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第三章 王都暗躍編
第132話 弔い合戦(4)
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「そうかよ」
俺は、執事のアードレスに軽口を叩きながら、執務室の扉に手をかけるが――、
「鍵がかかっているぞ?」
「問題ありません」
アードレスが、そう答えてくると自身の懐から銀色に輝く鍵を取り出すと、執務室のドアの鍵穴にあけて回す。
ガチャリと言う音と共に執務室のドアの鍵が開く。
「どうぞ」
「準備がいいな」
「ガルガン殿から、少し前から依頼をされていた時に、このような事態になる事は予測がついていましたので――。まあ、ガルガン殿が来られないというのは予想外でしたが……」
「なるほどな……」
「ところでガルガン殿は、いまはどちらに?」
「さあな? 俺も一緒に行動しているわけではないからな」
肩を竦めて答える。
嘘ではないが本当でもない。
本当のことを伝えるに値するかどうか、まだ見極めが出来てない相手には本当のことを伝える事はできないだけだ。
ガルガンが、俺の敵にまわったこと――、そして俺がこの手で殺したことを知ればアードレスが、どういう行動を取るのか想像がつかない。
「そうですか」
「ああ」
俺はドアノブを回す。
執務室のドアは、音と立てることもなく内側へと静かに開いていく。
そして部屋の中に入ったところで、とくに一般的な執務室と代わり映えもしない部屋の中を物色していくが、当たり障りのない書類しか見当たらない。
「外れか……」
そう思ったところだった。
机を調べていたアードレスが小さく声を上げる。
「栄治さん、これを見てください」
「どうした?」
執務机を見てみれば、執務室の引き出しの一つ――、そこには上げ底の板があり――。
「二重底か……」
それにしても、二重底を見つけるなんて、どういう眼力をしているんだ? 知らないで見つけるなんてありえないが……。
まぁ、いまはどうでもいいか――、少しでも黒幕の情報を知りたいからな。
二重底となっている板を外すと厚さ3センチほどの本が出てくる。
その表紙に書かれている文字は、一言で表すのなら日記帳と言ったところ。
「これは、俺の方で確認する。あんたは他を調べてくれ」
「分かりました」
日記帳を開いて文字列に目を通していく。
確認するのは、ここ最近の内容。
「これは……」
「どうかしましたか?」
「いや――」
俺は日記帳を閉じる。
そして、日記帳を背中のリュックに入れたあと、アードレスの方を見る。
アードレスは、未だに執務室の中を物色している。
そんな男に俺は声をかける。
「アードレス。アンタは、これからどうするつもりだ?」
「ガルガン殿からの連絡を待ちます。それに、貴方の一緒に居なくなれば嫌疑がかけられる可能性がありますから」
「そうか……。分かった。それじゃ、俺は、これで脱出させてもらう」
「よろしいので?」
「ああ。これ以上は、さすがに王都の兵士だけでなく王宮や王城の騎士団も駆けつけてくるからな」
さすがに宰相の邸宅が襲撃されて黙っている国の重鎮や貴族や王族はいないだろう。
治安のことを踏まえると騎士団が出てくる可能性だってある。
そうなると面倒になる事は目に見えている。
「そうですか。それでは、互いに頑張りましょう」
「ああ。何かあったらガルガンに伝えてくれ」
すでにガルガンはいないが、アイツの事だ。
何かしらの情報伝達手段は残しているはずだが――、俺が、そのことに干渉することはよくはない。
そのことを伝えるのなら、ガルガンを俺が殺したことも説明しないといけなくなるし、それを執事のアードレスが了承するのかも理解するのかも分からないからな。
「分かりました。それではお気をつけて」
「ああ」
俺は炎上を続けるグリフードの館を後にする。
館から距離として300メートルほど離れたところで、馬の嘶きと、金属が擦れる音が聞こえてくる。
俺は慌てて、近くの茂みの中に隠れる。
すると、すぐに数十騎の騎士団が俺が立っていた場所を駆け抜けていく。
「暗殺ギルドが屯っているかも知れない公爵邸に騎士団を派遣するとは――」
駆け抜けていく騎士達の姿を見ながら俺は思わず呟く。
ということは、騎士団もグリフード家の当主エルハストと繋がっている可能性もあると考えないといけないのか……。
「まったく……面倒なこと、この上ないな」
騎士団が駆け抜けて行ったあと、俺は借りている宿へと戻る。
宿は、深夜と言う事もあり灯りは落とされていたが――、借りている部屋のドアノブを回し開けると、いきなり抱き着かれる。
「ディアナ――」
「ご主人様! どこに行かれたのですか?」
涙目で語り掛けてくるディアナの頭を撫でながら、ベッドまで移動する。
ディアナをベッドに寝かせたあと、
「悪かったな。実は、グリフードの屋敷に行っていた」
「――え? それは、私と共に行かれると言ったではありませんか?」
「まぁ、それはそうなんだが……。獣人が一緒に行動しているとなると、エルダ王国側が獣人に攻撃されたと言う事になるからな。そうなると、開拓中の村を敵視される恐れもあるしニードルス領も狙われることになる。だから――」
