おっさんの異世界建国記

なつめ猫

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第四章 超古代文明遺跡編

第175話 手のひらクルクルー

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「分かったならいい。ラウリ、お前は表の住人と、裏に近い人間だけを相手に情報操作をしてくれればいい」
「了解した」
 
 屋根上を、身体強化したまま走りながら近況を報告し終えたあと、俺はラウリを屋根の上へと下ろす。
 
「――んじゃ、この後、俺は王都を守る城壁の詰め所に用事があるから、ここで一端分かれるぞ」
「ちょっと待て! エイジ!」
「なんだよ? まだ何かあるのか?」
「私を、こんなところに置いていくつもりなのか?」
「こんなところって……、お前も一応はエルフだろ?」
「一応ってなんだ! 一応って! あまりにも俗世に染まっているからな。エルフなのか? と、疑心暗鬼になったところだ」
 
 俺は肩を竦めながらラウリの怒った顔を見ながら答える。
 
「まったく――。これだから……」
「何か言ったか?」
「何でもない! それよりも、エイジ」
「ん?」
「詰め所には何のために行くのだ?」
「ああ。仲間を呼んでいるんだが、王都の入れずに立ち往生しているんだ」
「そういえば、一週間前から外部と連絡が取れないと連絡があったな」
「そうか」
「――と、いうことは詰め所を何とかする方法を思いついたということか?」
「そうなる」
「なるほど……。それなら貧民街の人間を王都に入れることもできそうだな」
「そういうのはあとでやってくれ。王都内で何か問題が起きたら、それこそ大問題になるからな」
「わかっているから」
「本当に分かっているのか?」
「当たり前。報酬を約束されているから」
「それは良かった。貧民街から人を呼ぶのは少なくとも全てが終わってからにしてくれ」
「分かっている」
 
 利害関係が一致している間は、俺を裏切るような真似はしないだろう。
 そう割り切ったあと、俺は詰め所へと向かうために屋根上にラウリを置いて移動する。
 詰め所が近づいてきたところで、俺は屋根上から飛び降りる。
 もちろん着地場所は裏路地。
 
「誰だ?」
 
 詰め所へと近づけは兵士が威嚇するような声で叫んでくる。
 身長は2メートル近くあり、ガッシリとした筋肉も相まって、その迫力は暑苦しいほどだ。
 青銅製の鎧を着込んでいる男は、俺を睨みつけてくる。
 
「俺は――」
「近づくな! 名前を言え!」
 
 疑心暗鬼に駆られているのか、近づくことができない。
 
「分かった、わかった」
 
 俺は、懐から国王より預かった勅命書を取り出すと兵士に向かって放り投げる。
 勅命書は、兵士の足元へと落ちる。
 兵士はチラリと落ちた勅命書へと視線を向けたあと、「確認する。離れろ」と、命令してくる。
 
「あいよ」
 
 まったく、疑い深いと言ったらありゃしない。
 別に、自惚れている訳ではなかったが英雄と言われていた割には、顔を知られていない事に少しゲンナリとしつつ、距離を取る。
 十分、距離を取ったところで兵士が、勅命書を手にすると封蝋を開封し勅命書の中身を読み進めていく。
 男の目が上下に動くたびに、その顔色が悪くなっていく。
 
「あ、貴方様は……もしかして……、いま話題の国を救った英雄ですか?」
「一応、そうは呼ばれている」
「そ、そうですか……」
 
 だらだらと汗を流している。
 
「あ、あの……、いまのことは……陛下には……」
「報告するが?」
 
 何を言っているんだ? と、言う意味合いも込めて俺は事実だけを告げる。
 
「……ぐへへへ。エイジ様っ! エイジ様っ! 何でも言う事を聞きますので! どうか! どうか! お目こぼしをお願いしますぜ! 旦那っ!」
 
 いきなりの小物っぷりを披露する兵士に俺は腰に両手をつきながらため息をつく。
 さっきまでの威厳というか威圧感たっぷりな兵士の姿はどこへやら――。
 
「それじゃ、さっさと俺の仲間を王都内に入れてもらってもいいか?」
「もちろんですぜ! 旦那! だから、陛下からの勅命書を持ってきたエイジ様に対するご無礼については――」
「ああ。分かっている。お前も、俺が王都内に仲間を引き入れたことについては一切口外するなよ? もし漏らせばどうなるか分かっているだろうな?」
「もちろんです! ――で、エイジ様のお仲間とやらは」
「そうだな。たぶん王都に入るために並んでいると思うが……」
「――では、こちらへきてください」
 
 兵士が低姿勢で頭を下げると歩き出す。
 追っていくと詰め所と思わしき建物の中へ案内される。
 建物は石材で作られていて、高さは15メートルほど。
 王都を囲っている壁よりも高い建物の3階部分まで案内される。
3階の部屋に入れば、室内には木製のテーブルと椅子だけが置かれている。
 
「ここは?」
「この部屋は、王都を取り囲んでいる壁の外を王都の中から見通せる櫓を兼ねているんですよ」
「ほう。だが、ここよりも城壁の上から見下ろした方がいいんじゃないのか?」
「それはそうなんですけどね……」
 
 含みのあるような物言いに、俺は眉を顰めるが――、
 
「言いたいことはそれだけか?」
「いやいや旦那。まずは、こちらへきてください」
 
 兵士が扉を開ければ、そこはテラスへと通じている。
 
「テラスから城壁上に行くことが出来るのか……」
 
 城壁上へと移動したあと、兵士が見ている中で城壁から王都の外側を見下ろす。
 
 
 
 
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