おっさんの異世界建国記

なつめ猫

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第四章 超古代文明遺跡編

第166話 誤解(2)

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「兵士ね……」
 
 俺は、両手を上げ降参するポーズを取りながら相槌を打つ。
 
「アマネ、お前は王都の人間を処刑しようとした兵士たちの話を信じるというのか?」
「何を言いたいの?」
「話は聞いていたんだろ? 俺とツヨマルとの会話を。だったら王城で起きたことも知っているんだろう? それなら、俺が兵士から恨まれていると言う事くらいは、容易に想像がつくはずだが?」
「……」
 
 無言になるアマネを見て、俺は彼女が兵士から流れてきた情報の信憑性に疑いを持ったことを確信しつつ話しかけることにする。
 
「そもそも、俺がガルガンと戦う理由がどこにある?」
「それは……。貴方が、冒険者ギルドマスターになるために……」
「冗談だろう? 俺に、そんな器がないことくらいは少し考えれば分かることだろう?」
「だからこそ、貴方はガルガンを――」
「話にならないな。よく考えてみろ。俺が冒険者ギルドマスターなんてメンドクサイ役職を態々、欲すると思うか?」
「……それは……」
「お前は、俺がガルガンに冒険者として鍛えられていた時からの同期であるし、何よりも同じパーティを組んでいたメンバーの一人だ。俺が、そんな役職に拘るような人間だと思うか? 正直、お前が冒険者ギルドマスターになりたいのなら、代わってやってもいいくらいだ」
「――なっ!?」
「俺は国王陛下に王城を――、王宮を――、王族を魔物から救った英雄で国民が暴動を起こさないようにと依頼を受けて冒険者ギルドマスターを引き受けたに過ぎない。冒険者ギルドマスターであるガルガンが死んだのだから、その後釜になれるのは、それなりのカリスマとか実績が必要になるからな」
 
 まぁ、俺にカリスマがあるのかどうかと聞かれれば微妙なラインではあるが。
 
「正直、俺がガルガンと一緒に行動していたというのは嘘ではない。俺は、この国の市政が悪い方向へとシフトした時にガルガンから依頼を受けていたからな。そして、ここの宿舎の一室をガルガンに提供されていた」
「まさか……、宿舎を利用していたのって……明りが見えていたのって……」
 
 そこはアマネも知っていたのか。
 まぁ、冒険者ギルドの裏手にある建物だからな。
 ちょっと目端の利くやつなら気が付いて当然というところか。
 
「ああ。俺が暮らしていた。寝床としてな――。それなのに俺がガルガンと戦う理由があると思うか?」
「……」
 
 無言のまま、俺に向けていた貫き手を下すアマネに俺はホッと心の中で胸を撫でおろす。
 
「それじゃ、本当にガルガンは……」
「ああ。魔物に――、サキュバスに殺された」
「そう。――でも、一つ疑問に思うことがあるわ」
「何だ?」
「Sランク冒険者でもあるガルガンが殺された戦場で、貴方はどうやって生き残ったというの?」
「運が良かっただけだな」
「それは嘘ね。さっきの動きを見ていただけで、貴方の実力はA+ランク以上の実力だというのは分かったもの」
「――なら、それでいいんじゃないのか?」
「…………そう。言いたくないのならいいわ」
 
 アマネは深く溜息をつくと殺気を収めると俺の横を通り過ぎていく。
 
「貴方が何を隠しているのかは知らない。――でも、それはガルガンの名誉を守るための事だと私は信じているわ。もし、そうじゃないのなら――」
「ああ。分かっているさ」
 
 だが、ガルガンがサキュバスに操られていたから戦ったということを話せる時なんてものは一生来ない。
 
「そう……。ごめんなさいね。久しぶりの再会だったのに、手荒な歓迎になってしまって」
「別にいいさ。気にしていない」
「……そう。その辺は相変わらずなのね」
 
 アマネは、階段を下りていく。
 彼女を見送ったあと、俺は遅れて宿舎を出て、冒険者ギルドで起きた出来事を報告するために王城へと向かう為に歩きだすが――、
 
「随分と暗いと思っていたら、もう夕方か……」
 
 随分と、冒険者ギルドで長い間、話をしていたものだ。
 
「ご主人様」
 
 少しだけ感傷に浸っていると、屋根の上からディアナが飛び降りてくる。
 
「無事だったか?」
「はいですにゃん! それよりも、宿舎で、ご主人様に手を出した雌がいましたけど、放置しておいて問題ないですにゃん?」
「問題ない。元、パーティメンバーのやつだからな」
「そうですかにゃん。それとご主人様、一つ、気になったことがあったですにゃん」
「気になったこと?」
「はいですにゃん!」
「それは、冒険者ギルドに関してのことか?」
 
 俺の問いかけにディアナは頭を左右にふる。
 
「ご主人様が王城に入っていったあと、王城のかなり上空で浮遊している人影がありましたにゃん」
「人影? もしかしてサキュバスか?」
 
 リムルは殺したはずだが……、まさか逃げたとか?
 
「違いますにゃん。遠くて表情までは伺いしることはできませんでしたけど……、老人でしたにゃん。あとは、たぶんですけど……」
「あとは?」
「感じた気配からして、たぶん竜も一緒にいましたにゃん。青年の姿はしていましたけど、たぶん竜ですにゃん。それが南の方へと飛んでいきましたにゃん」
「ふむ……」
 
 ドラゴンと老人か……。
 今回の王城襲撃に関して何か関係でもあるのか?
 
 
 
 
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