「それで、ご主人様は、一人で行かれたのですか?」
俺は「ああ、そうだ」と、答えた。
俺は、執事のアードレスに軽口を叩きながら、執務室の扉に手をかけるが――、
「鍵がかかっているぞ?」
「問題ありません」
アードレスが、そう答えてくると自身の懐から銀色に輝く鍵を取り出すと、執務室のドアの鍵穴にあけて回す。
ガチャリと言う音と共に執務室のドアの鍵が開く。
「どうぞ」
「準備がいいな」
「ガルガン殿から、少し前から依頼をされていた時に、このような事態になる事は予測がついていましたので――。まあ、ガルガン殿が来られないというのは予想外でしたが……」
「なるほどな……」
「ところでガルガン殿は、いまはどちらに?」
「さあな? 俺も一緒に行動しているわけではないからな」
肩を竦めて答える。
嘘ではないが本当でもない。
本当のことを伝えるに値するかどうか、まだ見極めが出来てない相手には本当のことを伝える事はできないだけだ。
ガルガンが、俺の敵にまわったこと――、そして俺がこの手で殺したことを知ればアードレスが、どういう行動を取るのか想像がつかない。
「そうですか」
「ああ」
俺はドアノブを回す。
執務室のドアは、音と立てることもなく内側へと静かに開いていく。
そして部屋の中に入ったところで、とくに一般的な執務室と代わり映えもしない部屋の中を物色していくが、当たり障りのない書類しか見当たらない。
「外れか……」
そう思ったところだった。
机を調べていたアードレスが小さく声を上げる。
「栄治さん、これを見てください」
「どうした?」
執務机を見てみれば、執務室の引き出しの一つ――、そこには上げ底の板があり――。
「二重底か……」
それにしても、二重底を見つけるなんて、どういう眼力をしているんだ? 知らないで見つけるなんてありえないが……。
まぁ、いまはどうでもいいか――、少しでも黒幕の情報を知りたいからな。
二重底となっている板を外すと厚さ3センチほどの本が出てくる。
その表紙に書かれている文字は、一言で表すのなら日記帳と言ったところ。
「これは、俺の方で確認する。あんたは他を調べてくれ」
「分かりました」
日記帳を開いて文字列に目を通していく。
確認するのは、ここ最近の内容。
「これは……」
「どうかしましたか?」
「いや――」
俺は日記帳を閉じる。
そして、日記帳を背中のリュックに入れたあと、アードレスの方を見る。
アードレスは、未だに執務室の中を物色している。
そんな男に俺は声をかける。
「アードレス。アンタは、これからどうするつもりだ?」
「ガルガン殿からの連絡を待ちます。それに、貴方の一緒に居なくなれば嫌疑がかけられる可能性がありますから」
「そうか……。分かった。それじゃ、俺は、これで脱出させてもらう」
「よろしいので?」
「ああ。これ以上は、さすがに王都の兵士だけでなく王宮や王城の騎士団も駆けつけてくるからな」
さすがに宰相の邸宅が襲撃されて黙っている国の重鎮や貴族や王族はいないだろう。
治安のことを踏まえると騎士団が出てくる可能性だってある。
そうなると面倒になる事は目に見えている。
「そうですか。それでは、互いに頑張りましょう」
「ああ。何かあったらガルガンに伝えてくれ」
すでにガルガンはいないが、アイツの事だ。
何かしらの情報伝達手段は残しているはずだが――、俺が、そのことに干渉することはよくはない。
そのことを伝えるのなら、ガルガンを俺が殺したことも説明しないといけなくなるし、それを執事のアードレスが了承するのかも理解するのかも分からないからな。
「分かりました。それではお気をつけて」
「ああ」
俺は炎上を続けるグリフードの館を後にする。
館から距離として300メートルほど離れたところで、馬の嘶きと、金属が擦れる音が聞こえてくる。
俺は慌てて、近くの茂みの中に隠れる。
すると、すぐに数十騎の騎士団が俺が立っていた場所を駆け抜けていく。
「暗殺ギルドが屯っているかも知れない公爵邸に騎士団を派遣するとは――」
駆け抜けていく騎士達の姿を見ながら俺は思わず呟く。
ということは、騎士団もグリフード家の当主エルハストと繋がっている可能性もあると考えないといけないのか……。
「まったく……面倒なこと、この上ないな」
騎士団が駆け抜けて行ったあと、俺は借りている宿へと戻る。
宿は、深夜と言う事もあり灯りは落とされていたが――、借りている部屋のドアノブを回し開けると、いきなり抱き着かれる。
「ディアナ――」
「ご主人様! どこに行かれたのですか?」
涙目で語り掛けてくるディアナの頭を撫でながら、ベッドまで移動する。
ディアナをベッドに寝かせたあと、
「悪かったな。実は、グリフードの屋敷に行っていた」
「――え? それは、私と共に行かれると言ったではありませんか?」
「まぁ、それはそうなんだが……。獣人が一緒に行動しているとなると、エルダ王国側が獣人に攻撃されたと言う事になるからな。そうなると、開拓中の村を敵視される恐れもあるしニードルス領も狙われることになる。だから――」
「それで、ご主人様は、一人で行かれたのですか?」
俺は「ああ、そうだ」と、答えた。
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