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第三章 王都暗躍編
第133話 王都噴水広場での戦い(1)
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「……ど、どうして……どうしてニャン?」
涙声で問いかけてくるディアナに俺は瞼を閉じてから、一度、気持ちを切り替えてから彼女の方を――、ディアナの方を見る。
そこには、ベッドに押し倒されたままの、涙で黒い瞳を揺らしているディアナの姿があった。
「すまない。だが、理解はしてくれ。ここでディアナの姿を見られたら、それこそ大問題になる。それは、先ほども説明した通りだ」
「そう言う事ではないニャン……。行くなら行くと――、きちんと説明をしてから行ってほしいニャン。何も知らないうちにご主人様が――」
――ああ、そういうことか……。
つまり事後承諾はしないでほしいと。
よくよく考えれば、俺だってそう思うはずだ。
「分かった。次回からは気を付けよう」
「本当ですニャン?」
「ああ、本当だ。約束だ」
「ご主人様に何かあればリルカさんやエルナさんも悲嘆に暮れますにゃん。ですから、無理はなさらないで欲しいニャン。最悪、開拓中の村を引き払ってもいいと思いますニャン」
「それは難しいな」
「どうしてニャン?」
「あそこには、エルダ王国には知られていないが塩湖があるからな。それの価値は計り知れない。捨て置くのは勿体ない」
「それだけですニャン?」
「ああ。村を発展させる為には資金は必要だからな」
「そうニャンですか……」
「まぁ、近くに村を作って隠れて採掘してお金を貯めるという方法も出来なくはないが――、貨幣の流通や塩の流通を探られたら、流石に国としても調査を始めるからな……。そうなれば遅かれ遠かれにはなるが時間は稼げるが――、あまり賢い方法ではないな」
「難しいニャン」
「まあな……。とりあえず、今日は休むとしよう」
「そういえば、ご主人様」
「どうかしたのか?」
「ご主人様を探しに出た時に広場の方で武装した兵士が王国民を捕まえている光景が目に入ったニャン」
「――何!? 兵士が、自国の王国民を武装して捕まえていたのか?」
「はいニャン」
「……」
思わず無言になる俺。
自国民を自国の兵士が捕まえる。
それは、国家による民衆の弾圧と言っていい。
つまり国は、国民を切り捨てたということだ。
そして、その事実は――、情報は王国内に一気に伝播する。
「時間がないな……」
「時間が無いニャン?」
「ああ。まったく――、宰相と軍務卿は何を考えているのか……」
普通なら起こりえないことが起きている現状に思わず溜息が出る。
王都が混乱の極致に陥っていることが、ニードルス領へと伝われば、現在は滞在しているテラン王国からの使節団へと伝わる。
そうなれば、真偽は別としてニードルス領を攻めてくるだろう。
こちらの交渉が上手く行っても行かなくてとも――。
「時間的猶予は2週間と言ったところか……」
その間に王都で起きている問題を解決しないといけない。
そうなれば二度目の争乱にソドムの町は炎上することになる。
「まったく面倒なことだな」
「ご主人様?」
「――いや、何でもない。少し休むとしよう」
とりあえず今日は生活魔法を連続で使ったし、いつもよりもかなり多くの運動量があったから、眠い。
「分かりましたニャン」
深く聞くことなくディアナは頷くと、俺に抱き着いてくる。
彼女の抱擁を断ることもなく、俺はディアナの豊満な胸に顔を埋めて目を閉じた。
――翌朝になり、俺はディアナと共に広場まで来ていた。
王都リーズの広場には、数百人の武装した兵士達が王城へと続く道を完全封鎖している。
それどころか――、
「おいおい。マジかよ……」
俺は思わず広場を見て呟く。
広場には、ギロチンが置かれていて罪人を裁くような様相が見えた。
俺とディアナが屋根の上から広場を見下ろしている中で、広場は王都民が誰も侵入できないように木材で組まれた格子が通りを塞いでいた。
そんな中――、羽を甲冑の胸の部分に貼り付けた男が立ち上がる。
俺は思わず身体強化を行う。
それにより五感を強化すると同時に――、
「これより罪状を読み上げる!」
細工が施された甲冑を身に纏った男が声を張り上げる。
それと共に悲痛な声が、広場へと響き渡る。
「自国民を殺すなんて信じられないわ!」
「私の息子を返して!」
「なんだよ……こんなの……ぜったいにおかしいだろ!」
「ふざけんなよ! 自国民の意見を聞かない! 守らないなんておかしい!」
次々と広がっていく声。
それらは、悲痛な声であったが、無表情のまま広場を封鎖している兵士達には一切届くことはない。
それは明らかに異常な事態で――。
「どういうことだ?」
「ご主人様、変ですニャン」
「どうかしたのか?」
「兵士達から変な匂いがするニャン」
「変な匂い?」
ディアナが、何かを察したのか、そう言ってくるが――、
「罪状は! 国家反逆罪である! 王都の治安を乱した罪として、死刑に処する!」
猿轡を噛まされている男は、両腕も後ろ手に縛られたまま断頭台に連れて行かれて、頭を固定される。
「これより愚かな罪人に対して死刑を執行する!」
そう男が声を張り上げ手を振り下ろそうとしたところで、俺は生活魔法『固定化』の魔法を展開したナイフを振り下ろされたギロチンの刃へと投擲する。
「キャアアアアアアア」
誰が叫んだのか分からないが、女の絶叫する声と同時に――、ギィイイイイインと、金属同士がぶつかり合う音が広場に駆け巡ると、金属が砕ける音と共に、男に振り下ろされていたギロチンの刃は粉々に粉砕される。
