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第三章 王都暗躍編
第140話 王城へカチコミだ!(5)第三者Side
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神田栄治が、王城内の執務室を守っている兵士達との戦闘を開始した同時刻――、王宮内の一室であるメリア・ド・エルダの部屋。
その彼女の部屋には、淫魔サキュバスとなったメリアが自室のベランダに繋がる大きな窓ガラスを開け放ち、王城の城壁へと視線を向けていた。
彼女が、視線を向けている先――、ソフィアと王城を守る魔法師や騎士達が戦ってい方角からは断続的な爆発音が発せられており、その音は王宮内にも当然の如く響いてきていた。
「何があったの?」
メリアは、目を細めながら爆発音が聞こえてくる城壁の方を睨みつける。
だが、王宮から王城の城壁までは距離がある事もあり目視することができない。
「メリア様!」
そんな彼女は、唐突に室内に響き渡った声に溜息を漏らすと、青く変色した魔族の肌を人肌へと転化させ尻尾と角と羽を隠すと魔力でドレスを編み一瞬で元の人間の恰好へと戻る。
「どうかしたの?」
扉越しに廊下から聞こえる声に、扉を開けずに声を投げかけるメリア。
「賊です! 二人の魔法師が、王城を攻めてきました!」
「この王城を? たった二人で?」
「はっ! 現在、王城の近衛兵と一般兵士と魔法師で侵略を食い止めていますが――」
その侵略を食い止めているという言葉を発した兵士の報告にメリアは眉を顰める。
「どういうこと?」
「はい?」
「どういうことと聞いているのよ? たった二人の魔法師の王城への攻撃を――、侵略を食い止めているという言葉の意味――、それは、どういう意味なのか? と、聞いているのよ?」
「はっ! 事情は詳しくは分かりません。ただ――」
「ただ?」
「宰相エルハスト様が国家反逆を企てた人間を、噴水広場で処分するようにと近衛隊長に命じた直後に、王城への攻撃があったと報告がありまして……」
伝令の、その言葉にメリアは混乱する。
宰相エルハストは、淫魔サキュバスと転化したメリアの姉とも創造主とも言えるリムルが、淫魔の力で虜にして利用していたはずであったからだ。
それは、つまり人間を奴隷としてアイテムとして利用しているに過ぎない。
つまりメリアから見れば、エルハストは淫魔にとっての玩具。
そんなゴミみたいな存在が、勝手に動くことはあってはならない。
普通ならば、人間よりも上位種族となった淫魔サキュバスのメリアにも情報が上がってきていなければおかしい。
だからこそ、メリアは混乱する。
頭の中では、「エルハストが? 無断で? 私に報告も無しに?」と、考えていたのであった。
「メリア様、どういたしましょうか?」
「ネメシス卿は――、ロッテリア―ド公爵は何をしているの?」
「――そ、それが……、数時間前から姿を見かけておらず……」
扉外で伝令が激怒したメリアの声に怯えつつも、事実を報告する。
「分かったわ。とりあえず、魔法師は、どんなに犠牲を払っても処分するように」
「――こ、交渉などは?」
「必要ないわ。必ず殺しなさい。いいわね?」
「は、はっ!」
扉の外から伝令の気配が消えたところで、メリアは元の淫魔の姿へと戻る。
そしてベランダへと出て黒い翼を広げた。
「まったく――、劣等種が何を勝手な行動を取っているのかしら?」
「メリア」
忌々しそうに呟いたメリアの声に応じるかのように、彼女の頭の上――、上空から声が降ってくる。
「お姉さま!?」
その声に顔をあげたメリアの目には、自身を淫魔サキュバスへと転化させたリムルの姿が映り込んだ。
そしてリムルは、際どい恰好を惜しげもなく披露しながらベランダへと音もなく着地する。
彼女の胸元には赤く光る淫魔王の核が脈動していた。
「メリア。一体、この騒ぎはどういうことかしら?」
「申し訳ありません! エルハストが勝手に王国民を処刑しようとしたのです。それで反感を持った王都民が城を攻めてきたと――」
「ふーん。そう……」
メリアの説明に、まるで起きることが分かっていたとばかりの反応をするリムルに、ハッ! とするメリア。
「お姉さまは、もしかして、こうなる事を知っていたのですか?」
「知っていたというか……、何時かはこうなる事は傀儡に命令を刷り込んではいたのよね? ただ、思ったよりも脆かったってことかしら?」
「そうなのですか……」
「メリア、貴女だって人間が脆くゴミのような存在で、私達の家畜としてしか生きる価値が――、存在を許されていない事は理解しているはずよ?」
「はい。分かっております」
「そう、分かっているのならいいわ。まぁ、それを見れば分かるけどね」
恍惚とした表情をした淫魔王リムルが、ベランダに転がっている死体の山へと視線を向けた。
そこには、生気を吸われ皮と骨だけになり絶命した裸の兵士達が山のように積まれている。
「貴女も淫魔としての自覚と力を手に入れたようね」
「はい! 角も翼も爪も牙も! 完全に淫魔として! お姉さまの妹として覚醒しました! 汚らわしい人間だった頃が本当に今では悪夢だとしか思えません!」
「そう」
「あのお姉さま。軍務卿が――」
「ああ。もういらないから食べちゃたわよ。こんな事態になったから仕方ないわ」
溜息と共にパチンと指を慣らすリムル。
そんな彼女の命令を待っていたかのように城中のメイド達が一斉に淫魔へと転化していくと同時に、王城の上空に舞い上がっていく。
その数は1000は下らない。
その光景を見たメリアは笑みを浮かべ――、
