようございます!」
 
 すると、王宮内の見回りをしていた獣人族――、うさ耳族の女性が嬉しそうな表情で近づいてくると、俺の周りをクルクルと回る。
 
「フィーア! ご主人様に失礼ですよ!」
 
「えー! ご主人様からいい匂いがしたからなのに……。ミティエダは、酷いのお」
「昨日は、ディアナの番だったでしょう? 私たちの番は、まだ先です」
「むー、ご主人様っ! いつでも必要だったら呼んでほしいの!」
「そ、そうか……」
 
 そこで、何が必要なんだ? と! 聞くほど、俺は初心でもない。
 兎耳族は基本的に年中発情している。
 そして彼女たちは、山猫族以上に男女の情事には積極的だ。
 
「ほら! フィーア。行きますよ! こんなところで、油を売っていたら、ソルティに怒られてしまうわ」
「しかたないの……。ご主人様っ! また今度ねー」
「お、おう」
 
 同じ兎耳族のミティエダに襟を掴まれてずるずると連れていかれるフィーアが手を振ってきたので、俺も思わず釣られて手を振った。
 食堂に到着すると、獣人族の熊人族が料理を作っていた。
 
「ご主人様? もう、起きられたのですか?」
「まあな。それよりもマキリ、お前も料理を作っているのか?」
「はい。獣人族分の料理を作るようにコローナに命令されましたから」
「そうか。あと2週間近く王城と王宮を警備する形になるから、お前たちには無理を言ってすまないが頑張ってくれ」
「分かりました」
 
 マキリは、黒い熊耳をピコピコと動かしながら、鍋の中身をお玉で掬うと味を確認したあと、俺へと吊り上がった赤い瞳を向けてくる。
 
「そう言えば、ご主人様」
「どうかしたか?」
「ディアナとはお楽しみでしたか?」
「そういうのは良いから――」
 
 俺は思わずため息が出た。
 
 
 
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