おっさんの異世界建国記

なつめ猫

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第三章 王都暗躍編

第134話 王都噴水広場での戦い(2)

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「――な、何者だ!? ――きっ、貴様っ!!」
 
 ギロチンを執行した男が、俺へと視線を向けてくると同時に怒りを滲ませた怒号を俺に目掛けて叩きつけてくる。
 そんな男の横を俺は通り過ぎる。
 
「――なっ! ――きっ、貴様!?」
 
 俺に無視された男が叫ぶが、そんなことはどうでもいい。
 俺はギロチンの断頭台に頭を乗せられて固定化されていた男の元へと近づき腰から日本刀を抜き放つ。
 そして――。
 
「生活魔法『固定化』」
 
 日本刀の刃に固定化の生活魔法を纏わせると、断頭台の上下の板を繋いである鉄製の留め具を切り裂き破壊する。
 そして断頭台の上部の板を外す。
 
「大丈夫か?」
 
 断頭台に繋がれていた男へと話しかける。
 
「あ、あんたは……、誰だ? ――こ、こんなことをしたら王国が……」
 
 現状を正しく理解しているのか若者は、俺の身を案じてくるが、もう、それは今さらと言ったところだ。
 
「もう遅いわ! 貴様ら! この男を八つ裂きにしろ!」
 
 先ほど、ギロチンの執行をした男が般若のような面相をし、兵士達に号令をかけた。
 兵士達は一斉に槍を俺へ向けてくるが――、
 
「俺のことはいい。それよりもまずは逃げることを最優先にしろ」
 
 多少なりとも、俺が原因で被害を目の前の若者が被ったとはいえ処刑はやりすぎだとは、素直には言えない俺は、短く答える。
 
「すまない……。だが――、逃げることは出来そうにない……」
 
 すでに処刑予定の人間を含めて、俺達の周囲を兵士達は完全に取り囲んでいて2メートルを超える槍を向けてきていた。
 兵士の数は50人。
 対して、こちらは鎖で繋がれていてすぐに動けない者が30人近く。
 
「あんただけでも逃げてくれ……」
 
 そう俺の身を案じてくる若者に俺は溜息をつく。
 
「問題ない」
 
 そう短く応じると同時に、俺は地面に手をつく。
 そして生活魔法を発動。
 俺を取り囲んでいる兵士達の足元を構成している土壌を消す。
 
「――なっ!?」
「――じ、地面が!?」
「くっ!? うあああああああ」
「そんな――、たすけっ!」
 
 一瞬で足元が消え去った兵士達は10メートル近くを、重い甲冑を着たまま落下し――、そのまま地面へと激突し金属鎧の重さと重力加速度により加速された勢いによる衝突の二重の衝撃により即死する。
 
「――な!?」
「ドルグ様! 魔法師です! あれは魔法師です!」
「分かっておる! アンチマジックの展開をしろ! 魔法さえ使えなくすれば、魔法師など恐れるに足らん! それと援軍だ!」
「はっ!」
 
 兵士達が援軍を呼ぶための光の魔法を発動させ上空へと投げる。
 それは炸裂し昼なのに一際明るい閃光を作り出し、周囲を照らす。
 
「くくくっ。どこのどいつかは知らんが! この反逆者めが! 貴様は、近衛兵隊長ドルグ様が、四肢を捥いで始末してやる!」
 
 俺は、ドルグという男の命令のあとに詠唱の声が聞こえてきた方角へと視線を向ける。
すると兵士達の後方に隠れていたのだろう。
ローブを着た魔法師達が、魔法を一時的に使えなくするための詠唱を開始していた。
 
「なるほどな……」
 
 魔法師達は貴重な存在だ。
 隠しておいていざと言った時に使うのは常套手段でもある。
 さらに厄介なことに魔法を使えなく魔法というのは、生活魔法にも影響がある。
 
「だが、詠唱には時間が掛かるのが難点だな」
 
 俺の生活魔法には詠唱というのが存在しない。
 つまり、魔法を封じようとしても、その前には先制攻撃を仕掛ける事が出来て完封することも可能。
 俺は魔法師達に向ける。
 すると手を向けた途端、空から白い塊のようなモノが雪のように舞い散り降りてくる。
 
「なんだ?」
 
 突然の事に、広場にどよめきが起きる。
 そして、それは俺や王都民だけでなく――、
 
「な、なんだ!? なんだ! なんなのだ!? これは! この白いモノは何なのだ!?」
 
 ドルグという男や兵士達も慌てている様子からして、どうやら王国の兵士達の魔法でも何でもないらしい。
 そこまで考えたところで、俺の目の前に一陣の風が吹いたかと思うと一人の少女が姿を現した。
 透き通った白い肌に白い髪に幼い容姿の幼女。
 それは――、
 
「ソルティか?」
「ええ。リルカが援軍をと言いましたから、私が援軍にやってきました。この女神が、メディデータの頼みを聞くことは、滅多にはありませんが……、今回は特別ですよ? マスター」
「そうかよ」
 
 ソルティは、周囲を見渡すと、魔法封じの詠唱を行っている魔法師達へと視線を向けるが、
 
「あれは? あの程度の術式で私のマスターの魔法を封じようとしているのですか? 私のマスターには、あのような児戯にもならない魔法なんて効かないというのに……」
 
 ソルティは、腕を振るう。
 それだけで、詠唱を行っていた魔法師達の身体が、一瞬で塩の塊となって砕け崩れ落ちる。
 
「お、おい……」
「問題ありませんわ。だって、あれは敵でしょう?」
「それはそうだが……」
「なら、問題はありませんね。それに……」
 
 ソルティが俺とドルグの間に移動する。
 
「メディデータごときが、私のマスターに剣を向けるなんて、そんな事は許されていませんの。私のマスターは、人間でありメディデータが剣を向けると言う事は、それは世界に剣を向けたと同義です」
 
「次から次へと! 貴様は、一体何なんなのだ!」
「まあ! メディデータ如きが何を聞くかと思えば――」
 
 ソルティは、一度、瞼を閉じる。
 そして――、目を見開き――、
 
「私は――」
 
 俺は思わずソルティの口を塞ぐ。
 こんな場所で名前なんて馬鹿正直に名乗ったら問題になることは目に見えているからだ。
 
「名乗りは禁止だ。いいな?」
「わかりましたわ」
 
 
 
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