「お姉さま、これは……」
「貴女と同じ、私の妹たちよ。さあ、国盗りを始めましょう」
リムルは、声高々に、そう宣言した。
その彼女の部屋には、淫魔サキュバスとなったメリアが自室のベランダに繋がる大きな窓ガラスを開け放ち、王城の城壁へと視線を向けていた。
彼女が、視線を向けている先――、ソフィアと王城を守る魔法師や騎士達が戦ってい方角からは断続的な爆発音が発せられており、その音は王宮内にも当然の如く響いてきていた。
「何があったの?」
メリアは、目を細めながら爆発音が聞こえてくる城壁の方を睨みつける。
だが、王宮から王城の城壁までは距離がある事もあり目視することができない。
「メリア様!」
そんな彼女は、唐突に室内に響き渡った声に溜息を漏らすと、青く変色した魔族の肌を人肌へと転化させ尻尾と角と羽を隠すと魔力でドレスを編み一瞬で元の人間の恰好へと戻る。
「どうかしたの?」
扉越しに廊下から聞こえる声に、扉を開けずに声を投げかけるメリア。
「賊です! 二人の魔法師が、王城を攻めてきました!」
「この王城を? たった二人で?」
「はっ! 現在、王城の近衛兵と一般兵士と魔法師で侵略を食い止めていますが――」
その侵略を食い止めているという言葉を発した兵士の報告にメリアは眉を顰める。
「どういうこと?」
「はい?」
「どういうことと聞いているのよ? たった二人の魔法師の王城への攻撃を――、侵略を食い止めているという言葉の意味――、それは、どういう意味なのか? と、聞いているのよ?」
「はっ! 事情は詳しくは分かりません。ただ――」
「ただ?」
「宰相エルハスト様が国家反逆を企てた人間を、噴水広場で処分するようにと近衛隊長に命じた直後に、王城への攻撃があったと報告がありまして……」
伝令の、その言葉にメリアは混乱する。
宰相エルハストは、淫魔サキュバスと転化したメリアの姉とも創造主とも言えるリムルが、淫魔の力で虜にして利用していたはずであったからだ。
それは、つまり人間を奴隷としてアイテムとして利用しているに過ぎない。
つまりメリアから見れば、エルハストは淫魔にとっての玩具。
そんなゴミみたいな存在が、勝手に動くことはあってはならない。
普通ならば、人間よりも上位種族となった淫魔サキュバスのメリアにも情報が上がってきていなければおかしい。
だからこそ、メリアは混乱する。
頭の中では、「エルハストが? 無断で? 私に報告も無しに?」と、考えていたのであった。
「メリア様、どういたしましょうか?」
「ネメシス卿は――、ロッテリア―ド公爵は何をしているの?」
「――そ、それが……、数時間前から姿を見かけておらず……」
扉外で伝令が激怒したメリアの声に怯えつつも、事実を報告する。
「分かったわ。とりあえず、魔法師は、どんなに犠牲を払っても処分するように」
「――こ、交渉などは?」
「必要ないわ。必ず殺しなさい。いいわね?」
「は、はっ!」
扉の外から伝令の気配が消えたところで、メリアは元の淫魔の姿へと戻る。
そしてベランダへと出て黒い翼を広げた。
「まったく――、劣等種が何を勝手な行動を取っているのかしら?」
「メリア」
忌々しそうに呟いたメリアの声に応じるかのように、彼女の頭の上――、上空から声が降ってくる。
「お姉さま!?」
その声に顔をあげたメリアの目には、自身を淫魔サキュバスへと転化させたリムルの姿が映り込んだ。
そしてリムルは、際どい恰好を惜しげもなく披露しながらベランダへと音もなく着地する。
彼女の胸元には赤く光る淫魔王の核が脈動していた。
「メリア。一体、この騒ぎはどういうことかしら?」
「申し訳ありません! エルハストが勝手に王国民を処刑しようとしたのです。それで反感を持った王都民が城を攻めてきたと――」
「ふーん。そう……」
メリアの説明に、まるで起きることが分かっていたとばかりの反応をするリムルに、ハッ! とするメリア。
「お姉さまは、もしかして、こうなる事を知っていたのですか?」
「知っていたというか……、何時かはこうなる事は傀儡に命令を刷り込んではいたのよね? ただ、思ったよりも脆かったってことかしら?」
「そうなのですか……」
「メリア、貴女だって人間が脆くゴミのような存在で、私達の家畜としてしか生きる価値が――、存在を許されていない事は理解しているはずよ?」
「はい。分かっております」
「そう、分かっているのならいいわ。まぁ、それを見れば分かるけどね」
恍惚とした表情をした淫魔王リムルが、ベランダに転がっている死体の山へと視線を向けた。
そこには、生気を吸われ皮と骨だけになり絶命した裸の兵士達が山のように積まれている。
「貴女も淫魔としての自覚と力を手に入れたようね」
「はい! 角も翼も爪も牙も! 完全に淫魔として! お姉さまの妹として覚醒しました! 汚らわしい人間だった頃が本当に今では悪夢だとしか思えません!」
「そう」
「あのお姉さま。軍務卿が――」
「ああ。もういらないから食べちゃたわよ。こんな事態になったから仕方ないわ」
溜息と共にパチンと指を慣らすリムル。
そんな彼女の命令を待っていたかのように城中のメイド達が一斉に淫魔へと転化していくと同時に、王城の上空に舞い上がっていく。
その数は1000は下らない。
その光景を見たメリアは笑みを浮かべ――、
「お姉さま、これは……」
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リムルは、声高々に、そう宣言した。
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