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第四章 超古代文明遺跡編
第168話 王城と王宮警備(1)
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「2週間ですか……」
「難しいか?」
国王陛下が恐る恐る確認するかのように話かけてくる。
「いえ。ですが――、自分一人では、広い王城と王宮の警備は無理です。特に警備だと精神をすり減らしますので、交代制ではないと――」
「ふむ……。それはそうか……」
「ですので、冒険者ギルドから信頼のおける人間を何人か登用するか、もしくは王都内にいる領地を持たない法衣貴族から秘密裏に人数をかき集めた方が良いかと思います」
「それはそうだが……」
「何か問題でも?」
「王都で起きた問題で、我が身可愛さに民が処刑される場面があったにも関わらず貴族の矜持を忘れ成り行きに身を任せていた連中に王宮や王城内の警備が務まるとは到底思えぬのだ。それならば、エイジ殿、汝が信頼におけると思ったものを招集して警備をしてもらう事は可能かの?」
国王陛下の、その提案に俺は考え込む。
俺が信頼できる人間は、王都内にはロランとアマネくらいだろう。
ラウリに関しては、民の情報操作を任せているから動けないし、スーニャに至っては戦闘要員でもない。
そうなると、ここからだと俺が開拓中の村から獣人族を招集するのが早い。
幸い、獣人族への伝達はソルティを使えばノータイムで出来るから、すぐに出立することは可能だろう。
問題は、到着までにどれだけの日程がかかるか分からない点だが――。
「ソルティ、いるか?」
俺は呟く。
おそらく聞いているであろうと思ったからだが――、俺の予想は的中していたようで、天井から塩の粉を舞い散らしながら、ソルティは顕現すると、赤い絨毯の上にフワリと音もなく降り立つ。
「マスター。どうかしましたか?」
「ソルティ、獣人族を王城と王宮の警備につけようと思うんだが、どのくらいで到着するか計算できるか?」
「それでしたら、獣人能力なら3日もあれば到着できると思います。私のサポートがあればですが……」
「そんなに早くつくのか?」
「はい、マスター。獣人族は魔力を使えない代わりに身体能力はメディデータの数倍はあります」
「なるほど。国王陛下」
「わかっておる。獣人族に王宮と王城の警備を任せたいという事だな?」
「そうなります」
「分かった。それでは大至急頼む」
「ソルティ。すぐに手配を」
「了解しました。マスター」
ソルティが目の前から、塩の粉だけを残して消える。
これで、とりあえず2週間の警備の目途は立ったわけだが、3日間は頑張って今ある手駒だけで警備しないといけないのか。
3日間は、寝ずの番になりそうだな。
「――それでは、国王陛下。自分は城の警備に向かいます。何かあれば、また来ます」
「うむ。任せたぞ」
陛下に一度、頭を下げたあと俺はカーテンを超えて、扉の方へと向かう。
もちろん俺に気が付いたロランが近づいてくる。
「どうだった? エイジ」
「とりあえず城の警備を任された」
「すまないな」
「気にするな。国王陛下に何かあれば俺たちの正当性が揺らぐからな。ロランの仕事は大事だから絶対にヘマをするなよ?」
「分かっている。それよりも、かなりの期間、城と王宮を警備しないといけないんじゃないのか?」
やはりロランも、すぐに地方の貴族が来られないことを察しているのか心配そうな声で訪ねてくる。
「まぁ、そのへんは獣人族とも縁があるから、獣人族を招集して時間を稼ぐことになった。ロランは結界の維持だけを最優先に動いてくれ」
「任せておけ」
「じゃ、結界を解いてもらえるか? 俺は、外で城に誰も入ってこないように警備しないといけないからな」
「分かった。――あっ! それよりもエイジ」
「どうした?」
「水出せたよな? 生活魔法で」
「ああ」
俺は頷く。
ロランは顔をパアッと明るくすると、ワインが入っていたであろう酒樽を俺の目の前に置く。
酒樽は大きく200リットル前後入るモノ。
その酒樽は今では空になっている。
「ここに水を入れてもらえるか? ずっと酒ばかりでちょっとな……」
「あーなるほど……」
たしかに異世界の文明レベルでは水道なんて引いてないからな。
保存のきくワインや酒で何とかしてきたのだろう。
俺は酒樽に手を翳すと、『生活魔法:水生成』を行い酒樽が水で満タンになるまで水を入れてからロランを見る。
「こんなものいいか?」
「ああ。十分だ。それよりも、エイジ」
「どうした?」
「以前よりも生活魔法の威力上がってないか? やっぱり女神の傍にいる影響なのか?」
「さあ? それは、どうだろうな」
ソルティの説明によれば、ソルティと俺が邂逅したことで、俺のことを、この世界アガルタで唯一存在している人間として世界が認識した時点で、世界中に散らばっているナノマシンが無制限に俺に力を貸してくれているらしいが、それを説明する必要はないだろう。
それに俺の大きなというか唯一のアドバンテージだしな。
「そうか。すまなかったな。足止めをしてしまって」
「気にするな。一日に一回は、様子を見にくるから何かあったら、その時に言ってくれ」
「ああ。それじゃ、明日の朝には保存庫から何か食べ物を持ってきてくれ」
「分かった」
まぁ、人間は食べないと死ぬからな。
