おっさんの異世界建国記

第三章 王都暗躍編

第129話 弔い合戦（１）

　俺とディアナは、隣の建物の屋上へと飛び移る。
　そして、周囲を確認するが誰かに監視されていると言った感覚はない。
 
「ディアナ」
「ご主人様、冒険者ギルドマスターと戦っている時から、私達を見ていた者はいなかったにゃん」
「そうか……」
 
　人間よりも五感が鋭い獣人族が言うのなら、その感覚を信じるとしよう。
　そして、俺は見る。
4階建ての――、煉瓦と木材で作られた建物が崩落し、その瓦礫に中央広場で王都民に対して武力鎮圧しようと動いていた兵士達が崩落する建物の下敷きになっていく姿を。
 
「助けるにゃん？」
「助けない。助けるのなら王都民が助けるだろう。それよりも――」
 
　俺はガルガンが問答無用で攻撃を仕掛けてきた事に対してショックを受けていたが、よくよく考えてみれば、それはおかしい。
　俺が異世界に来て冒険者を始めてからの長い付き合いのあったガルガンが俺に攻撃してくるなんて普通はありえない。
　まして理由を説明しないどころか好戦的な表情を見せてくることなんてよっぽどの事があったとしか……。
　それに極めつけは自身の魔力を暴走させた自爆魔法も使ってきたし。
 
「おかしいな」
「それは冒険者ギルドマスターですかにゃん？」
「ああ。俺への態度が180度変わることは、普通に考えたら洗脳されたと考えるのが妥当な線だろう」
 
　まして一線を退いたとはいえ、元・Sランク冒険者であるガルガンが、Bランクにも満たない俺に負けるなんて普通はありえない。
　それに攻撃内容も単調の一つだった。
 
「まったく――、訳の分からないことだらけだ」
「それでは、これからどうしますかにゃん？」
「そうだな……」
 
　冒険者ギルドマスターが死んだことは直ぐには冒険者ギルドには伝わらないと思うが、敵対している連中が俺のせいにする可能性もあるからな。
 
　――いや、俺が殺したことには変わりはないんだが……。
 
「まったく！　めんどくせえなあー」
 
　俺は、頭を掻きつつ溜息をつく。
 
「ご主人様、それではどうしますかにゃん？」
「決まっているだろ？　冒険者ギルドのモットーは、売られた喧嘩は買う！　のが信条だからな」
「それでは！」
「ああ。まずは、暗殺ギルドと手を組んだグリフードの屋敷に殴り込みにいくぞ！」
「ご主人様、それは下手をしたらエルダ王国に喧嘩を売る事になるとおもうにゃん」
「既に喧嘩を売られた後だ。それに、身内をやられて黙ってられるほど、俺は温厚でもないし、気が長いわけでもない」
 
　ましてガルガンは、俺に冒険者としてのイロハを教えてくれた恩人だ。
　その恩人の命を奪わせるような真似をした連中を生かしておくなんて、そんなことは許されることではない。
 
「ディアナ。グリフードの屋敷を襲撃するぞ」
「わかったにゃん！」
「やけに乗り気だな」
「エルダ王国の宰相エルハストは、獣人族に攻撃を仕掛けるために色々と手管を変えて品を変えて干渉してきたやつにゃん！　獣人族は、エルハストをぶっ殺すことを目標にしてる人は多いにゃん！」
「そ、そうなのか……」
 
　何時もは礼儀正しいディアナが、そう語るってことは、かなり嫌われているか、もしくは天敵として見られているのかどっちかだな。
 
「そうにゃん！　それで、ご主人様」
「ん？」
「夜になって襲撃するにゃん？」
「――そうだな」
 
　俺は頷く。
　流石に昼間から宰相の屋敷を襲撃するのは問題があるからな。
　俺達は、近くの宿で一泊だけ部屋を借りる。
　そして――、夜の帳が落ちかけたところで、俺は一人宿から出てグリフードの屋敷に向かう。
　ディアナを同行させない理由は簡単だ。
　獣人族を従えて襲撃をした場合、何かあれば獣人族にも迷惑が掛かる可能性があるからだ。
　グリフードの屋敷に到着し、身体強化を行い強化した視力で前方を――、グリフードの館へと入る門の方を見る。
　門前には5人の兵士が立っている。
 
「さて――」
 
　手のひらを門の方へと向ける。
　そして――、
 
「生活魔法の本当の強さを見せてやるよ」
 
　生活魔法で、門を守っている兵士の足元にガソリンを生み出す。
　そして、10秒ほど経過したところで火種を作り出し気化したガソリンをへと火を引火させることで大爆発を引き起こす！
 
　異世界の攻撃魔法「爆裂魔法」よりも遥かに強力な魔法により、グリフードの屋敷の門は――、3メートルを超える鉄製の門は、その門周辺の壁ごと吹き飛ばす。
　爆発し、炎上し、巨大な黒煙が吹き上がる中、俺は生活魔法により体に保護膜を展開しグリフードの屋敷へと突っ込んでいく。
　扉が元々あった場所を超えて屋敷に近づいていくと、数十人の兵士達が門に向かって走っていく姿をみることが出来た。
　門だけに意識が集中しているのか、木の陰に隠れた俺に気が付くこともなく通り過ぎていく。
　その後ろ姿を見ながら、俺がガソリンを帰化させると同時に着火！　数十人の兵士を一瞬にして消し炭にして消し飛ばす。
 
　さらに屋敷が見えてきたところで黒い服を身に纏った連中――、暗殺ギルド連中の姿が見えた。