おっさんの異世界建国記

なつめ猫

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第三章 王都暗躍編

第148話 VS 淫魔王リムル(2)

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「まさか、私の手で直接! 貴方を殺せるとは思っても見なかったわ! 人間に殺させるつもりだったのに……、本当に誤算続きね」
 
 日本刀を抜き放った俺に向けてリムルは玉座から立ち上がり空中を浮遊すると両手を広げ、荘厳に言葉を発する。
 それと同時に、謁見の間には無数の気配が生まれる。
 
「――チッ!」
 
 身体強化を行った上で、俺はリムルから後方へと跳躍する。
 それと同時に、俺が立っていた場所が、火弾――、ファイアーボールの直撃により炎上する。
 
「一対一じゃなかったのか?」
 
 周囲に突然、出現した100を超えるサキュバスの大軍。
 そのどれもが、魔法陣を空中に展開し終えている。
 
「そんな事は言ってないわ。それに、貴方の事は、確実に殺すと決めているもの。淫魔王サキュバスロードの力をも受け付けない魔法抵抗力。それは、普通はありえないもの。だから! 貴方は、ここで殺すわ!」
「よく言う」
 
 謁見の間に浮かぶ無数のサキュバスからの魔法攻撃を避けながら俺は言葉を返す。
 
「話している余裕はあるのかしら?」
 
 数匹のサキュバスに囲まれながら、安全圏から俺に語り掛けてくるリムルへと視線を向けた途端、俺は吹き飛ばされる。
 
「ぐっ――」
 
 思わず声が漏れる。
 俺が認識できない魔法――、おそらく風の魔法の一つだろう。
 床の上を転がりながら、俺は空中を飛んでいるサキュバスたちへと視線を向けると、数十のサキュバスたちが土の槍を作り、射出してくる。
 
「くっ――」
 
 生活魔法で土壁を作り固定化の魔法で防御力をあげようとしても、それだけの時間はない。
 大理石の床の上を転がりながら飛んでくる槍を躱し続ける。
 そして壁まで追い詰められ――、
 
「多勢に無勢なのよね。一人で乗り込んできた事を後悔するといいわ! エイジ!」
 
 無数の――、謁見の間を埋め尽くしていたサキュバスたちが一斉に空中に魔法陣を展開し、魔法を発動させる。
 
 ――否! 発動させようとしたところでリムル以外のサキュバスが唐突に青い肌から白い肌へと色が反転したかと思うと、床の上に次々と落ちては砕けていく。
 
「――なっ! 何が起きたの!?」
 
 リムルは、何が起きたのか分かっていない。
 もちろん、俺だけは何となく理解できた。
 こんなことが出来る奴を俺は一人しか知らない。
 
「こ、こんなことが! こんな事があって言いわけが!」
 
 そうリムルが叫ぶと同時に、謁見の間の天井が爆散し砕けると同時に、大理石は全て塩の粉と化して謁見の間の大理石の床の上へと振り落ちる。
 
「――な、何が!?」
 
 上を――、爆散し空が直視できるようになった天井を見るリムルに俺。
 
「遅かったな? ソルティ」
「マスター。申し訳ありません。思ったよりも時間が掛かってしまいました」
 
 大きく穴が開いた大理石の天井から、静かに床の上へと降り立ったソルティは、頭を垂れると、すぐに身を正しリムルの方へと視線を向けた。
 
「あれは……」
「あれが今回の俺の暗殺を企てた奴だ」
「そうですか……」
「――あ、貴女! ――い、一体! 何者なのよ! 何をしたのよ! 私の――、私の配下を! どうやって!」
「マスター。ここは私に任せてもらっても?」
「――いや。コイツは、俺が倒す」
 
 ガルガンの仇だ。
 誰かに、その仇を任せるなんて俺は納得できない。
 冒険者としてのノウハウを教えてくれたガルガンの為にも――、そして俺自身の為にも、目の前のリムルは、俺の手で殺さないといけないし、殺さないと納得できない。
 
「そうですか。マスター、了解しました」
「ああ」
 
 俺は短く答えると、ソルティの横を通り過ぎ、リムルへと向けて一気に加速し距離を詰める。
 リムルは翼を広げて空中へと飛びあがり距離を開けようとしてくるが、俺はすかさずベルトからナイフを二本取り出すと固定化の魔法を纏わせると同時に投げる。
 投擲したナイフは、リムルの黒いサキュバス特有のコウモリの翼を貫く。
 それにより浮力を一瞬落したリムルへと飛び掛かり日本刀を上段から振り下ろす。
 振り下ろした日本刀は、爪を伸ばし防御しようとしたリムルの爪ごと翼を切り飛ばす。
 
「アアアアアアアッ」
 
 痛みとも何とも区別のつかない声を上げながら、床の上へと落下するリムル。
 俺は帰す刀でリムルの首に目掛けて日本刀の刃を向けて横薙ぎするが、俺の日本刀はリムルの爪で防がれる。
 
「信じられないわ。あのエイジが――、これだけの力を有していたなんて……」
「そうだろうな」
 
 鍔迫り合いをしながら、俺は眉間に皺を寄せながら日本刀を掴む両手に力を入れていく。
 ジリジリと日本刀の刃はリムルの首へと迫る。
 
「わかったわ。降参するわ。だから――」
「お前は、何を言っているんだ?」
 
 このままでは自身の首が刎ねられると理解したのだろう。
 リムルの方から、降参という手段を打って出てきた。
 だが――、
 
「え?」
 
 俺の言葉が理解できなかったのかリムルは驚いた表情で俺を見てくる。
 
「お前の方から売ってきた喧嘩だろう? どうして、お前に降参する権利があると思っているんだ? そもそも、魔物相手に交渉するなんて無意味だと言う事は冒険者ギルドの受付として働いてきて理解してないのか?」
 
 
 
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