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第三章 王都暗躍編
第141話 王城へカチコミだ!(6)
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兵士に向かって駆けながら、俺は懐からナイフを3本取り出した瞬間、背筋に冷たいモノが流れた瞬間、横へと無意識の内に飛んでいた。
何が、俺を反応させたのかは理解できなかったが、横に飛んで一拍置いた瞬間――、
「ギャアアアアアア」
俺がナイフを投擲しようとしていた兵士の右腕が空中を舞っていた。
兵士は絶叫を上げながら大理石の床の上に膝をつく。
「お、俺の――、俺の腕が! 俺の腕があああああ」
そんな声を叫び続ける兵士。
俺は、そんな男の耳障りな声を聞き流しながら、近くの柱へと身を隠す。
「何だ? いきなり兵士の腕が切り飛ばされたぞ?」
自問自答しながら原因を連想する。
考えられるとしたら、魔法――、それも風に属する魔法と考えるのが一般的ではあったが……。
だが、問題は、俺の目では何が兵士の腕を吹き飛ばしたのか見極めることが出来なかった点だ。
俺は、兵士の方を横目で見る。
すると、一瞬空間が揺らぐ。
それと同時に、兵士の体は鎧ごと体を裂かれた。
もちろん絶命――。
「まったく――、」
思わず愚痴ってしまう。
だが、一つ分かった事がある。
大気が揺らぐという現象。
それは魔法が関与しているということ。
しかも、風魔法とは別系統のモノ。
「どうして、魔族が城の中に居るんだ?」
俺は、身体強化を最大限に展開したまま、ナイフを懐にしまい込む。
そして腰から日本刀を抜き放つ。
「生活魔法発動『固定化』を日本刀に付与――」
固定化の魔法を日本刀にかけ、身を隠していた柱から出る。
そして、兵士を殺した魔族へと視線を向ける。
そこには卑猥なビキニを着た青白い女が恍惚とした表情を俺に向けてきていた。
「私の攻撃を避けるなんて、餌としては上出来ね」
「餌ね」
俺は後方を警戒しながら前方に立っている女――、口ぶりから間違いなくサキュバスであろう魔物に向けて日本刀の刃先を向ける。
「もしかして、人間如きが上位種である私に刃を向けるなんて――」
俺に、切っ先を向けられたサキュバスは、一瞬だけ驚いたあと、自身の紫色の唇を舐めると、翼を広げて飛翔し突撃してくる。
「貴方、かなり強いわね! まずは後ろの兵士を殺してから、ゆっくりと生気を吸い取ってあげるわ!」
そう叫んでくると、サキュバスは俺の横を通り過ぎて後ろの――、王国の兵士達へと向かおうとするが、俺はサキュバスが横を通り過ぎようとした瞬間、日本刀を上段から振り下ろす。
時が止まった日本刀の刃は、サキュバスの片翼を根元から斬り落とす。
「きゃああああああ」
片翼の翼だけになったサキュバスは、空中を飛んでいた事もあり、体制を崩し大理石の床に体を打ち付けると転がっていき壁に自身の体を叩きつけていた。
「なにを――、何を……、何をするのよ! 餌の分際でっ!」
三つ編みの銀髪の髪を振り乱しながら、160センチほどの身長の女が片膝をつきながら、俺を憎しみの色を含んだ眼差しで見てくる。
「何を? お前は、何を言っているんだ?」
俺はサキュバスに向かって歩いていく。
もちろん、殺気を隠すような真似はしない。
「どうして――、どうして! チャームの! 魅惑の魔法が効かないのよ!」
俺は思わず首を傾げる。
そして、納得する。
どうも無防備で俺の横を素通りすると思っていたが、俺と目を合わせた瞬間にサキュバスは俺に向かって魅惑の魔法をかけたらしい。
だが、生憎、俺には、その手の魔法は効かない。
もっと言えば、その特異性を教える謂われもない。
ガルガンが以前に、俺は異世界から来た人間だから、デバフの魔法が効かないのでは? と言っていたことがある。
それが本当の理由かは分からないが塩の女神ソルティなら何か知っているのかも知れないな。
サキュバスは、淫魔のスキルが俺にはまったく効果を示さないことを理解して後退りしていく。
「何で? 何で?」
「さあな? だが――」
俺は日本刀を振り上げて、振り下ろす。
日本刀の刃は、サキュバスの肩口から豆腐でも切るように何の抵抗も示さず女の腹部の淫魔の証である印まで一刀両断する。
サキュバスの体は一瞬、ビクンッ! と、震えると黒い霧となって爆散する。
「な、何が……何が起きたんだ?」
俺とサキュバスとの戦いを一部始終見ていた兵士が呆然自失と言った様子で呟くが、俺の方を見て唾を呑み込む。
「お、お前は……、その眼の色に……その黒髪――」
俺を――、眼を開いて見た兵士が呟く。
そこで俺も気が付く。
自分自身にかけていた生活魔法が解けていることに。
思わず溜息をつく。
「仕方ないな」
ここは適当にアピールしておくべきだろう。
「俺は神田栄治。冒険者ギルドマスター、ガルガンより王城内に魔物が潜伏していると報告を受けて討伐に来た」
出まかせもいいところだ。
ただ一つだけいい点と言えば、大勢の兵士達の前では俺自身は手を下していないと言う事。
「やはり! 貴様は、メリア様が指名手配をかけた男だな!」
その兵士の言葉に俺は眉を顰める。