「まったく――、仕方ねーな!」
俺は髪色を赤色に変えたまま屋根上から広場へと飛び降りた。
涙声で問いかけてくるディアナに俺は瞼を閉じてから、一度、気持ちを切り替えてから彼女の方を――、ディアナの方を見る。
そこには、ベッドに押し倒されたままの、涙で黒い瞳を揺らしているディアナの姿があった。
「すまない。だが、理解はしてくれ。ここでディアナの姿を見られたら、それこそ大問題になる。それは、先ほども説明した通りだ」
「そう言う事ではないニャン……。行くなら行くと――、きちんと説明をしてから行ってほしいニャン。何も知らないうちにご主人様が――」
――ああ、そういうことか……。
つまり事後承諾はしないでほしいと。
よくよく考えれば、俺だってそう思うはずだ。
「分かった。次回からは気を付けよう」
「本当ですニャン?」
「ああ、本当だ。約束だ」
「ご主人様に何かあればリルカさんやエルナさんも悲嘆に暮れますにゃん。ですから、無理はなさらないで欲しいニャン。最悪、開拓中の村を引き払ってもいいと思いますニャン」
「それは難しいな」
「どうしてニャン?」
「あそこには、エルダ王国には知られていないが塩湖があるからな。それの価値は計り知れない。捨て置くのは勿体ない」
「それだけですニャン?」
「ああ。村を発展させる為には資金は必要だからな」
「そうニャンですか……」
「まぁ、近くに村を作って隠れて採掘してお金を貯めるという方法も出来なくはないが――、貨幣の流通や塩の流通を探られたら、流石に国としても調査を始めるからな……。そうなれば遅かれ遠かれにはなるが時間は稼げるが――、あまり賢い方法ではないな」
「難しいニャン」
「まあな……。とりあえず、今日は休むとしよう」
「そういえば、ご主人様」
「どうかしたのか?」
「ご主人様を探しに出た時に広場の方で武装した兵士が王国民を捕まえている光景が目に入ったニャン」
「――何!? 兵士が、自国の王国民を武装して捕まえていたのか?」
「はいニャン」
「……」
思わず無言になる俺。
自国民を自国の兵士が捕まえる。
それは、国家による民衆の弾圧と言っていい。
つまり国は、国民を切り捨てたということだ。
そして、その事実は――、情報は王国内に一気に伝播する。
「時間がないな……」
「時間が無いニャン?」
「ああ。まったく――、宰相と軍務卿は何を考えているのか……」
普通なら起こりえないことが起きている現状に思わず溜息が出る。
王都が混乱の極致に陥っていることが、ニードルス領へと伝われば、現在は滞在しているテラン王国からの使節団へと伝わる。
そうなれば、真偽は別としてニードルス領を攻めてくるだろう。
こちらの交渉が上手く行っても行かなくてとも――。
「時間的猶予は2週間と言ったところか……」
その間に王都で起きている問題を解決しないといけない。
そうなれば二度目の争乱にソドムの町は炎上することになる。
「まったく面倒なことだな」
「ご主人様?」
「――いや、何でもない。少し休むとしよう」
とりあえず今日は生活魔法を連続で使ったし、いつもよりもかなり多くの運動量があったから、眠い。
「分かりましたニャン」
深く聞くことなくディアナは頷くと、俺に抱き着いてくる。
彼女の抱擁を断ることもなく、俺はディアナの豊満な胸に顔を埋めて目を閉じた。
――翌朝になり、俺はディアナと共に広場まで来ていた。
王都リーズの広場には、数百人の武装した兵士達が王城へと続く道を完全封鎖している。
それどころか――、
「おいおい。マジかよ……」
俺は思わず広場を見て呟く。
広場には、ギロチンが置かれていて罪人を裁くような様相が見えた。
俺とディアナが屋根の上から広場を見下ろしている中で、広場は王都民が誰も侵入できないように木材で組まれた格子が通りを塞いでいた。
そんな中――、羽を甲冑の胸の部分に貼り付けた男が立ち上がる。
俺は思わず身体強化を行う。
それにより五感を強化すると同時に――、
「これより罪状を読み上げる!」
細工が施された甲冑を身に纏った男が声を張り上げる。
それと共に悲痛な声が、広場へと響き渡る。
「自国民を殺すなんて信じられないわ!」
「私の息子を返して!」
「なんだよ……こんなの……ぜったいにおかしいだろ!」
「ふざけんなよ! 自国民の意見を聞かない! 守らないなんておかしい!」
次々と広がっていく声。
それらは、悲痛な声であったが、無表情のまま広場を封鎖している兵士達には一切届くことはない。
それは明らかに異常な事態で――。
「どういうことだ?」
「ご主人様、変ですニャン」
「どうかしたのか?」
「兵士達から変な匂いがするニャン」
「変な匂い?」
ディアナが、何かを察したのか、そう言ってくるが――、
「罪状は! 国家反逆罪である! 王都の治安を乱した罪として、死刑に処する!」
猿轡を噛まされている男は、両腕も後ろ手に縛られたまま断頭台に連れて行かれて、頭を固定される。
「これより愚かな罪人に対して死刑を執行する!」
そう男が声を張り上げ手を振り下ろそうとしたところで、俺は生活魔法『固定化』の魔法を展開したナイフを振り下ろされたギロチンの刃へと投擲する。
「キャアアアアアアア」
誰が叫んだのか分からないが、女の絶叫する声と同時に――、ギィイイイイインと、金属同士がぶつかり合う音が広場に駆け巡ると、金属が砕ける音と共に、男に振り下ろされていたギロチンの刃は粉々に粉砕される。
「まったく――、仕方ねーな!」
俺は髪色を赤色に変えたまま屋根上から広場へと飛び降りた。
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