それは、この世界の人間も俺も変らない。
「難しいか?」
国王陛下が恐る恐る確認するかのように話かけてくる。
「いえ。ですが――、自分一人では、広い王城と王宮の警備は無理です。特に警備だと精神をすり減らしますので、交代制ではないと――」
「ふむ……。それはそうか……」
「ですので、冒険者ギルドから信頼のおける人間を何人か登用するか、もしくは王都内にいる領地を持たない法衣貴族から秘密裏に人数をかき集めた方が良いかと思います」
「それはそうだが……」
「何か問題でも?」
「王都で起きた問題で、我が身可愛さに民が処刑される場面があったにも関わらず貴族の矜持を忘れ成り行きに身を任せていた連中に王宮や王城内の警備が務まるとは到底思えぬのだ。それならば、エイジ殿、汝が信頼におけると思ったものを招集して警備をしてもらう事は可能かの?」
国王陛下の、その提案に俺は考え込む。
俺が信頼できる人間は、王都内にはロランとアマネくらいだろう。
ラウリに関しては、民の情報操作を任せているから動けないし、スーニャに至っては戦闘要員でもない。
そうなると、ここからだと俺が開拓中の村から獣人族を招集するのが早い。
幸い、獣人族への伝達はソルティを使えばノータイムで出来るから、すぐに出立することは可能だろう。
問題は、到着までにどれだけの日程がかかるか分からない点だが――。
「ソルティ、いるか?」
俺は呟く。
おそらく聞いているであろうと思ったからだが――、俺の予想は的中していたようで、天井から塩の粉を舞い散らしながら、ソルティは顕現すると、赤い絨毯の上にフワリと音もなく降り立つ。
「マスター。どうかしましたか?」
「ソルティ、獣人族を王城と王宮の警備につけようと思うんだが、どのくらいで到着するか計算できるか?」
「それでしたら、獣人能力なら3日もあれば到着できると思います。私のサポートがあればですが……」
「そんなに早くつくのか?」
「はい、マスター。獣人族は魔力を使えない代わりに身体能力はメディデータの数倍はあります」
「なるほど。国王陛下」
「わかっておる。獣人族に王宮と王城の警備を任せたいという事だな?」
「そうなります」
「分かった。それでは大至急頼む」
「ソルティ。すぐに手配を」
「了解しました。マスター」
ソルティが目の前から、塩の粉だけを残して消える。
これで、とりあえず2週間の警備の目途は立ったわけだが、3日間は頑張って今ある手駒だけで警備しないといけないのか。
3日間は、寝ずの番になりそうだな。
「――それでは、国王陛下。自分は城の警備に向かいます。何かあれば、また来ます」
「うむ。任せたぞ」
陛下に一度、頭を下げたあと俺はカーテンを超えて、扉の方へと向かう。
もちろん俺に気が付いたロランが近づいてくる。
「どうだった? エイジ」
「とりあえず城の警備を任された」
「すまないな」
「気にするな。国王陛下に何かあれば俺たちの正当性が揺らぐからな。ロランの仕事は大事だから絶対にヘマをするなよ?」
「分かっている。それよりも、かなりの期間、城と王宮を警備しないといけないんじゃないのか?」
やはりロランも、すぐに地方の貴族が来られないことを察しているのか心配そうな声で訪ねてくる。
「まぁ、そのへんは獣人族とも縁があるから、獣人族を招集して時間を稼ぐことになった。ロランは結界の維持だけを最優先に動いてくれ」
「任せておけ」
「じゃ、結界を解いてもらえるか? 俺は、外で城に誰も入ってこないように警備しないといけないからな」
「分かった。――あっ! それよりもエイジ」
「どうした?」
「水出せたよな? 生活魔法で」
「ああ」
俺は頷く。
ロランは顔をパアッと明るくすると、ワインが入っていたであろう酒樽を俺の目の前に置く。
酒樽は大きく200リットル前後入るモノ。
その酒樽は今では空になっている。
「ここに水を入れてもらえるか? ずっと酒ばかりでちょっとな……」
「あーなるほど……」
たしかに異世界の文明レベルでは水道なんて引いてないからな。
保存のきくワインや酒で何とかしてきたのだろう。
俺は酒樽に手を翳すと、『生活魔法:水生成』を行い酒樽が水で満タンになるまで水を入れてからロランを見る。
「こんなものいいか?」
「ああ。十分だ。それよりも、エイジ」
「どうした?」
「以前よりも生活魔法の威力上がってないか? やっぱり女神の傍にいる影響なのか?」
「さあ? それは、どうだろうな」
ソルティの説明によれば、ソルティと俺が邂逅したことで、俺のことを、この世界アガルタで唯一存在している人間として世界が認識した時点で、世界中に散らばっているナノマシンが無制限に俺に力を貸してくれているらしいが、それを説明する必要はないだろう。
それに俺の大きなというか唯一のアドバンテージだしな。
「そうか。すまなかったな。足止めをしてしまって」
「気にするな。一日に一回は、様子を見にくるから何かあったら、その時に言ってくれ」
「ああ。それじゃ、明日の朝には保存庫から何か食べ物を持ってきてくれ」
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まぁ、人間は食べないと死ぬからな。
それは、この世界の人間も俺も変らない。
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