「メリア? 第三王位継承権を所持するメリア・ド・エルダのことか?」
「貴様如き平民が王族の名を語るなぞ不敬にも程があるぞ!」
「そうかよ」
何が、俺を反応させたのかは理解できなかったが、横に飛んで一拍置いた瞬間――、
「ギャアアアアアア」
俺がナイフを投擲しようとしていた兵士の右腕が空中を舞っていた。
兵士は絶叫を上げながら大理石の床の上に膝をつく。
「お、俺の――、俺の腕が! 俺の腕があああああ」
そんな声を叫び続ける兵士。
俺は、そんな男の耳障りな声を聞き流しながら、近くの柱へと身を隠す。
「何だ? いきなり兵士の腕が切り飛ばされたぞ?」
自問自答しながら原因を連想する。
考えられるとしたら、魔法――、それも風に属する魔法と考えるのが一般的ではあったが……。
だが、問題は、俺の目では何が兵士の腕を吹き飛ばしたのか見極めることが出来なかった点だ。
俺は、兵士の方を横目で見る。
すると、一瞬空間が揺らぐ。
それと同時に、兵士の体は鎧ごと体を裂かれた。
もちろん絶命――。
「まったく――、」
思わず愚痴ってしまう。
だが、一つ分かった事がある。
大気が揺らぐという現象。
それは魔法が関与しているということ。
しかも、風魔法とは別系統のモノ。
「どうして、魔族が城の中に居るんだ?」
俺は、身体強化を最大限に展開したまま、ナイフを懐にしまい込む。
そして腰から日本刀を抜き放つ。
「生活魔法発動『固定化』を日本刀に付与――」
固定化の魔法を日本刀にかけ、身を隠していた柱から出る。
そして、兵士を殺した魔族へと視線を向ける。
そこには卑猥なビキニを着た青白い女が恍惚とした表情を俺に向けてきていた。
「私の攻撃を避けるなんて、餌としては上出来ね」
「餌ね」
俺は後方を警戒しながら前方に立っている女――、口ぶりから間違いなくサキュバスであろう魔物に向けて日本刀の刃先を向ける。
「もしかして、人間如きが上位種である私に刃を向けるなんて――」
俺に、切っ先を向けられたサキュバスは、一瞬だけ驚いたあと、自身の紫色の唇を舐めると、翼を広げて飛翔し突撃してくる。
「貴方、かなり強いわね! まずは後ろの兵士を殺してから、ゆっくりと生気を吸い取ってあげるわ!」
そう叫んでくると、サキュバスは俺の横を通り過ぎて後ろの――、王国の兵士達へと向かおうとするが、俺はサキュバスが横を通り過ぎようとした瞬間、日本刀を上段から振り下ろす。
時が止まった日本刀の刃は、サキュバスの片翼を根元から斬り落とす。
「きゃああああああ」
片翼の翼だけになったサキュバスは、空中を飛んでいた事もあり、体制を崩し大理石の床に体を打ち付けると転がっていき壁に自身の体を叩きつけていた。
「なにを――、何を……、何をするのよ! 餌の分際でっ!」
三つ編みの銀髪の髪を振り乱しながら、160センチほどの身長の女が片膝をつきながら、俺を憎しみの色を含んだ眼差しで見てくる。
「何を? お前は、何を言っているんだ?」
俺はサキュバスに向かって歩いていく。
もちろん、殺気を隠すような真似はしない。
「どうして――、どうして! チャームの! 魅惑の魔法が効かないのよ!」
俺は思わず首を傾げる。
そして、納得する。
どうも無防備で俺の横を素通りすると思っていたが、俺と目を合わせた瞬間にサキュバスは俺に向かって魅惑の魔法をかけたらしい。
だが、生憎、俺には、その手の魔法は効かない。
もっと言えば、その特異性を教える謂われもない。
ガルガンが以前に、俺は異世界から来た人間だから、デバフの魔法が効かないのでは? と言っていたことがある。
それが本当の理由かは分からないが塩の女神ソルティなら何か知っているのかも知れないな。
サキュバスは、淫魔のスキルが俺にはまったく効果を示さないことを理解して後退りしていく。
「何で? 何で?」
「さあな? だが――」
俺は日本刀を振り上げて、振り下ろす。
日本刀の刃は、サキュバスの肩口から豆腐でも切るように何の抵抗も示さず女の腹部の淫魔の証である印まで一刀両断する。
サキュバスの体は一瞬、ビクンッ! と、震えると黒い霧となって爆散する。
「な、何が……何が起きたんだ?」
俺とサキュバスとの戦いを一部始終見ていた兵士が呆然自失と言った様子で呟くが、俺の方を見て唾を呑み込む。
「お、お前は……、その眼の色に……その黒髪――」
俺を――、眼を開いて見た兵士が呟く。
そこで俺も気が付く。
自分自身にかけていた生活魔法が解けていることに。
思わず溜息をつく。
「仕方ないな」
ここは適当にアピールしておくべきだろう。
「俺は神田栄治。冒険者ギルドマスター、ガルガンより王城内に魔物が潜伏していると報告を受けて討伐に来た」
出まかせもいいところだ。
ただ一つだけいい点と言えば、大勢の兵士達の前では俺自身は手を下していないと言う事。
「やはり! 貴様は、メリア様が指名手配をかけた男だな!」
その兵士の言葉に俺は眉を顰める。
「メリア? 第三王位継承権を所持するメリア・ド・エルダのことか?」
「貴様如き平民が王族の名を語るなぞ不敬にも程があるぞ!」
「そうかよ」
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